狂犬にはご注意ください。


「最近七海さんとどうなん?」

昼食を食べている途中に、さっきからずっとソワソワしていた琢真が前のめりになりながら問いかけてくる。どう、と言われると困ってしまう。そう、大変困ってしまうのだ。


バタンっと扉が閉まる音がして、やっと履き慣れてきたスリッパの音をパタパタと鳴らしながら玄関に向かう。なんとなく飼い主の帰りを待ってた犬みたいだな、と自分でも感じた。

「おかえりなさい、七海さん!」
「ただいま帰りました。」

そうすると七海さんが脱いだ靴を綺麗に並べていて、広い背中を見ると思わず抱き着いてしまった。いきなり突進するように抱き着いても、七海さんは体幹がしっかりしてるのかびくともせずに顔だけ此方を振り返ってくる。今日も顔がいいなぁ、なんて、しみじみ思っていると自然と頬が緩んでしまった。

「今日は玄関でしますか?それともキッチンでしますか?」

だがしかし、ケロッとした表情で問いかけてくる言葉が聞こえると状況は変わってくる。慌てて体を離すと逃げ切る前に手首を掴まれてしまい、器用に体を回転させた七海さんに正面から抱きしめられた。香水の匂いと、仕事終わりだからか土と汗の臭いもしてドキドキする。確か今日はどこかの山で任務だったって言ってたな、と思考が寄り道してる間に七海さんが首筋に擦り寄ってTシャツから覗いた鎖骨にチュっと口付けてきたのでハッとして暴れて身を捩った。

「きょ、今日は!お伝えしたいことが、あります!」

男女差以上に強い七海さんの拘束にどうにかバタつくと、渋々体が離れていく。でも肩に両手をしっかりと力で添えられていて、逃げるなよ。と力加減が語ってる。

「どうしたんですか?」

恨めしそうにジトっと此方を見下ろしてる七海さんは、何だか普段見れない表情だからそれも素敵で……っと、違う違う。流されちゃダメだ私。

「えっと、流石に毎回、するのはちょっと…」

ずっと片想いしてて、もう辞めようって決めた頃。思いがけず七海さんから交際を申し込まれて付き合ったのが三ヶ月前。いざそういう事致します、となった時に私が処女だと告白したのが二ヶ月前。驚いた顔をした七海さんは、それはもう丁寧にゆっくりと抱いてくださった。その後もそういう時になる時も、体調を労りながら痛くないか声をこまめにかけてくれてそりゃもう甘々のトロトロな時間だったと思う。

「なんでですか?」

私の言葉がよほど気に食わないのか、眉間の皺を寄せながら少し低くなった声色で不満ですという感情を物凄く込めて投げかけてくる。大人オブ大人な七海さんも、拗ねる事あるんだとわかったのは付き合ってから後のことだ。

「なんでって、言われてましても…」

少し慣れてきてから、一緒にいるといつもそういう流れになる。つまり、毎回エッチしてる。最初こそベットで優しくだったけど、何か教え込むように私の知らない色々な対位で抱かれたり、それこそ帰ってきてすぐ雪崩れ込むように玄関で行っちゃったりソファーだったりお風呂だったり…もう思い出すだけで顔が熱くなってくる。最初がトロトロなら今はどろっどろのぐちゃぐちゃって感じ。流石の私も、体力がもたないし二ヶ月前に処女喪失した女からしたらキャパオーバーな刺激過ぎる。
何て言おうかと悩んでいると、七海さんが頬を撫でてきて不意打ちで思わずビクリと体が震えてしまった。思わず伏せていた顔を上げると、いつの間にか特有のサングラスを外した瞳と視線が絡み合う。

「私たちはいつ何があるかわからない。…なので、会うたびに求めるのはなんら不思議な事ではないと思うのですが?」

ゆっくりと整った顔が近付いてきて、こつりと額を合わせられる。喋るたびに顔にかかる息が擽ったくて、目を閉じるとそのまま触れる程度の口付けが落ちてきた。啄むように下唇を少し吸うキスも、触れ合う体温も心地よくて、絆されそうになるけどいつの間にかお尻を撫でてきた手に意識が戻ってきた。

