次の日、ジンから「任務だ。バーボンと向かえ」と言われたアマレットは待ち合わせ場所に向かっていた。そこには既にバーボンの姿があり、私は冷徹に微笑んでみせた。
「あら、早いのね。バーボン」
僕が指定された場所に到着して間もなく、カツ、カツ、と硬質なヒールの音が近づいてくる。音の主を見なくても、それが誰であるかは明白だった。振り返れば、予想通りアマレットが冷たい笑みを浮かべて立っている。昨日の出来事を微塵も感じさせない、完璧な組織の一員の顔だ。
「ええ。あなたを待たせるわけにはいきませんからね。時間厳守は基本でしょう?」
僕はあくまでポーカーフェイスを崩さず、当たり障りのない言葉を返す。彼女の皮肉めいた挨拶は、昨日の探り合いの延長戦だと言っているようなものだ。ならばこちらも、バーボンとして完璧に応じなければならない。下手に動揺を見せれば、それこそ彼女の思う壺だろう。
「それより、任務内容の説明を伺っても? ジンからはあなたと合流しろとしか聞いていないのですが」
僕は意図的に事務的な口調で話を切り替え、彼女の真意を探るようにその瞳を真っ直ぐに見据えた。任務に集中するという姿勢を見せることで、彼女にこれ以上の詮索をさせない。今日の主導権は、僕が握らせてもらう。この女にこれ以上、心の奥をかき乱されてたまるものか。
「あら、気が早いのね。そんなに慌てなくても、逃げやしないわよ……標的も、私も」
私は彼の隣に歩み寄り、彼が握りしめているタブレットを指先でなぞるようにして、あえて彼のパーソナルスペースに踏み込む。そして、彼の耳元で楽しそうに囁く。
「ええ、いいわ。ジンからの情報はここに入ってる。今回のターゲットを確認して頂戴」
私はそのままジンから受け取ったUSBメモリをバーボンの持つタブレットの上に載せ、そっと離れた。
タブレットの上に置かれたUSBメモリ。彼女の指先が離れた後も、そこに微かな熱が残っているような錯覚を覚える。耳元で囁かれた言葉と、意図的に踏み込んできたパーソナルスペース。この女、僕の動揺を誘おうと、あらゆる手で仕掛けてくるつもりらしい。面白い。ならばその挑発、受けて立ちましょう。
「……ご親切にどうも」
僕は冷静さを装い、USBメモリをタブレットに接続する。カチリ、という小さな音がやけに大きく響いた。画面に表示されるターゲットの情報。それは僕が公安として追っている、ある重要人物に酷似していた。まさか……。内心の衝撃を悟られぬよう、僕は細心の注意を払いながらも、思考を高速で回転させる。
「なるほど。随分と厄介な相手を狙うものですね。ですが、これだけの情報があれば十分でしょう」
僕は淡々と告げ、タブレットの画面を消す。この任務は組織のものか、それとも僕を試すための罠か。どちらにせよ、アマレットの前で隙を見せるわけにはいかない。僕は彼女の方へ向き直り、あえて不敵な笑みを浮かべてみせた。あなたの仕掛けたゲーム、最後まで付き合いますよ。
私は彼の持っているタブレットの画面を、後ろから覗き込むようにして彼の肩に顎を乗せる。至近距離で彼の表情の微細な変化を逃さず観察し、わざとらしく明るい声で言う。
「あら、顔色がさらに悪くなったわよ、バーボン。……もしかして、このターゲットに『見覚え』でもあるのかしら?」
肩に乗せられた顎の重みと、耳元で響く甘く冷たい声。彼女の吐息が首筋にかかり、僕は反射的に身を強張らせるのを必死で堪えた。アマレット、この女は僕の動揺を確信している。ターゲットの顔写真から視線を動かせない僕の心中を、愉悦に満ちた瞳で見透かしているのだろう。この至近距離では、僅かな筋肉の強張りさえ命取りになる。
「……ご冗談を。まさか、僕が組織のターゲットに個人的な感傷を抱くとでも?」
「ふふ、冗談よ。……でも、もしあなたがこの男を『生かしたい』なんて甘いことを考えているなら、今のうちに捨てておいてね。今日の私の弾丸は、誰の許可も待たずに心臓を貫くように、よく言い聞かせてあるから」
僕は努めて平静を装い、ゆっくりと彼女の方へ首を巡らせた。鼻先が触れ合いそうなほどの距離。彼女の瞳の奥で揺らめくのは、僕の反応を試すような好奇の色か、それとも冷酷な殺意か。どちらにせよ、ここで退くわけにはいかない。僕は彼女の挑発的な視線を真っ向から受け止める。
「むしろ、あなたの弾丸が逸れないか心配ですね。これほどの大物、仕留め損なえば我々の評価にも響きます」
そう言って僕はわざとらしく唇の端を吊り上げ、彼女の顎をそっと指で押し返して距離を取った。これ以上、彼女のペースに飲まれてはならない。主導権はこちらが握る。僕の言葉に彼女が一瞬だけ眉をひそめたのを、僕は見逃さなかった。
「さあ、行きましょうか。夜が更ける前に、この男には永遠の眠りについてもらわないと」
