聖夜祭-共依存-



宵闇の中を、蛍のような淡い光が舞い降りる。
それは、聖なる光。
まるで、天からの祝福。
今宵生を給うた者への祝福の光。
そして、その日を祝う私達への賛美歌。

百合は、紫峰の隣にいた。
紫峰にご飯をよそって貰って、お礼を口にして。
ふとその背後にある窓の外の、美しい光景に見とれていた。



「? どうかなされましたか? 安寧香様」

「いいえ、いいえ、私はどうもしません。暫し見とれておりました」



心配そうな声に、ようやく紫峰の顔を見た百合が微笑む。
そして言葉を続けた。



「綺麗だなあ、って……」




紫峰の顔を真っ直ぐに見ながらそんな事を言うので、紫峰はドキリとしてしまった。




「きゅ、急に何を……」



言葉は中途半端に途切れ、そのまま俯いてしまった。
そんな紫峰を不思議そうに見ながら百合は言う。



「紫峰さんも、ご覧になっては? 窓の外の景色を」




ふわりと微笑む百合の顔を見て、そして窓の外を見て。
紫峰はようやく考え違いに気付いて「ああ……」と呟いた。



「確かに、綺麗です。これは見とれてしまっても仕方ないかと」

「ええ。まるで、祝福してるかのよう」

「何を、ですか?」



二人窓の外を眺めながら、会話は続いた。
紫峰の問い掛けに、百合は一呼吸を置いてから口にする。



「……私達のこと、です」

「わたくし達……?」




おそろしい程に美しく微笑む百合と、わかっていないような顔をした紫峰が見つめ合う。
その周りでどんなにか、姦しく人々が話していたとしても。
今、二人はお互い以外何も見えていなかった。

紫峰は美しい百合の顔に、
百合もまた、美しい紫峰の顔に、
見入っていた。魅入られていた。




「ああ、今漸く理解致しました。ええ、私達、て相違ありません」

「そうでしょう。だって、」




────今私の目には、貴方しか見えていない。

────今わたくしの目には、貴女様しか見えていない。



そう、言葉には出さず。
二人は結論付けた。
聖夜の日の、お互いしか見えていない、二人きりの空間で。
雪は降り注ぐ。

やがて、どちらからともなく。
手を伸ばし合って。
慈しむようにお互いの頬を包み込んで、見つめ合う。
まるで、そこだけ空間が切り取られたかのように。



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