おんなのこはみんな柔らかくって甘いのです




ステラとゴンとビスケとレオリオとクラピカで海に遊びに出かけていた。先に水着に着替え終えたキルアとゴンとレオリオとクラピカは、海に出てビスケとステラの着替えを待っていた。ゴンはキルアの隣で水鉄砲を手に持ち、そわそわしている。



「二人とも早く出てこないかな! オレ、遊びたくてウズウズしてるよ!」

「ったく、ゴンは相変わらずだな。まあ、確かにステラは遅いけど」



俺はゴンの言葉に肩をすくめ、視線を海の家の方へ向けた。その時、ちょうどステラがこちらに歩いてくるのが見えた。普段とは違う姿に、一瞬だけ心臓が跳ねるのを感じる。



「……お、来たみてーだぞ」

「ほんとだ!」



俺は少しだけ口角を上げ、平静を装いながら言った。隣のゴンは目を輝かせ、もう走り出しそうな勢いだ。

ビスケはピンクのビキニ、ステラは薄紫色のフリルのビキニの上に薄手のパーカーを羽織って出てきた。



「お待たせー!」



ビスケとステラが仲良く手を繋ぎながら出てくると、レオリオがデレッとしながら二人を見ていた。

レオリオのあからさまな視線に、俺は思わず眉をひそめた。ったく、こいつは相変わらずだな。



「……何見てんだよ、ジジイ」



ステラの方へ一歩踏み出し、わざとレオリオの視界を遮るように立つ。



「それよりステラ、パーカーなんか着てて暑くねーの? せっかく海に来たんだから、さっさと入るぞ」



俺はステラの手を掴むと、ゴンの声が聞こえる方へ走り出した。熱くなった顔を見られたくなくて、少しだけ俯きながら。



「だって、なんかちょっと恥ずかしくて」

「全くステラったら、せっかくアタシとお揃いのデザインのビキニなんだから堂々としなさい!」



キルアに手を取られて走り出すとステラと手を繋いでいたビスケも一緒に走り出しながら言った。



「だって……ほら、すごく見てきてる人いるじゃん」



俺はちらりと後ろを振り返り、まだこっちを見ているレオリオを睨みつけた。



「あんなの気にすんな。つーか、あいつの目玉、今度潰しといてやるよ」

「あははっ、それなら安心かも?」



冗談めかして言うと、ステラの手を引く力を少しだけ強める。パーカーのこと、恥ずかしがってる姿、全部が妙に……可愛く見えて、心臓がうるさい。



「それより、ほら。水、気持ちいーぜ」

「ほんとだ」



波打ち際に着くと、冷たい感触が足に広がった。振り返ってステラの顔を覗き込む。



「パーカー、脱がねーの? 俺がずっと見ててやるから、他の奴らには見せんなよ」

「え……そんなに変、かな? パーカー……。一応サマーパーカーなんだけど……」

「キルアったら、まあ、ビキニ来てるアタシよりもパーカー羽織ってるステラの方が気になるのね?」



ビスケのからかうような言葉に、俺は思わず舌打ちする。ステラの方を向くと、少し不安そうな顔でこっちを見ている。ったく、こいつのせいだ。



「うるせーな、ババア! つーか、別に変じゃねーよ。……ただ、その……お前が暑いんじゃねーかなって思っただけ」



少し気まずくて視線を逸らす。本当はもっと見ていたいだけなんて、口が裂けても言えるか。



「なんですってえ!?」

「……ほら、水、かけるぞ。パーカー濡れても知らねーからな」



俺はわざと悪戯っぽく笑って、ステラにそっと水をかけた。冷たさに驚くステラの顔を見て、ようやくいつもの調子を取り戻せた気がした。

ビスケはそんなキルアを思い切りぶん殴り、キルアは吹っ飛んでいった。ステラは少し迷ったあと、思い切ってパーカーを脱いで木の下に向かって投げた。ビスケと同じデザインのビキニが露わになる。



「ん! よく似合ってるわさ! 可愛いわよ!」



吹っ飛ばされた先からむくりと起き上がり、砂を払いながらステラの方へ視線を戻す。パーカーを脱いだその姿に、一瞬、息が止まった。



「……っ!」



心臓がドクン、と大きく鳴る。似合ってるなんてレベルじゃねーだろ。ビスケの言葉に内心で同意しながらも、素直に口に出すのは癪だった。



「……べ、別に。……まあ、似合ってんじゃねーの。ほら、行くぞ! あいつらより先に沖まで競争な!」



そっぽを向きながらぶっきらぼうに言う。顔が熱い。レオリオや他の奴らに見せたくなくて、思わずステラの前に立つ。誤魔化すようにステラの手を掴み、海へと駆け出した。このドキドキは、夏の暑さのせいってことにしておこう。



