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ごうごうと、火が燃えていた。きれい、とわたしはぼんやり考える。
簡単な話だった。その日、男はとうとう刃物を持ち出してこう言ったのだ。「指を見せてごらん」と。従順に指を見せる振りをして、宝石のあしらわれた小刀を奪うことは、難しいことではなかった。その小刀が実は対になっており、それを男が後ろ手に隠していたことに気付かなかったのは失敗だったが、それでも左腕をかすられただけですぐにそちらも奪うことができたため問題ない。そのまま男の脇腹に幾度か刃を入れると、倒れるときに灯りの根本を掴んだため襖に火が付いてしまった。火はすぐに燃え広がり、わたしの逃げ場はなくなったが、別に、問題はない。こうなる運命だったのだ。そこには諦めがあった。逃げても妖怪に殺される。あのまま大人しくしていればこの男に殺される。この男を客にとるのをやめれば、主に殺される。このままここにいれば、燃えさかる火に殺される。

こんなこと、炎に問うのはお門違いだと解っているけれど。
ねえ、どうしてわたしは、生まれてきたのかしら。

 


(120104)


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