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「あぁ、ごめん!何だか沢山石の気配がしたからそうなのかと」
そうなら話をして見たいなと思ってと彼は笑った。確かに白い石や石らしきものなど色々持ってはいるが、何故石なのかよくわからずアッシュは首を捻る。
なんと答えるか考えていると、青年はアッシュの手元を見て再び口を開いた。
「それは変わらずの石だね」
「かわらずの石?」
ポケモンの進化を止める石だよと言われ驚く。
「え、そうなのか?」
「知らなかったのかい?」
知らなかった…!と驚くアッシュに今度は逆に相手が首を捻った。
「わざわざ付けていたのに?」
「これはイーブイが気に入っていたから付けたものだ」
アッシュはイーブイが石を欲しがった経緯を話すと、相手は「そうか。石好きは君の方だったか!」とくすくす笑い出す。
ついでにこの石は変わらずの石といって進化を止める石なのだと教えて貰った。ちなみにカントーやジョウト産のものの方が緑味を帯びているらしい。
確かグリーンのレジュメにそんなものがあったが、まさかそれがこの石だとは思っていなかった。
「変わらずの石はこの丸みがいいよね」
「…ブイ!」
青年はイーブイの方に顔を寄せ、その石を褒める。自身が気に入っている石を褒められたからか、イーブイも誇らしげである。
ウパーはというと、相変わらずサイコソーダを飲むのに夢中だ。
いつも思うがウパーは夢中になると周りが見えなくなるらしい。青年にも気づいているか怪しい。
随分と石に詳しそうな雰囲気に、アッシュはふとこの人なら課題の石についても知っているのではと閃く。知らなくても、何かしらヒントが貰えるかもしれない。
アッシュは思い切って彼に尋ねてみる事にした。
「あの、実は白い石を探してて」
「白い石?」
「はい」
アッシュは自身が漢方屋の勉強中である事、課題で石を探してくるよう言われたが名前も分からない事を素直に話した。
「見せてくれるかい?」
「これです」
アッシュがカバンから出して相手に見せると、彼は納得したように「あぁ」と頷く。
「これはハロイサイトだね」
「はろいさいと?」
「あぁ、でも漢方と言っていたね。とすると生薬的に言えば滑石の方が正しいのかな?といっても、一般的なタルクの方の滑石とは別物だけど…」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
数秒間で知らない言葉の羅列を並べられアッシュは慌ててリュックの中を漁り出した。急いでメモ帳とペンを探し出し、「もう一度お願いします」と頼み込む。半分どころか殆どさっぱり言っていることが理解出来なかった。
そんなアッシュの様子にふむと考えこんだ後、彼は「失礼」と一言断りを入れてから隣に座ると懇切丁寧に滑石について話してくれた。
「まず、鉱物名と生薬名は別物だ。これは鉱物名的に言えばハロイサイトと言うが、生薬的には滑石と呼ばれる」
ここまでは理解出来たかなと聞かれ、メモを取りつつアッシュは頷いた。
それを確認すると、青年は更に説明を続ける。
「しかし鉱物名でも滑石と呼ばれる鉱物があってね。それが一般的にはタルクと言われる鉱物だ」
勿論成分の異なる全くの別物だよと付け加えた。
「岩盤の風化によって産出されるものだから、この辺りでも出るはずだよ」
青年が次々に新たな情報をくれる為、アッシュは慌ててそれらを書き留める。
「勉強になります。随分詳しいんですね」
「お役に立てたようで良かったよ。僕は石集めが趣味でね。今もちょうど知り合いのところへ石を探しに行くところなんだ」
腕につけた時計を見た青年は時間だったのか、「じゃあ待ち合わせの時間があるから僕はこの辺で」と片手を上げる。
アッシュも慌てて立ち上がると青年の後ろ姿に礼を述べた。
「ありがとうございました!」
ヒラヒラを手を振る青年が見えなくなると、アッシュは再びベンチへと腰掛ける。
まずは貰った情報を整理しなければいけない。
「色々勉強しないといけないらしい」
「ブイブイ!」
「わかったわかった」
石はどうしたと言われ、アッシュは手元の石を治すことに専念する事にした。
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