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店内は割と広く、かなり多くの漢方薬を扱っているらしい。カンポウ宅にあったものもあれば、あちらでは見なかった見慣れないものも置いてあるようだ。
奥の調合室などなど、一通り室内を見学した後ヨモギはアッシュを振り返り早速課題を始めたいと思うが良いかと尋ねてきた。
座学とかから入ると思っていた為、早速なのか?と正直驚いたがとりあえず頷いておく。
アッシュが頷いたのを確認すると、ヨモギはそのまま説明を始める。

「では!アッシュ君にはある材料を持ってきてもらいます」

これです!と見せられたものは、2つ。ひとつは何の変哲もない普通の薬草に見えるがもうひとつは、

「……石?」
「そうです!この2つの材料を持ってきてもらうことが今回の課題です」

よく分からないが軽石の様な石に見える。
ちなみに名前は教えません!とヨモギははっきりきっぱり無慈悲な宣言をする。アッシュが驚いていると、ヨモギは慌てて言い添える。

「普通は教えるんですけど、あの、カンポウさんから伝言がありまして…」

ヨモギの伝言によると、今まで教えた成果を見せることも兼ねて自分で探してみろとの事であった。
さすがカンポウ。ここまで来てまさかの発言である。
カンポウの考えそうな事である為納得いかないがとりあえずそれはまぁよしとしよう。薬草帳もあるので載ってないにしろ、同系統の薬草の分布から予想を立てることも出来るだろう。
というわけで薬草は何とか探し出す算段がついたが……問題は石の方である。

「石……って漢方薬に使うんですね」

知らなかったとアッシュが驚いているのが分かったからか、ヨモギは更に続ける。

「あの、カンポウさんが意地悪で教えなかったわけじゃないのよ。まずは薬草以外にも材料となるものがあることを知るっていうのは、第一課題で必ず出る慣例なの」

私もやったのよとヨモギは笑う。
でもまぁ皆名前は教えられるんだけどと語尾が小さくなるのは彼女のせいではないので気にしない。
しかしヨモギはまだ言いたいことがあるのか少し含みのある視線がくる。
何事かと首を傾げると、

「あのね、分かってしまうことだから言っちゃうんだけど。私もまだ修行中なの」

先ほどレンギョウを師としていると言っていたのでそれは知っているが、それがどうしたのだろうか。

「アッシュ君にとってこれは課題かもしれないけど、私にとっても実は課題なの。私もね、次のステップに進むところなの。つまり、今度は指導する立場としてのステップよ」

ヨモギは既に殆どの課題を終え、店も少しだけだが任せられるようになったところらしい。そして今度はアッシュに教えることがレンギョウからの課題だという。
学ぶことだけが課題だと思っていただけに、ヨモギの話はアッシュにとって驚きであった。

「つまり、私にとってアッシュ君が初めての生徒ってことなの!だから!私も頑張るわ!」

成る程、張り切っている様に見えた経緯はこれだったらしい。
「じゃあ、アッシュ君も頑張ってね!」と言いながらヨモギはアッシュに材料の写真と小袋を渡すと仕事に戻って行った。
どうやらこれを元に2つの素材を探し出さねばいけないらしい。
小袋の方は何が入っているのかと覗き込むと割と多めのお金が入っていた。
まさかそんなに遠いところにこの2つはあるのだろうか?

「……だってさ」
「ブイブイ」
「んー…」

なら早く探しに行くぞと呟くイーブイに待ったを掛けたアッシュは、とりあえず一旦ポケモンセンターに戻ることを提案する。というのも、今後の計画を練る為である。
店内を走り回るウパーを捕まえ、何とかボールに戻すとそのまま2匹を連れてアッシュはセンターへと舞い戻った。





「ブーイ」
「そう焦るな」

早くしろと文句を付けるイーブイを宥め、アッシュはカンポウの薬草帳を広げる。
石の方はさっぱり分からないが、薬草の方は形からして恐らくマメ科のものだろうと当たりをつける。
それらしいものがないかパラパラとめくると、隣に来たウパーが同じように覗き込んだ。
と思ったら、そのうち飽きたのか今度はイーブイに突進していく。

「ウパパパ!」
「ブーイ!!!」

遊ぼー!と騒ぐウパーにイーブイがやめろと怒る声がする。
これは急がないと乱闘が起こるなと、ノートを捲る手を早めるアッシュであった。




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