「さりげなくステラの手を握るんじゃないわさ! このエロガキ!」

「あははっ、エロガキだって、キルア」



ビスケの野次にカッと頭に血がのぼるが、続くステラの楽しそうな笑い声に、少しだけ毒気が抜かれる。



「うっせーな! 不可抗力だろ、不可抗力! ……ステラまで笑うなよ。つーか、エロガキじゃねーし」

「あははっごめんごめん、なんか面白くって!」



俺はむっとしながらも、繋いだ手に力を込めた。



「ほら、置いてくぞ! ビスケなんかに捕まったら、また説教だぜ?」



わざと悪戯っぽく笑いかけると、勢いよく波を蹴って走り出す。ステラが驚いて声を上げるのが聞こえて、思わず口元が緩んだ。今はただ、このままで。



「ゴーン!」



ステラはキルアに手を引かれながらビスケの手を引いて呼びかける。呼ばれたゴンが振り返った。その手にはしっかりと4人分の水鉄砲が握られている。



「ステラ! ビスケ! やっと来たね!」



ゴンから水鉄砲を受け取ると、俺はニヤリと口角を上げた。



「サンキュ、ゴン! ……よーし、ステラ、覚悟しろよな!」

「わぷっ……!」



言うが早いか、ステラに向けて勢いよく水を発射する。冷たい水しぶきがステラの驚いた顔にかかるのを見て、俺は満足げに笑った。



「あはは、油断したな! 年上だからって容赦しねーぞ?」



反撃される前にと距離を取りながら、再び狙いを定める。心臓がドキドキするのは、きっとこの遊びのせいだ。そうに決まってる。



「あらら、ステラ、大丈夫?」



ビスケがステラの顔を優しくハンカチで拭いていた。やけに距離が近い。



「大丈夫だよビスケ! どうせまたすぐに濡れるし!」

「そうだよ! すぐ濡れるんだから! ほら!」



ゴンの予想外の行動に、俺は一瞬ポカンとした。だが、ゴンの水鉄砲がビスケの顔に命中したのを見て、すぐに腹を抱えて笑い出す。



「ぶはっ! ナイスだ、ゴン!」



怒りに震えるビスケと、してやったり顔のゴン。最高のカオスだ。俺は隣にいるステラにこっそり耳打ちする。



「今のうちだ、ステラ! あいつらがやり合ってる間に二人で逃げるぞ!」

「えっ?」



俺はステラの手を再び掴むと、ビスケの怒声が飛んでくる前に走り出した。今なら、誰にも邪魔されずに二人きりになれるチャンスだ。



「ほら、早く! あっちの岩陰までな!」



振り返らずに、ただステラの手を引いて走る。背後で聞こえる仲間たちの騒がしい声が、なぜか心地よかった。この時間がずっと続けばいいのに、なんて。柄にもなく、そんなことを思った。



「……隙あり」



ステラはキルアに手を掴まれて走り出しながらも手に持った水鉄砲を構え、キルアの顔に思い切り水を発射した。



「さっきのお返しだもん!」



顔にまともに水を食らい、俺は思わず足を止めた。冷たい感触と、目の前でいたずらっぽく笑うステラの顔。不意打ちに驚きつつも、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じる。



「……っ、やるじゃんか、ステラ。お返し、ね。……いいぜ、受けて立つ。でも、年上だからって手加減しねーからな?」



滴る水を乱暴に拭い、俺は水鉄砲を構え直した。さっきまでの競争心とは違う、もっと楽しい感情が湧き上がってくる。俺はニヤリと笑い、再びステラに狙いを定める。背後ではまだゴンとビスケの騒がしい声が聞こえるけど、今はもうどうでもいい。



「ほら、こっち。あっちの岩陰、いい隠れ場所になりそうだぜ」



ステラの手を引いて、今度こそ二人だけの場所へと駆け出した。この勝負、絶対負けねー。……まあ、負けてやってもいいけど。



「隠れ場所って……隠れてどうするの? せっかくの水鉄砲なんだから、ビスケとゴンも一緒に遊んだほうがいいんじゃないの?」



ステラの純粋な言葉に、俺は一瞬言葉に詰まった。確かにその通りなんだけど、そうじゃねーんだよ。



「……バカ。二人の方が、本気で戦えるだろ。あいつらがいると、ゴンはビスケ狙うし、ビスケは俺のこと狙うしでめちゃくちゃになる。……それに、」



少しむくれたように言って、岩陰にステラの体をぐいっと引き寄せる。背後からゴンたちの声が遠ざかっていくのが聞こえた。俺はそこで言葉を切り、水鉄砲を構えながらステラの方をちらりと見た。真剣な眼差しに、心臓が跳ねる。



