許さないし、放さない
「はあっ……」
もう一度、その唇を塞ごうと顔を近づける。だが、ステラが俺の胸に顔を埋めてそれを拒んだ。チッ、焦らしやがって。
「……顔、見せろよ。お前の可愛い顔、俺だけに独り占めさせろ」
ステラの髪を優しく撫でながら、その耳元に囁く。抵抗するならそれでもいい。お前が俺に敵わねぇこと、体に直接教え込んでやるからな。
「だ、だったらっ……場所考えてよ……! もうやだあっ……」
周囲にはいつの間にやら見物人やらギャラリーが増えてきていた気がする。ステラは力の入らない体を預けながらキルアの胸に顔を埋めてイヤイヤをする。
場所考えろ、だと?うるせぇ。そんなもん、お前が俺を煽るからだろうが。俺の胸に顔を埋めて、か細い声で抗議するステラの姿が、逆に俺の加虐心を煽る。
「……へぇ、じゃあ場所変えりゃいいってことか?」
わざと耳元で囁いてやると、ステラの体がびくりと震えた。その反応が面白くて、口角が上がるのを止められない。
「っ……、そ、そういう問題じゃ、」
「分かったよ。なら、俺ん家行くぞ。そこなら誰にも見られねぇし、邪魔も入んねぇだろ」
これは決定事項だ。拒否権なんてあると思うなよ。ステラの返事を聞く前にその手首を掴むと、俺は人混みをかき分けるようにして歩き出した。溶けたアイスなんて、もうどうでもいい。今はこいつを、俺だけのものにしたい。
「あっ……、ねえっ……強引すぎるよ、なんなの……!?」
キルアはステラの返事も聞かずに強引に手首を掴み、連行するかのように連れ出す。ステラの手から溶け切ったアイスのカップが地面に落ちて溶けた液体が地面に広がる。
「ちょっと……キルアっ! ホテル、ゴン達はどうするの……飲み物を買いにいくと言ったきりだよ!?」
ゴンの名前を出された瞬間、俺の中で何かがブツリと切れる音がした。なんでこの期に及んで、他の男の名前が出てくんだよ。
「……あいつらのことなんて、どうでもいいだろ。お前は俺のことだけ考えてろ。今は、俺だけを見ろよ」
振り返りもせず、低い声で吐き捨てる。掴んだ手首に無意識に力がこもる。ステラの困惑した声も、今はただの雑音にしか聞こえねぇ。有無を言わせぬ口調で告げ、近くに見えたホテルに迷わず足を踏み入れる。受付の視線が突き刺さるが、そんなもん知るか。空いてる部屋のキーを奪うように受け取ると、エレベーターに乗り込んだ。
ステラは手首を強く握りしめられ強引に引っ張られるようにしてホテルに入る。強引すぎるキルアに戸惑いを隠せない。それにどうでもいいだなんて。
「……覚悟、できたか?」
「な、なんでそんなこと言うの、ねえキル……んっ……!」
密室になった途端、ステラを壁に追い詰め、その震える唇を塞ぐ。もう、誰にもお前を渡さねぇ。エレベーターという密室で、ステラの抵抗が弱まっていくのを感じる。唇を貪り、息が苦しくなる寸前で解放してやると、ステラは潤んだ瞳で俺を見上げてきた。その顔が、たまらなくそそる。唇の端を舐め上げ、挑発的に笑ってやる。ゴンの名前を出したこと、後悔させてやるよ。
「……誰のせいだと思ってんだよ。お前が、他の奴の名前を出すからだろ。部屋に着くまで、キスやめてやんねぇ。お前の頭ん中、俺でいっぱいにしてやるからな」
チン、と軽い音を立ててエレベーターの扉が開く。その唇を、もう一度深く塞いだ。お前が意識するのは、俺だけでいい。
「んっ……んふっ……」
貪るように、奪うかのように深く深く口付けられ、それを何度も繰り返されるとステラは立っていられなくなりキルアの体にもたれかかる。もう腰が抜けて足に力が入らない。エレベーターの扉が開き、誰かが乗ってくるかもしれないというのにステラの緩んだ唇からキルアの舌が入ってくる。
「やっ……め……」
「……やめねぇよ。お前が俺だけだって言うまで、絶対にやめてやんねぇ」
「ふぅ……んっ……」