「わっ、私!ちゃんと聞いたから知ってるんです!そんな毎回することじゃないってこと!」

慌てて彼の逞しい肩に両手を添えて無理矢理距離を取ると、驚いたように七海さんは目を開いている。今日こそは言い負けないようにしなくては、私の睡眠時間のために。彼に負けないように、出来るだけ胸を張って強気の姿勢を見せた。


「最近七海さんとどうなん?」

ここで冒頭の猪野琢真に戻る。あの日と同じように、共同スペースで作ってきたお弁当を食べてると琢真が好物のアジフライ弁当を食べながら問いかけてきた。

「別に、普通だけど…」
「まぁ、お前が七海さんに付き合ってもらうなんて奇跡だもんなー。しょうがねぇよ。」
「おいコラ、なんで私が振られる前提で話してんのよ」

向かい側に座る琢真の足を机の下から蹴ると、オーバーに痛って!と言われた。まぁ、確かに私から好き好きアタックしていたのを見ている琢真や周りの人がそう思うのは仕方ないと思う。彼らの中では七海建人さんは大人オブ大人、なんだ。ふりかけをかけたご飯を咀嚼して、飲み込んでからずっと思っていた疑問が頭に浮上してきた。

「琢真にさ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」

上手に焼けたウィンナーを一口で食べてから意を決して口を開いてお弁当箱と箸を机に置くと、琢真がキョトンとした後に同じくお弁当を置いてキリついた顔で胸を張った。

「何でも猪野様に聞いてみなさい。」

頼られるのが嬉しいです!ってテロップが後ろについてそうなくらい気合が入ってるのを見て思わず笑ってしまった。この同級生は後輩力が高い分、頼られるのがとてつもなく嬉しいらしい。そんな良い奴の琢真に質問していいものかと悩んだけど、背に腹はかえられなくておずおずと口を開いた。

「そのー………えっち、って、大体どれくらいするものなのかなー…なんて…」

セミの鳴き声が煩いこの部屋では掻き消されてしまうんじゃないかと思うくらい小さな声でボソボソと呟いた。しんと静まり返る空間に、なんて事を聞いてしまったのかと後悔して俯いた顔を上げられないでいると、琢真の足のせいでガタリの目の前の机が揺れた。

「大丈夫、まだ付き合って日が短いし、まだセックスレスじゃねぇよ!」
「いやだから、なんでさっきから悪い方ばっかに捉えるのよ」

覚悟して顔を上げると、思ったより琢真は引いていなくてグッと親指を立てながらウィンクしてる。先程から私が振られる前提で話す彼は七海さんの事をどんな風に思ってるんだろう。仕方なく付き合ってあげてる大人の七海さんとかかな?いやいや、猪野琢真よ、これはそれ以上の案件だよ。

「いやね?最近会うたびに、その、えっち…するから、体力と眠気が持たないというか…世の中の恋人はどれくらいの頻度でしてるのかなー?って、思いまして…」

我が家の七海建人さんは職場とはガラリと違う。私が離れるとすぐくっついてくるし、甘えてくるし、すぐ拗ねるし笑うしで可愛らしい。大人なんてものはかけ離れている。そんな新しい一面も好きだけど、でも流石に最初の頃トイレの前で待たれた時はちょっとだけ怒った。
最近の悩みの回数の話を打ち出すと、また部屋は静まり返る。先週ネイルした指先をいじいじと絡ませながら、チラリと琢真を見ると瞬きを数回繰り返していた。

「…毎回って、どれくらいの頻度なわけ?」
「えっ、わかんない。本当会える時いつも七海さんのお家行ってるから……連日の時もあるし、2.3日空けることも長期任務の時は1週間だったり…」
「んーーー………」

この職業的に固定休みはないので、長期任務や徹夜な時以外は会ってる気がする。それこそ半同棲なのでは?と最近思うほど互いの家に荷物が増えてきている。やっと相談らしくなってきて、どうにか意見をもらおうと出来るだけ具体的に答えていると琢真は悩むように顎に手を当て目を閉じる。暫くはうーんと唸っていたけれど、やっと意見が固まったのかパチリと目を開け両手を膝について体制を整えた。