「……お前のこと、ちゃんと見ててやんねーと、誰かに取られちまうだろ」



照れ隠しにそう言って、すぐに前を向く。ああ、クソ。今、どんな顔してんだ、俺。誤魔化すように「ほら、来たぞ! 援護しろ、ステラ!」と叫んだ。



「……ん?」



キルアの言葉の意味を考えるよりも先にビスケとゴンが走ってきた。キルアの掛け声にあわせて、ステラは水鉄砲をキルアに向けて発射した。ビスケとゴンも一緒になって笑顔でキルアに水鉄砲を向け、水を発射している。



「あははっ、キルア人気者だね!」



俺は全員から集中砲火を浴びて、思わず目をつむる。冷たい水が次から次へと飛んできて、あっという間にずぶ濡れだ。



「……っ、おい! なんで俺だけなんだよ!」



目を開けると、ステラが悪戯っぽく笑っているのが見えた。その笑顔に、文句を言う気も失せてしまう。



「ったく、人気者とかそういう問題じゃねーだろ……まあ、いいぜ。そっちがその気なら……俺も本気出すからな!」



俺はため息をつきつつも、口元は緩んでいた。水鉄砲を構え直し、反撃の狼煙を上げる。まずは一番油断してるステラからだ。この勝負、絶対負けねー!

ビスケがキルアに向けて水を発射し、ゴンがビスケに向けて水を発射し、ステラはゴンに向けて水を発射し、キルアがステラに向けて水を発射した。全員が仲良く水を被った。



「冷たっ! よくもやったね〜!?」



俺はステラの楽しそうな声を聞きながら、自分もずぶ濡れになっていることに気づいて笑った。なんだかんだ、全員でこうして騒いでるのが一番楽しいのかもしれない。



「へっ、そっちこそな! 年上だからって容赦しねーって言っただろ?」



言い返しながら、俺は水鉄砲に海水を補充する。ごちゃ混ぜの撃ち合いになって、誰が誰を狙ってるのかもわからなくなってきた。でも、視線は自然とステラを追ってしまう。



「……ステラ、次はお前が俺の背中を守れよな! 二人で組めば、ゴンとババアなんて敵じゃねーぜ!」



俺はステラの隣に並び、ニヤリと笑いかけた。二人だけの勝負もいいけど、こうやって共闘するのも悪くない。ステラの返事を待たずに、俺はビスケに向かって駆け出した。



「ええっ? 勝手に決めないでよ!」

「そうよ! ステラはアタシと組むんだわさ!」



ビスケがそう言ってステラの手を引き寄せた。



「えーっ! じゃあオレ、誰と組んだらいいの!?」

「えっ? 今度はチーム戦なの?」



ビスケとステラがくっついているのを見て、俺は思わず舌打ちする。なんでそうなるんだよ。



「はあ? なんでお前がステラと組むんだよ、ババア! ステラは俺と組むって言っただろ!」



ゴンがオロオロしているのを横目に、俺はステラの手を掴み返そうとする。が、ビスケにガッチリガードされてしまった。



「……チッ。まあいいぜ。じゃあ、俺とゴンな。ステラ、手加減しねーから覚悟しとけよ」



わざと挑発するように笑って見せる。本当はステラの隣が良かったなんて、口が裂けても言えるか。この勝負、絶対勝ってステラをこっちに引き入れてやる。

だがビスケは師匠なだけあってかなり手強かった。ステラをうまく守りながら的確に水鉄砲でキルアとゴンを撃ち抜いていく。ステラは惚れ惚れとした顔でビスケを見て言った。



「すごーい、ビスケかっこいー!」

「当たり前だわさ! 伊達に師匠やってんじゃないわよ!」



ステラがビスケに向ける憧れの眼差しが、妙に気に食わない。ちくしょう、ビスケのやつ、いいとこ見せやがって……。



「……チッ、油断すんなよ、ゴン!」

「うん!」



俺はゴンの背中を叩き、体勢を立て直す。かっこいいのはビスケだけじゃねえ。俺だって、ステラの前で無様な姿は見せられねーんだ。



「ゴンはビスケを足止めしろ! ステラは俺がやる!」



作戦を告げると同時に、砂浜を蹴って一気に加速する。神速(カンムル)の片鱗を見せるほどの速さで、ステラの背後に回り込んだ。



「っ!」

「……捕まえた」



耳元で囁くと、驚いて振り返るステラに水鉄砲を突きつける。だけど、その驚いた顔が可愛くて、引き金を引くのを一瞬ためらっちまった。



「オーホホホ、ステラは渡さないわさ〜!」



瞬時に現れたビスケがキルアの顔に水鉄砲を放ち、ステラの腰を抱き寄せて高笑いしながら連れ去って行った。そのビスケの顔に派手に水がかかる。



「油断大敵だよ!」



ゴンが水鉄砲を構えてニヤリとした。