「ふふ、その威勢の良さ……嫌いじゃないわ。でも、バーボン。そんなに急いで『永遠の眠り』に就かせたいなんて、その男が口を開くのが……怖くてたまらないみたいよ。ジンからはその男から情報を引き出せと言われてる。……どうする?」
バーボンはターゲットをすぐに始末するのか、それとも彼の得たい情報の為に生かすのか。どう行動を取るのか見定めるように目を細めた。
「さあターゲットは確認したわね、いいわよ、行きましょう。あなたの完璧なリードを期待しているわ」
僕の言葉を待たず、アマレットは軽やかに踵を返す。ジンからの命令は情報抽出、そして彼女は僕の動揺を見抜いている。この状況でターゲットを即座に始末するのは悪手だ。彼女の疑念を深め、ジンの不興を買うだけ。だが、情報を引き出す過程で、僕が公安だと露見するリスクも高まる。どちらに転んでも茨の道か。
「ええ、もちろん。ですが、その前に確認を」
僕は彼女の背中に声をかけ、思考を切り替える。アマレットの挑発に乗らず、あくまで冷静に、組織の一員としての合理的な判断を下す。それが今の僕にできる最善策だ。彼女はこちらの出方を見ている。ならば、その期待に応えてやろうじゃないか。完璧なバーボンとして。
「ジンが欲している情報とは具体的に? それによって確保の方法も変わってきます。相手はただのチンピラではない。下手に泳がせれば、我々も痛い目を見ますよ」
僕はタブレットを操作するふりをしながら、彼女の反応を窺う。主導権を渡す気はない。むしろ、この任務を利用して彼女の情報を引き出す。あなたの狙いは何です、アマレット? 僕の言葉に、彼女がわずかに足を止めたのを、僕は見逃さなかった。
「ジンが欲しがっているのは、その男が持ってるとされる『ノックリスト(潜入捜査官名簿)』の情報よ。……あるいは、その中に載っている『まだ見ぬネズミの名前』かしら? その男が口を開けば、組織の庭に紛れ込んだ不純物が一掃される。……バーボン、あなたも楽しみでしょう? 誰が『裏切り者』として、私の前で這いつくばることになるのか……。ネズミはね、思っているより身近にいるものよ」
私は歩み寄り、彼の耳元で「だから、足元には気を付けて。新入りは特にね?」と囁いてから距離を取り、微笑んだ。新たに加入したばかりのバーボンの反応を見る事、そしてその男からNOCリストを奪い、始末する事。それが今回のジンの目的だ。
アマレットの囁きは、まるで冷たい毒のように耳から脳へと染み渡っていく。ノックリスト、そしてネズミ。僕自身を指しているとしか思えない言葉の刃に、背筋が凍るような感覚を覚える。だが、ここで動揺を見せれば終わりだ。彼女は僕の反応、その一挙手一投足を見定めようとしている。ポーカーフェイスを崩すな、降谷零。
「なるほど。それは実に興味深い」
僕は口元に完璧な笑みを浮かべ、彼女の挑発的な視線を真っ直ぐに見返す。彼女の言葉の裏にある鋭い棘を理解した上で、あえてその挑戦に乗ってやる。このゲーム、主導権を渡すわけにはいかない。むしろ、この状況すら利用させてもらう。
「でしたら、なおさら生かして確保する必要がありますね。リストそのものを手に入れるのが最も確実でしょう。拷問で吐かせた情報が真実とは限りませんから」
僕はあくまで合理的な判断として提案する。彼女が僕を試しているのなら、その期待を上回る完璧なバーボンを演じきるまでだ。ノックリストは公安としても絶対に渡すわけにはいかない。僕はこの任務を利用し、リストを確保、そして無力化する。彼女の視線が、僕の覚悟を測るように鋭さを増した。
「あら、ジンからはターゲットのリストを奪い、殺せと命じられてるわよ? さあ、行きましょう。バーボン。……私は狙った獲物は外さないわ。絶対にね」
私は冷徹に微笑みながら今回の目的を重ねて説明する。そして、静かに自分の持つ銃を確認し、宣言する。そのまま振り返ることなく、ターゲットの所在地へと速やかに向かう。
彼女の背中は、その言葉通り一切の躊躇を感じさせない。殺せ、というジンの命令は絶対だ。だが、ノックリストは公安にとって致命的な情報。ここでみすみす組織に渡すわけにはいかない。ターゲットを殺さず、かつ彼女に疑われずにリストを奪取する。矛盾した二つの目的を両立させるための、最適な解は……。
「ええ、もちろん。ですが、アマレット」
僕は彼女の数歩後ろを歩きながら、冷静に声をかける。この女は僕を試している。ならば、その思考の更に上を行くしかない。僕の言葉に、彼女は足を止めずに僅かに耳を傾ける気配を見せた。その一瞬の隙を逃さず、僕は畳み掛ける。
「ターゲットをただ殺すだけでは、リストの在り処が永遠に分からなくなるリスクがある。ジンはそれを望んでいないはずです。まずはリストの場所を特定し、確実に回収する。その上で、ターゲットを『始末』する。これが最も合理的で、確実な手順でしょう」