「…まぁ程よく日にち空いたら溜まってる訳だし、ヤったりするけど……俺は、毎日だと流石に任務で疲れてるからやらんかも。」
「そ、そうなんだ…」
「…ちなみに、七海さんって何ラウンドすんの?」

自分で言うのもなんだけど、私と琢真は同い年だから21歳で、そういう、性欲?と言うものは若いうちの方が強いのではないだろうか?その21歳の琢真が毎日出来ないんなら、七海さんの性欲がそれを上回るくらい強いのか、体力オバケなのかどちらかの問題になる。次は私が唸ってると、琢真が内緒話をする様に少し距離を詰めて小声で問いかけてくるので、その質問に困惑した。

「…どう計算すればいいの?」
「あー…と、何回ゴム変えてる?」

何せ七海さんとの経験が初めてだし、今琢真に相談するくらい他に相談できる人がいなかったから本当色々わからない。首を傾げてみせれば、琢真は罰が悪そうにニット帽から覗く襟足部分を掻きながら答えるので、どうにか記憶を遡った。

「うーん、いつの間にか変えてるからわかんないけど、2回から4回くらい…?」
「え゛っ!?」

後半はもう息も絶え絶えで意識がふわふわしてるからわからないが、確か朝に破り捨てられた袋と口を縛られて液体が閉じ込められてる残骸は寂しそうにそれくらい転がっていた気がする。よく基準がわからなくて指で2.3.4と順番に形を作って見せると、琢真の目がギョッと見開かれた。

「えっ?なに?変なの?ダメなの!?」
「…それは、俺の口からは言えねぇわ…」

私も驚いてしまいアワアワしてる傍で、まるで試合が終わったボクサーみたいに項垂れた彼が小さく呟く。そうすると勢いよく残りのお弁当を口の中にかき込んで、「今度七海さんと呑みに行ってくる。」と謎の宣言して共有スペースを出て行ったので私はあんぐりと口を開けたまま見送るだけだった。



「…という事がありましたので、お互いに自重しましょう。」
「何を猪野くんと話してるんですか。…だから彼は最近やたらと食事に誘ってくるんですね」

玄関先で攻防戦を繰り広げた後、拉致が開かないのでとりあえずリビングにソファーに二人で戻ってお茶を飲みながら事の経緯を全て話した。スーツのジャケットを脱いでネクタイも外している七海さんは、一枚のシャツ越しでも体格の良さを語っていてそれすらもかっこいいと思うから本当に惚れた弱みなんだと思う。
私の話を全部聞き終わると、フーッと呆れたように息を吐き出す姿にちょっとだけ首をすくめる。呆れられただろうか、嫌われてしまっただろうか。自分に言っておきながら不安になってしまって膝の上に置いてある手を握りしめていると、大きな手で包み込まれて顔を上げた。

「…貴女といると、年甲斐もなく盛ってしまうんです。」

本当数ヶ月前まで、此方を見てもすぐ興味なさそうに逸らされていた瞳が私を捕らえている。いつ見ても綺麗な深い海のような色の瞳の中に私が映っているだけで、片想い歴が長かった分胸が締め付けられるくらい嬉しい。手の甲を親指で撫でてくるたびに、そこに心臓があるじゃないかと思うくらい脈打つのを感じる。

「貴女が思っているほど、私は素敵な大人ではありません」

七海さんの指先が指の間を摩るから、握った力を緩めるとその合間を縫って指を絡めて自然流れで手を繋いだ。空いている片手で頬を撫でてくれて、それが気持ちよくて擦り寄ると額にキスしてくれる。七海さんは、ふとした時にこうしてくれるからキスするのが好きなのかもしれない。

「私と、こういう事するのは嫌いですか?」

少し不安げに、小さく首を傾げて顔を覗き込まれてヴッと心臓が痛くなる。この人は、絶対自分の顔がいいって自覚してこれをしてる。確信犯で有罪案件だ。

「嫌いって、訳じゃないんですけど…」

一人で心の中で抗議を飛ばしながらモゴモゴと言い淀み、このまま流されてしまわないように七海さんから顔を逸らした。すると、代わりに彼の目の前に曝け出されてしまった左耳にガブリと噛みつかれてヒョエ!?と変な声が出た。

