溶け合うほどに愛を捧ぐ
大事にしようと思った。初めはまさかの酒の失態で体の関係まで済ませてしまったので、それ目的だと思われたくなかった。…いや、それがないと今もきっと元の関係のままだったかもしれないので、失態とも言い切れない。沢山手を握って、沢山労って甘やかして褒めてあげたい。彼女は小さい体でいつも頑張りすぎている。その為にこまめに連絡をし会えるきっかけを少しでも増やして、家に泊まっても手は出さないように毎回理性で欲望をねじ込んでいた。キスもセックスもまだ先でいい、兎に角彼女をドロドロに甘やかして、私なしでは生きられないくらいにしてやりたい。1ヶ月経って次のオフが初めて休みが重なる日だったので、昼間からデートに誘おうかと。彼女が行きたいところに行って、買い物をして、美味しいご飯を食べて楽しく笑って恋人らしいことができればと。そんな事を思っていた。
『これは貰って帰ってもいいのかな?』
帰路の途中で先輩である夏油さんからメッセージの通知が届いて、開くと見た内容にひゅっと喉が鳴るのがわかった。メッセージ、というより次の写真が問題だった。いつだって頭を占める彼女が真っ赤な顔で机にうつ伏せてあどけない寝顔で写っていて、もう一度メッセージの内容を頭で理解するとすぐさま通話ボタンを押した。2コールして、プツリと機械音がやんだ。
「今どこですか?」
「お疲れ様、七海。それとも七海の家に送って行った方がいいかい?」
私のいつもより低く出た言葉にも、夏油さんは動じた様子もなく陽気に喋り始める。後ろからはガヤガヤと人の声が響いていて、飲み屋にいることは明らかだった。
「今どこですか?」
同じ言葉を繰り返すと、電話越しに夏油さんが笑う。きっと私の苛立ちや嫉妬なんか全てわかっていて、わかった上で彼は笑っているから五条さんとはまた違う意味でタチが悪い。
「変なやつに連れて行かれないように見張っててあげるよ」
そう言って電話を切った彼に届くことのない舌打ちを零した。すぐにお店の現在地の地図がメッセージアプリに届いて、幸いにも10分程度で着きそうだ。向かいながらも苛立ちは募るばかりだった。いつだって余裕な夏油さんにも、先月酒のせいでの事があるにも関わらず呑気に異性と飲んでいる彼女にも、そして、それのお陰で今の立ち位置になれているのに自分の事は棚にあげている自分にもだ。
「あ、来た来た。お疲れ七海」
指定されたのは普通のチェーン店の居酒屋で、沢山の席があるが長身の彼は人の波からもひょっこりと覗いているのですぐ見つけられた。笑ってヒラヒラと手を振る夏油さんに近付けば、あれからずっと寝ているのか真っ赤な彼女も横に座っている。
「おい、起きろ。」
寝ているのに右手はジョッキの取っ手を握ったままなので、ゆっくりと手を離させてから肩を揺する。ぐらぐらと動く彼女の首は骨が入ってないんじゃないかと思うくらい不安定だ。やっと意識が戻ってきたのか、長い睫毛を揺らしながらゆっくりと目が開いていく。
「ん、ん〜?…あ、七海じゃぁん!」
パチパチと瞬きをして此方を見上げてくる彼女は、瞳が濡れて熱がこもっている色をしていて油断するとトロリと溶けてしまうんじゃないかと不安になってしまう。へらりと力なく笑って、隣の空いている席を叩く。
「なに、なに?飲むの?お隣どーぞ」
「馬鹿言ってないで帰りますよ」
どうやら合流してきたと思った彼女にフゥーっと深くため息を吐き出して二の腕を掴んだ。少しだけ力を込めただけでその体はグラリと動くので、よっぽど酔いが回っている様だった。まだ夢現なのか曖昧に返事をしてのそのそと帰宅準備をする彼女を横目に夏油さんにお金を渡そうとすると笑顔で断られる。特級は給料違うから平気だよ、と笑う彼に言い返す言葉はなくて財布をしまった。
「じゃあね、気をつけるんだよ」
はぁい。と気の抜けた返事をする彼女の腕を抱えてカウンターに座ったままの夏油さんに小さく頭を下げておいた。彼女は千鳥足もいいとこで、いっそのこと抱きかかえた方が早く歩けそうだった。体温の高い体を半分引きずりながら外に出ると、中途半端にぬるい風が頬を掠めた。
「へへ、七海、ありがとねぇ」
