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結局あのあと薬草帳内をくまなく探したが、指定された薬草は書かれていなかった。恐らくこの課題の為にわざわざ書かなかったようで、以前は無かった筈の真っ白なページが後ろに足されていた。
つまりは現地で確かめて自分で書けという事なのだろう。さすがカンポウである。
とりあえず似たマメ科の薬草を見比べて場所の目星を付けたアッシュは、イーブイ達を連れてえんとつ山へと再び登る事にした。
どうやら探しているマメ科に似たのものというのは厳しい環境下程多く自生する傾向があるようだ。
最も、間違っていなければの話だがそこは賭けである。
下りの時は自転車でスイスイとはいかないが何とか降りてきたものの、登りは考えるまでもなく完全に徒歩である。
しかも降りてきた道は険しい為、迂回して再びロープウェイに乗らなければ行けないようだ。
仕方なく迂回してロープウェイ乗り場まで行くことにしたアッシュ達だったが、途中でフエンに留まるか先に進むか悩む青年にどうしたらいいだろうかと捕まったり、山男に勝負を挑まれたり、いつの間にかウパーが居なくなったりとかなりの寄り道をすることになった。
それでもどうにか山頂まで戻り、近くに自生する薬草を探す所まで何とか漕ぎ着けたアッシュは、草むらに屈み込んだまま遠くにいるイーブイ達にも声をかける。
「イーブイ、マメ科のやつだからな。待て待てウパー!頼むから薬草探してくれよ」
岩の上でため息を吐くイーブイと、すぐどこかへ行こうとするウパーに何かと声をかけつつ探すが、なかなか見つからない。
屈んだ態勢のまま腰の痛みと戦いつつ、目当ての薬草をようやっと見つけた時にはすっかり体力を使い果たし疲れきっていた。
とりあえず休憩だと再び山頂のロープウェイ乗り場に戻ってきた一行は飲み物を買って一息ついたのだった。
「なんか違うことで疲れた…」
ごくごくとサイコソーダを飲む2匹の横でアッシュは大きなため息をつく。
薬草を探すこと自体はそう難しい事ではない。だが、気がつけば近くの洞窟へバトルしに行ってしまうイーブイと、遊びに行こうと麓目掛けてふらふらと走り出すウパーを止めながらではどうにも事が進まない。
途中で課題の石に似たものも見つけはしたが、よくよく見ると違うようだ。
何か手がかりにならないかと持ち歩いてはいるがどうにも進展がみられない。
「はー…どうしたもんか」
「ブーイ」
「え?」
急に、壊れたと言われたアッシュは何事かとイーブイの方を見る。
最初は分からなかったが、見れば首飾りにしていた石の金具が外れたのか、イーブイの足元でぷらぷらと不安定に揺れている。
どうやら何かの拍子に外れて壊れてしまったようだ。
「ブイブイ?」
「あー、まぁ応急処置だなぁ」
直るかと聞かれ、とりあえず一時的に他の金具で留める事にする。きちんと直すには金具を買いに行かなければならない。
とりあえずイーブイから首飾りを預かり、ガチャガチャと直していると、いつの間にか目の前に人が立っているのに気づいた。
年の頃は自分と同じか少し上くらいだろうか。
とても身なりがよく、高級そうなスーツを着こなしている。
スーツだけでなく本人も整った顔立ちをしており、同性の自分から見てもかなりのイケメンだなと分かる容姿だ。
というか、スーツで山登りとは恐ろしく似合わない。
不躾に失礼な事を考えていると相手はおもむろに口を開いた。
「こんにちは、もしかして君も石が好きなのかい?」
口元に手をやり、首を傾げると水色の髪がサラリと流れる。様になり過ぎて逆に凄い。嫌味なくさらりをこなす姿はほんの少しだけ羨ましい。
ついぼんやりとそんなことを思っていると警戒したと取ったのか相手は笑顔で言い直した。
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