修行と課題


結局、翌日足の痛みが酷く……というか膝が笑う、腰は重いと身体が言うことをきかなくなった。その為アッシュは潔く1日センターで休む事にした。
ジョーイには早々に理由を説明し、宿泊を延長し笑われたのは記憶に新しい。
ついでに進捗はどうかとたまたま通信してきたグリーンにも早々にバレ、爆笑される自体となった。
笑いたければ笑えばいい。だが何と言われようと休むものは休む。最早アッシュは開き直り、その日はゆっくりと休暇を満喫したのだった。


更に翌日、少しはマシになった身体をゆっくりとストレッチして伸ばし、アッシュ達は町へと出ることにした。

ここはフエンタウン
ポケセン 温泉 良いところ

温泉。そういえば昨夜宿泊の手続きを取っていた時にジョーイが話していたなと思い出す。
ポケモン用と人間用があるらしいがまぁ、それはまたの機会にしよう。
アッシュはとりあえずカンポウの指示通り、外れにある漢方屋へ行く事にする。
ウロウロとするウパーを誘導しつつ、横に立てかけられた看板を確認する。
漢方屋の文字を確認すると、中へと入っていった。

「いらっしゃいませー」

奥のカウンターから女性の声がする。
もう馴染みとなった苦味を帯びた香りが辺り一面に広がっている。それに釣られてか、足元にいたはずのウパーが棚と棚の間でキョロキョロと辺りを見回していた。
イーブイの方はもうすっかり慣れた匂いであるからか特に気にすることなくアッシュの足元でムスッとしている。
とりあえず奥へと進むと、カウンターで女性がパソコンを打っている所だった。
何か資料を作っているのか、周りにファイルや古い用紙が重なっている。
こちらに気づいた彼女はにこやかに挨拶をしてきた。

「どうも!安くてよく効く漢方屋です」
「えと、コガネシティのカンポウから指示されてこちらまで来た者ですが…」

と言いかけると言葉を被せるようにして女性が食いついてくる。

「貴方がそうなんですね?!」
「っはい…」

バンッと大きな音を立ててカウンターに身を乗り出すという突然の行動に、イーブイの尻尾の毛がブワッと膨らんだのが見えた。
ウパーはというと、周囲の匂いを嗅ぐのに忙しいのかあまり気にしている様子はない。
こちらが完全に萎縮したのが伝わったのか、カウンターの前にいた爺さんが間に入ってくる。

「これこれ、そう驚かせんでも」
「あぁ!すみません!」

はっはっと笑われた女性はハッとした様子で慌てて定位置へと戻るとこちらへガバッと頭を下げた。
顔が動くのに合わせて紺のウェーブ髪が顔横で揺れる。

「初めまして!私はこの漢方屋で見習いをしていますヨモギと言います。こちらは店主兼私の師匠の」
「レンギョウじゃ。君のことはカンポウさんから聞いておるよ」

ヨモギが言いかけると、レンギョウは言葉を引き継いだ。それに対しアッシュもまた頭を下げる。

「アッシュですよろしくお願いします」
「君には暫くここで頑張ってもらうからの。基本ここでの事はヨモギに聞くと良い」

じゃあヨモギ頼んだよ、と告げるとレンギョウは用事があるのかいくつか漢方薬を包むと外へと出ていった。

「えと、ここでのことを説明しますね!」

ヨモギの話によると、アッシュはフィールドワークに出ながら薬草を探したり、実際に此処で材料を煎じたりしながら基本的なことを学ぶらしい。
その間はポケモンセンターの一室を借りておけるようになっているとの事だ。今借りている部屋をそのまま貸してもらえるよう後で計らっておいてくれるらしい。

「そして!ここにいる間は私が貴方の指導係になりますのでよろしくお願いしますね!」

意気込んだ様子の彼女に気圧されつつもアッシュは頭を下げた。早速このまま案内してくれるとの事だったので、そのままヨモギについて回ることにしたのだった。




- 81 -

*前次#



【目次】
【TOP】

ALICE+