タクシーを適当に捕まえて自宅の住所を伝えると車はすぐに走り出した。店を出てからお互いずっと無言だったが、隣に座る彼女が少し舌足らずな声で私を呼ぶ。窓から差し込む東京のネオンの光に照らされている彼女は、ユルユルと頬も目も緩めて笑っている。何だかそれに無性にイラついて、返事を返す事は出来なかった。
彼女はそのあと別に気に留めた訳でもなく少しうつらうつら睡眠に片足を突っ込みかけていたが、すぐにタクシーは到着してしまって欠伸を漏らしながらドアを開ける。転ばないようにまた腕を掴んでやると、相変わらず体温は高くて熱い。エントランスを抜けてエレベーターを待っている間、呑気に鼻歌なんかも歌い始めていた。思わずチッと舌打ちしてしまうと、意外と大きい音でエレベーターを降りたフロアに響いた。はっとして見下ろすと、彼女は此方を見上げていた。
「七海、どうしたの?」
首を傾げて、大きな瞳でこちらを覗き込んで控えめに私の手に自分の手を絡めてくる。きっと彼女にはこんな私が抱えてるような真っ黒い気持ちなんて持ち合わせていないんだろうと思う。それくらい彼女の瞳は透き通っていていつも綺麗だ。触れ合った手のひらが熱くて、もう耐えられなくて玄関を開けた途端彼女を引き摺り込んで小さな顔を両手で包み込んでキスをした。
「ん、むぅ…っ」
玄関の扉が閉まるまでの間フロアの光が差し込んでいたが、バタンと重い音が響くと帰宅したばかりの廊下は真っ暗闇の空間になってしまった。そんなのもお構いなしに、柔らかい唇を貪って息を吸う為に開けられた空間に舌を捻じ込んだ。逃げる舌を追って絡めるとひどく熱くて、少しだけアルコールの味もする。玄関の真ん中でキスしている為、支える場所がない彼女の体は少しずつ力が抜けていって崩れ落ちていく。それを支える訳でもなく、ただ追いかけて一緒に下がっていって最後には2人で座り込んだ。どれくらい時間が経ったかわからないが、彼女の口内の熱が自分の舌にも移り始めた頃に名残惜しいが離れて唾液で濡れたぷっくりときた唇を舌先で舐め上げる。
「ふ…っあ……」
ビクリと肩を揺らした彼女は惚けた顔で口を開けっ放しのまま此方を見上げている。チロリと除く真っ赤な舌がどこか官能的で、また食べ尽くしたくなる。こんなキス如きでこんなにもエロい顔をしているなら、どの男たちもどいつもこいつも勘違い野郎に成り下がってしまうだろう。
「貴方は、本当にバカですね。」
また酒の失態に片足を突っ込むなど、本当に愚かだ。全くもって学習能力がない。そんなんだから、私みたいな悪い大人に漬け込まれてしまうんだ。
恐らく腰が抜けてしまった彼女を抱き上げて廊下を歩きながら小さな足を守るパンプスを道端に捨てる。寝室に真っ直ぐに向かいいつもは二人で寄り添って寝るベッドに放り投げると、うわっ!と色気のない声が聞こえた。まだ状況を酔った脳で処理しきれてない彼女に跨って、その顔を覗き込めば意外と恐怖ではなく熱がある頬をしていた。
「夏油さんとセックスするつもりだったんですか?」
「へ…っ?」
自分の声が酷く冷たく淡々としていた。するとやっと彼女の瞳に困惑の色が見えてきて、それが自分を否定して拒否している様にも感じてしまう。何かを伝える為に開かれた小さな口から何も聞きたくなくて、また噛み付く様にキスをして彼女の服を乱暴に前をこじ開ける。私服のミントグリーンのシャツのクリーム色のボタンは悲しそうに何処かに飛んでいってしまい、代わりに白い肌とネイビーの控えめにフリルがあしらわれた下着が曝け出された。そのコントラストに目眩がしそうで、唾液を飲み込みコクリと動く喉仏に噛み付いた。
「あっ、ぐ…!な、なみ…痛いッ!」
ビクンと彼女の肩が震える。犬歯をグッと押し込むと息を呑む感覚が口内越しに伝わってきた。やっとジタバタと抵抗を始めて力のない手で頭を押されたので喉から口を離すと薄らと血が滲んでいて歯形がくっきりとついていた。白い肌に浮かぶそれは痛々しいが、それ以上に何かが胸に溢れてくる。その跡に舌を這わせるとどことなく血の味がして、腕の中の彼女の体が強張った。
「ひゃん!?」
恐怖だけで終わらせないように下着ごと膨らみを揉み解すと先程と打って変わって雌の声色が聞こえた。ふるふると震えているが、それは本能的に求めている故だと頬や瞳、そして胸越しに聞こえる早い鼓動で理解して思わず笑ってしまった。