「言って。」

ねっとりと、低音で囁かれると先程噛まれた場所の唾液が吐息で冷えていろんな意味でゾワゾワと忙しく全身に何かが駆け上がっていく。左手で隠してしまいたいけど、生憎彼と手を繋ぐのに塞がれていて敵わなかった。答えないとまた次の攻撃が来るのはこの三ヶ月で学んだので、震える唇をどうにか開いて息を吐き出した。

「…何だか、いつもしちゃうと、その、会うたびにドキドキしちゃうんです……でも、会わない時も思い出しちゃうと何か体が熱くなっちゃうし、なんか自分が自分じゃないみたいで、怖くて…」

いつも、この後会えると思うと胸が高鳴るのと一緒に最近お腹の奥がキュンとしてくる。長く会えない時も思い出して恋しくなって疼いてしまうし、会ってる時も今日可愛い下着だよなと脱がされる後のことを考えてしまう。つまり、四六時中考えてしまって、この間まで処女だと思えない痴態なのだ。七海さんの事を責めておいて実は私の方が性欲やばいのかもしれないと泣きそうになって背けた顔を戻すと、七海さんが怖いくらい真顔で此方を見下ろしていてきつく結ばれた薄い唇は何一つ口を開かなかった。

「…?あの、七海さ、ど、ぅわ!?」

どうしたんだろうかと首を傾げていると触れ合っていた手が全て離れ代わりに腰を両手で掴まれた。何事かと思っているといきなり体が浮遊感に包まれてあっという間に七海さんに肩に担がれてしまった。逞しい肩に食い込むお腹のせいで苦しくて低い呻き声が漏れる。そのまま担いだままソファーから立ち上がるから、どんだけ筋力あるんだと驚く通り越して引いた。そんな私を他所に、七海さんはズンズンと寝室に向かっていく。

「あの、七海さ、」
「君が可愛すぎるからいけない」

米俵みたいに運ばれていて顔は見えないけど、ピシャリと言い切られる言葉にあ、終わったわ。と悟った。明日の任務の時間を思い出す前に、誠に残念ながらベッドに放り投げられて全て終了となったてしまった。



「あっ、ぅ…ッ!」
「これが松葉崩し、です。48手も折り返しにきましたよ。全部やったら、復習しましょうね」

あれよこれよと脱がされてドロドロに愛でられて、右足だけ上げられた状態で間を割って入ってくるように七海さんの質量が中を押し進んでくるからその圧に息を飲んでしまう。よく七海さんが48手?の話をするから、自分で調べてみた事もあるけど、これ本当に人ができるんか?って体制もあったから、本当に全てこれから自分達がするなんて想像できない。
力んでいる私を見て七海さんが沢山唇や頬、首や鎖骨にキスを落としてくれる。嬉しいけど、七海さんが体制を屈めるから奥までグッと入ってくるから別の意味でキュンとしてくる。

「…そろそろ動いても?」
「は、い……」

私が中を締め付けると、七海さんが苦しそうに眉を寄せて息を吐き出しながら問いかけてくる。気遣ってくれそうで、その目はギラギラしてるから主導権は私にはないのは全てが語っていた。静かに頷くと、ズッと腰を引かれて右足の指が震えた。
最初はゆっくりと、膣内を押し広げるように抜き差しが始まってぱちゅぱちゅとお互いの肌がぶつかり合う音が部屋に響き渡る。下生えが触れ合うのが擽ったくて、手を上げて頭を乗せている枕を握りしめて耐えているとどんどん挿入のスピードが早まってくる。

「はっ、ぁ…!ん、ぅ…ッ」
「この体制だと、奥まで入って気持ち良いでしょう?」

痺れ始めた頭でどうにか七海さんの言葉を噛み砕いて、どうにかゆっくりと理解する。確かに、そう言われるといつもよりコツコツと奥に届いてる気もしないこともない。それに、七海さんが伸し掛かるように腰を振るから、先程嫌と言うほど捏ね回されてぷっくりと膨れた突起が押し潰されて動くたびにビクリと腰が跳ねてしまう。