腰を抜かしたステラの体を支え、その弱々しい抵抗を唇で塞ぎ込む。エレベーターの扉が開いたままだが、そんなことはどうでもいい。誰かに見られたって構わねぇ。こいつは俺のものだ。舌を絡めながら、その細い腰を抱き寄せる。部屋までこのまま連れて行って、お前の全部を俺に曝け出させたい。ステラの唇がどちらの唾液かわからないくらいにしっとりと濡れ、目からは生理的な涙がこぼれ落ちていく。
「……ほら、行くぞ」
ステラを軽々と横抱きにすると、部屋に向かって歩き出す。もう逃げ場なんてねぇよ。お前の思考も、体も、全部俺で満たしてやる。
「はあっ……はあっ、き、キルア……だけだから……っ」
数え切れないほどの深く甘いキスに息も絶え絶えになり、思考は蕩け切って何も考えられない。キルアに軽々と横抱きにされて無抵抗に部屋まで運ばれる。
ステラの蕩けきった表情と、俺の名前を呼ぶ甘い声に、腹の底から歓喜が込み上げてくる。そうだ、それでいい。お前の世界には、俺だけいればいいんだ。
「……やっと言ったな」
部屋のドアを乱暴に開け、鍵をかけるのももどかしい。ステラをベッドに優しく降ろすと、その小さな体に覆いかぶさった。
「やっ……いきなりなの? いきなり、そんな……っ」
「お前はもう俺のもんだ。誰にも渡しやしねぇ」
髪を優しく梳きながら、その潤んだ瞳を真っ直ぐに見つめる。抵抗する隙なんて与えねぇ。今夜は、お前が俺以外の何も考えられなくなるまで、愛してやる。
ドアは乱暴に開かれるし、ベッドに降ろす手つきは優しいもののすぐさま覆い被さってくるし、何なの?ステラは耳まで赤くなりながら両手で顔を覆い隠した。
「な、なんで……そんなに強引なの……もう……」
ステラが顔を覆うその仕草が、逆に俺の支配欲を煽る。その白い指の隙間から覗く、戸惑いと羞恥に染まった瞳がたまらなく愛おしい。
「……うるせぇ。お前が俺をこうさせたんだろ」
顔を覆うステラの両手を掴んで、頭上で縫い付けるように押さえつける。抵抗できなくなったステラが、潤んだ瞳で俺を見上げてきた。
「何が? 私の何がキルアをそうさせたの?」
「……俺以外の奴のこと考えてるお前が悪い。罰として、お前の全部に俺を刻み込んでやる」
ニヤリと笑い、その震える唇に顔を近づける。もう逃がさねぇ。お前の思考も、心も、体も、全部俺だけのもんだ。
「……覚悟しろよ、ステラ」
「キルア以外って……、み、みんな仲間でしょ……んぅっ……」
両手を掴まれて頭上で押さえつけられ、ほとんど強姦されてるかのようなその体勢にステラはぞくりと身を震わせた。両手を頭上で押さえつけられたまま、なすすべもなくもう何度目かわからないキスを受け入れた。
仲間、ね。その言葉が、俺の神経を逆撫でする。こいつはまだ分かってねぇ。俺がこいつらをどう見てるのか、俺がお前に何を求めてるのか。
「……チッ、お前は本当に分かってねぇな」
「っ……!」
唇を離し、苛立ちのままに舌打ちする。押さえつけた手首に力がこもるが、ステラは怯えたような目をするだけだ。
ステラはさらに強く、跡が残りそうなほど強く手首を押さえつけられ、微かな痛みに眉を寄せる。
「仲間だ? ふざけんな。あいつらは、お前の時間を奪う邪魔な存在だ。俺は、お前が他の奴に笑いかけるのも、名前を呼ぶのも、全部気に食わねぇんだよ」
ステラの耳元で囁き、その反応を確かめるように見下ろす。そうだ、その顔だ。もっと俺に怯えて、俺のことだけ考えろ。
「邪魔な存在……? ゴンも……? あんなに特別で大事な親友だと言っていたのに?」
ステラの口からゴンの名前が出た瞬間、俺の中で何かが切れた。特別? 大事? そんな言葉、俺以外のために使うな。胸の奥が燻るような苛立ちが抑えきれねぇ。
「……ゴンだって邪魔だ。特別なんざ知るか」
ステラの手首を押さえつけたまま、その呆然とした顔を見下ろす。痛みと混乱で揺れる瞳が、俺をさらに煽る。もう我慢できねぇ。お前は俺だけのものだ。
「他の誰かの名前、口にするな。俺が許さねぇ」