「痛くされても感じてるなんて、とんだ淫乱ですね」
お望み通り刺激を与える為に下着の中に手を滑り込ませて胸を外へと零した。初めて見る彼女の胸は思ったより着痩せしているのか膨らみがあり真ん中の突起は既にツンッと上を向いていた。片手でそれを摘んで、片方は口に含むと小さく彼女が喘いだ。
「あ、ぅ…!」
「貴方の体は正直ですね。これが服一枚しか守ってないと思うと、気が狂いそうだ。」
舌先で突起をなぞって潰して、吸い付いてとするたびに彼女の体は震える。その合間に鎖骨や肩にまた噛み付くと、色っぽい声の中にひゅっと喉が鳴るのがわかる。震えて強張って、を繰り返す体はやがてもう力が入らないのか快楽に揺れるだけになってしまった。沢山の鬱血痕も残しながら体を起こすと、彼女のデニムに手をかけた。
「ん…っ、な、なみ…」
だらりと力の抜けた足からピッタリとしたデニムをどうにか脱がすと、頭上から名前を呼ばれた。顔を上げると涙のあとでぐちゃぐちゃな目でぼんやりと此方を見つめる彼女がいた。それが痛み故なのか、恐怖故なのかは知りたくなくて首元に擦り寄って顔を見ない様にしながらショーツ越しに敏感な部分に指を這わせた。
「んっ!あッ、そこダメ…っ!」
ぐちょりとショーツ越しの感触や二人の呼吸しかない部屋に響いた音にカッと頭に血が昇るのがわかる。もう濡れて意味のないクロッチをずらしてそこに触れると、先程の舌よりか熱い気がする。嫌々と首を振る彼女を横目に膨らんだ蕾を撫で、蜜が溢れる入り口に第一関節だけ押し込む。つぷつぷと出して抜いてを暫く繰り返していると浅い入り口だけの挿入に痺れを切らしたのか、はっはっと子犬のように息を切らしてもっと先を求めるように腰が揺れ始めた。
「物欲しそうな顔してますね。ダメなんじゃないんですか?」
「あぅ……」
私の意地悪な言葉にもう溢れ出すんじゃないかと思うくらい涙を溜めてその瞳を震わせてくる。合意じゃないこの行為も、優しく出来ない言葉も、痛みしか与えられない事も全部クソだ。これでは1ヶ月前と同じ、いや、それより最悪かも知れない。わかってはいるのに、胸のどこかで手に入れられた喜びと独占欲の残る白い体に満足感の方が溢れてきてしまう。そのまま指を奥まで捩じ込むと、彼女の足がピンッと張った。
「ひゃ!あ、ぁっ…!」
「気持ちいいですか?ここトロトロになってますよ」
震えている膣内はとても熱くて、思わずもう一本指を増やしても難なく入っていった。きゅうきゅうと締め付けて来る中を確認する様に隅々まで擦って押し上げて、ぐるりと円を書く様にして指を抜くと白いとろみのある蜜が溢れてもうショーツも吸い込みきれずにベットにシミを作った。下着を剥ぎ取ってもう一度ピストンを繰り返す。ざらりとした部分を引っ掻くとわかりやすく足が跳ねる。
「はっ、う…!あッ!」
「ここ気持ちいいでしょう?下の口はお利口ですね」
トントンとそこばかりを規則正しいリズムで押し上げるとそれと同じ動きで彼女の体が震えて声を上げる。それがいじらしくて夢中になっていると、腕にそっと手を添えられた。
「…ッあ、気持ち…ぃ…っふ」
彼女が熱に浮かされた瞳でこちらを見つめて小さく何度も頷いてる。どうやら先程からの私の問いかけに必死に答えてくれてるらしい。その素直さに何だか泣きたくなって、指を引き抜くと自身のズボンのベルトに手をかけた。
「私たちはこの先も一緒にいるので、ゴムはなくて大丈夫ですよね」
まるで優しい彼女に呪いをかけるように、疑問文でなく決定事項の様な口ぶりで早口で言葉が出てきた。どんな顔をしているのか見たくなくて、先走りを垂らしている自身を指がなくなりひくついている膣口に押し付けた。クチクチと互いの液が交わって、これだけでも十分に気持ちがいい。
「一緒に、いてくれるの…?」
小さい声が聞こえて、顔を上げる。そこには拒絶も恐怖も嫌悪も何もない、いつもの様な彼女がいた。
「へへ…嬉しいなぁ…」
目を細めて口元をふにゃりと笑う表情に、グッと胸が苦しくなる。自分の真っ黒な感情などそんな彼女にバレたくなくて、細い腰を両手で掴んでズッと腰を進めた。
「あっ!?ま…ッ、おっき…ぃ!」
「くッ…!…あまり、煽るな」