「ん、や…ぁ!」
「私は、なんて教えましたか?」

腰を逃したいけど、左足に跨り腰を押さえ込むように七海さんが乗っかっているから激しい刺激を逃すところが見つからない。徐々に込み上げてくる感覚に、嫌々と首を振ってみせれば耳元で咎めるように囁かれる。ねっとりと耳の縁をなぞる様に舐め上げられて、声も音も酷く官能的で泣きそうになった。

「ぅ、ひ…っあ、気持ち…ですッ!イッちゃ…ぅあ!」

一つは気持ちいい時はちゃんと伝える事。どこが気持ちいいのか、嫌なのか、を七海さんはいつも問いかけてくる。最初は労ってくれた故だったけど、最近はただただ羞恥を煽る為だけに聞いてきてる気がする。そんな事を言えば、もしかしたら返り討ちになりそうだから言えないけど。あと一つは、イク時に申告する事。

「いい子ですね。」

この間までセックスも知らなければ、イクなんて都市伝説なんじゃない?とすら思ってたのに。丁寧に開発された体は、自分で快楽を拾うのが上手になった。
ちゃんといい子に言いつけを守った私に、七海さんが目を細めて赤く色付いた舌をちろりと出す。それに誘われるまま口を開いておずおずと舌を出すと、そのまま互いの舌が絡まりあって熱を分け合うように深く口付ける。その間にも先程みたいに可愛い音じゃなくて、ゴチュゴチュと色んなものが混ざり合って肌がぶつかり合う音が響いている。褒められたのが嬉しくって、全部が気持ちよくてどちらかの口内に喘ぎ声が消えていく。子宮を押し上げられるような感覚に、耐えられなくなって中を締めつきながら達してしまった。

「く…っ」

収縮を繰り返す膣内に七海さんがぶるりと震える。七海さんは射精感をどうにか耐えた様で、きつく閉じていた瞼を開いて舌と唇も離れていった。睫毛長くて綺麗だな、なんて乱れた息を整えながら観察してると熱そうで蕩けてしまいそうな瞳で瞬きをする七海さんと視線が絡んだ。

「どれだけ抱いても、貴女の想いが募るばかりで止められないんです」

七海さんが腰を少しだけ上げたお陰で腰に感じていた重みが無くなって左足の足先が血液が一気に回ってきてジンっと痺れた。そのまま感覚がまだ鈍い左足も抱えられて、体制を整えられる。まだ痙攣が止まない中を、ぐちゅりと音をたてながら突かれて短く喘ぎ声が漏れた。

「はぅ……っ」
「こんな私は、嫌いですか?」

熱っぽい声で、先程と同じように問いかけてくる。ズルい、本当ズルい。さっきから嫌いって言われるなんて微塵も思ってないくせに、わざと聞いてくる。でも、わざわざそうやって愛を確認してくるのがとても愛おしくて、結局私は口を開くしかなかった。

「す、きです…七海さんが、大好きです」

私の言葉に満足そうに微笑んで、至る所にキスの雨を降らしてくれる。どうやら私は百点満点の回答をちゃんと答えられたらしい。だらしなく力の入らない足を抱えなおされて、まだまだ熱い中を掻き回されるとひくりと喉が仰け反った。

「ん、ふ…ぅ…」
「貴女は、どの体位が好きですか?」

仰け反った喉に七海さんが舌を這わせて口付けるとジュッと吸い上げられてチクリと痛みが走る。そんなところ、見えてしまうのに。そんな事を頭の片隅で考えてると、何か問いかけられてすぐに反応できなくて首を傾げた。

「どれが気持ちいいか、って事です。」

その様子に七海さんが困った様に笑いながら言葉を噛み砕いてまた聞いてくる。どれが気持ちいいか、ぽやぽやしてもう溶けちゃったんじゃないかと思う脳みそでどうにか考えるけど、よくわからなかった。

「七海さんと、なら、なんでも気持ちいいです…」

こんな気持ち良さは今まで知らなかった。それに、大好きな七海さん相手だから余計に溶け合う様にお互いを求めるこの時間が好きだ。今回の答えは合ってるだろうかと心配になりながら七海さんを見上げると、ピシャリといきなり動きを止めてしまった。