流石に指と違って私の質量だと中々奥まで届かずに苦しい。先月既に一度行為を行なったにしろ、彼女の中は狭くて窮屈だった。ゆっくりと少しずつ進めて、強張った彼女の体をほぐす様にキスを落としてなおざりにしていた胸に手を這わせる。眉間の皺にキスをすると、自分の汗が彼女の額に落ちた。ふと視線が絡むと眉を下げて笑って私の首筋に両手を回して抱きついてくる。
「七海、好き…っ」
首筋に擦り寄りながら呟かれた言葉は確かに鼓膜を震わせて脳に届いた。初めて聞いた彼女からの好意の言葉は、それだけで何にも変えられないほどの威力を持っていて胸の感情がとろりと溶けた感覚がする。
腰を掴んだ手に力を入れて最後無理矢理奥まで捩じ込むと、あう!っと耳元で声が聞こえた。暫くお互いの呼吸の音だけでじっと抱き合って聞こえる彼女の鼓動を感じるだけで幸せだった。落ち着いてきた呼吸を感じると、少し体を離して彼女に口付けた。すると幸せそうに笑ってくれて、ゆっくりとまた振動を再開する。
「んっ、ふ…っあ…!」
「貴方は…っ、こんな私でも、好きなんですか…?」
もう緊張したような体の硬さはなく、全て身を任せてくれているように感じる。お互いの形を確認し合う様な触れ合いはとても気持ちよくて、ぱちゅぱちゅと肌がぶつかる音と下生えが触れ合う感覚がなんともくすぐったい。ベッドに散らばった栗色の髪の毛を梳かしてやりながら問いかけると、彼女はその腕を引き寄せて手のひらに口付けると柔らかく笑った。
「はぅ、あ!ん…っす、き…全部、好きっ、なの…ぉ!」
あぁ、単純にその言葉だけで満たされていく。指を絡ませて互いに握って、その手をシーツに縫い付ける。啄む様にキスをして、まるでそれが愛のある男女の営みの様な錯覚を感じる。もしかしたら十年想いを拗らせた男が見ている都合のいい夢なのかもしれない。
彼女の中はとても熱くて、酒が入っていたとはいえこの気持ちよさを覚えていない自分が信じられない。そんな中でも精巣では彼女を孕ませたいと動物的本能で訴えかけてきて、射精感が込み上げてくる。奥歯を噛み締めて耐え、細い足首を自分の肩にかけるとグッと体重をかけてもっと奥まで押し込んだ。
「あッ!お、く…っ七海…!!」
「ふ…っ、えぇ、奥まで届いて気持ちいいですね」
喉を曝け出して喘ぐ肌には痛々しい歯形がくっきりと残っている。彼女の奥に放ちたくて、途中亀頭で敏感な部分を引っ掛けながら腰の動きを早めていく。激しい肌のぶつかる音が響いて、ベッドのマットレスも少し軋み沈んだ。彼女も限界が近づいてきている様で、もう喘ぎ声しか漏らさなくなった。
「あっあ!あッッ!」
「く…ッ」
イクという宣言もなく果てた彼女は大きく震える。中もきゅぅっと締め付けられるものだから、耐えきれずに自分もつられて達してしまった。自身から出ていく熱を少しでも彼女の中に残したくて、最後まで絞り出すようにゆるゆると腰を揺らしているとピクピクと小さく細い体は震えていた。
一気に脱力感が体にきて、繋がったまま彼女に覆い被さる様に抱きしめた。最初は苦しげに呻いていたが、少しすると慣れてきたように背中に手を回してくれる。その手の温度が暖かくて、とても安心した。
「愛してます。」
少し顔を上げて自分も初めて行為を彼女に伝える。事後の為ぼんやりとしていた瞳は少し見開かれて、私を真っ直ぐと見つめている。
「貴方の全てが欲しい。」
自分だけに笑って欲しい、自分だけに弱みを見せて甘えて欲しい、好きでいて欲しい、好きだ、他の男を見ないで欲しい、閉じ込めたい、孕ませたい、愛してる。色々な感情が渦巻いていて、彼女の瞳に映る自分はひどく情けない顔をしていた。それでも彼女は目を蕩けさせて微笑んでくれて、そっとキスしてくれる。
「七海になら、全部あげるよ」
どうかこの時のことを忘れないで欲しい。もう酒の過ちで済ませられないくらい私は彼女に溺れている。
ドロドロに甘やかしてくれる彼女に甘えて、この後も後ろから肩口に噛みつき背中に痕を散らしながら、向かい合って虚で微睡みつつある瞳で好き。とうわごとの様に囁いてもらいながら種付ける為にあと二回欲を中に吐き出した。
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