「えっと、七海さん…?
「……貴女って人は…」
「すみません、ダメでしたか…?あっ、七海さんは、えっと…どの体位?が、好きですか…?」

全く動かない七海さんに焦っていると、電池が入った人形みたいに意識が戻ってきた様で深く深く溜め息を吐き出して器用に私の足を抱えたまま片手で目元を覆っている。どうしようと思ってアワアワと逆に問い掛ければ指の間から七海さんと目が合う。その瞳は鋭くて、これはヤバいやつだと気付いた時には素早く七海さん自身を抜かれてそのままひっくり返されると、あっという間にうつ伏せになってしまった。

「あ、あの…」
「そうですね、正面でも貴女の顔が見えるので好きですし、バックでも細くて白い頸が見えるので好きですよ。」

体を起こそうと両手に力を込めてると後ろから耳元で囁かれてぞわりと背中震える。腰を両手で掴まれると高く上げられて、立ち上がって芯のある自身でお尻をぺちりと叩かれてぐっと息を飲んだ。熱い七海さんのそれでゆっくりとお尻の割れ目をなぞられて、もう濡れてわけわからない事になってる秘部に押し当てられると耳を塞ぎたくなるくらい水音が部屋に響く。これからの事に期待してひくつく膣口に誘われる様に先端がつぷりと入ってきた。

「あっぁ、う、ん……っ〜!」
「貴女、バックが好きでしょう?」

ゆっくりとヒダを掻き分けながら入ってくる途中で、カリの部分が気持ちのいい部分をわざと引っ掛けながら奥を目指していく。まるで形を覚えさせてくるようなその行為に、悶えてシーツに顔を埋めていると確信を突いた言葉にビクリと腰が跳ねた。キュウキュウと締め付ける中が代わりに返事をしてくれて、ははっと短く笑った七海さんが腰を掴む手に力を入れてまた振動が始まった。

「キャンッ!?あ、アッ!は…ンンッ!」
「はっ……本当に、犬みたいですね」

思わず漏れた声に、七海さんがまた喉奥から笑い声を漏らす。確かに、ハッハッと息を荒げて腰を上げてる姿はセックスというより交尾に近いかもしれない。本能的に求め合うそれは、愛を確かめるというより子孫を残そうとしているそれのようで。今は薄い壁に隔てられているけど、何回も行うこの行為でそれをつけてなかったら…と想像するとズクズクと腰が重たくなって、中がまるで届くはずのない遺伝子を搾り取らんばかりに震えるのがわかった。

「何なら首輪でも買いますか?」

後ろから喉に手を回されて、大きな手のひらで覆われた喉がごくりと上下に動く。きっと冗談だってわかってるのに、熱で浮かされた頭はひどく鈍くて何度も小さく頷くとゆっくりと喉の骨を指先で撫でられる。吐息を背後で感じたかと思えば、首筋を皮膚の感触を楽しむ様に甘噛みされてヒュッと喉が鳴った。いつの間にか腰を浮かんでいた手は股に這ってきていて、茂みを掻き分けると痛いくらい腫れた突起を指先でキュッと摘み上げてくる。

「アッ!?だ、だめ、も…イク!イッちゃう…!!」
「ッ、そろそろ出します…!」

中からも外からも与えられる刺激に頭がバカになりそうだ。恐らく噛み跡がついている場所に一度だけ口付けると、七海さんは体制を起こしてラストスパートと言わんばかりに激しく腰を打ちつけて突起をコリコリと押し潰してくる。目の前がチカチカして、シーツを必死に出し寄せながら七海さんの動きに合わせてビクビクッと震えていると、七海さんも同じタイミングで達したのかじんわりと熱が広がってきた。


昨日も結局しちゃったから、もう絶対今日はしないぞって意気込んで帰ってきたけれど、

「昨夜はバックで終わりましたが、今日は何から始めますか?」

と、また帰宅早々言われてしまって、結局あれよこれよで絆されてベッドになだれ込んだ私は最後まで体位を覚えてしまうのかもしれない。

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