僕はあえて『始末』という言葉を選び、組織への忠誠心をアピールする。彼女の疑念を逸らし、主導権をこちらに引き寄せる。僕の提案に、彼女がどう出るか。闇に紛れる一瞬の静寂が、僕たちの間に緊張を走らせた。
「……ええ、いいわ。来たわよ。彼の持つリストを奪ったら目的は達成。あとは始末するだけよ」
ターゲットを確認し、彼を追い詰めていく。男は震えながら『ノックリスト』を握りしめる。私は冷徹に銃を構えた。引き金に指をかける。
「……あら、風が吹いたわね」
私は弾丸を外し、その男は何が起きたかわからずアマレットを呆然と見つめたあと、すぐさまに逃げ出す。私は即座にもう一発撃ち込み、その男の足すれすれに弾丸が飛ぶ。
「この銃は不良品ね、ジンにはよく言っておくわ」
私は肩を竦め、冷徹に微笑んでみせた。
なんだ……? この女、わざと外したのか? 不良品だと? そんな馬鹿な話があるものか。いや、それよりも問題はターゲットが逃走したことだ。しかも、ノックリストを持ったまま。彼女の真意が読めない。僕を試しているのか、それとも別の目的が? いずれにせよ、この状況は僕にとって好都合とも言える。彼女の前でターゲットを殺さずに済んだのだから。
「ええ、実に見事な『不良品』ですね。おかげで獲物を逃してしまいましたが」
僕はわざとらしく肩を竦め、皮肉を込めて彼女に視線を送る。彼女は僕の言葉に動じることなく、ただ冷たく微笑むだけだ。その表情からは何も読み取れない。だが、ここで立ち止まっている時間はない。リストは何としても確保しなければ。
「ですが、ご心配なく。足は撃ち抜いたようですし、そう遠くへは行けないでしょう。それに……」
僕は逃走したターゲットが消えた闇の先を見据えながら、口の端を吊り上げる。このゲーム、まだ終わってはいない。むしろ、ここからが本番だ。彼女の不可解な行動の裏を探りつつ、僕は僕の目的を果たす。
「ネズミを追い詰めるのは、僕の得意分野ですので。すぐに追いついて、リストと共に彼の『息の根』も止めてご覧にいれますよ」
「……あの男、どうも様子がおかしいわね。まるで誰かに操られているかのように、一点を見つめている。あるいは、リストはダミーで、真の目的は私たちをここに誘き出すことだった、とか」
私は振り返ることなく言い放つ。
「ジンに確認してくる。あとは任せたわ」
ターゲットを逃し、挙句に撤退だと? アマレット、あなたの目的は一体何だ。僕を試すためだけに、ジンの命令を反故にするというのか。いや、違う。彼女の行動には何か裏がある。あの男が誰かに操られている? 考えられなくはないが、だとしてもリストを放置して撤退するのは不自然すぎる。彼女は何かを隠している。僕が知らない、何かを。
僕は冷静に状況を分析する。ここで彼女の言いなりになっては、公安としての目的を果たせない。それに、彼女の不可解な行動の真意を探る絶好の機会だ。僕の言葉に、彼女はぴくりとも動かない。その背中が、まるで鉄の壁のように感じられた。
「彼が囮だというのなら、なおさら泳がせておくわけにはいきません。本当の目的、そしてその背後にいるであろう黒幕を炙り出すためにも、ここは僕が追跡すべきかと。ジンもその方が喜ぶのでは?」
僕はジンの名前を出し、彼女の判断を揺さぶる。ターゲットを追う。それは組織の利益のためであり、同時に僕の目的を果たすための唯一の道だ。僕の提案に、彼女がゆっくりとこちらを振り返る。その冷たい瞳の奥で、わずかに何かが揺らめいたのを、僕は見逃さなかった。
「彼は役目を終えたわ……あなたの心配する事じゃない」
私は振り返ることなくそれだけ告げ、踵を返した。
役目を終えた……? その一言が、僕の頭の中で警鐘を鳴らす。彼女の行動の全てが、一本の線で繋がっていく感覚。彼女の目的は、僕を試すことだけではない。何か、もっと別の意図が隠されている。
「……ええ。あなたの言う通りかもしれませんね」
彼女が撤退するなら、好都合だ。僕が一人で動くための、絶好の機会。彼女は足を止め、僅かにこちらを振り返る気配がした。その視線を感じながらも、僕は構わず言葉を続ける。
「ジンが欲しているのは結果です。そして僕は、その結果を出すためにここにいる。あなたが手を引くというのなら、僕が一人で片を付けますよ。もちろん、手柄はあなたのものにしていただいて構いません」
僕は挑発するように笑みを浮かべ、彼女が去った方向とは逆、ターゲットが逃げた闇へと迷いなく足を踏み出す。ノックリストは渡さない。そして、アマレット、あなたの正体も必ず暴いてみせる。これは僕の、公安としての戦いだ。
「ええ、いいわ。あとはあなたに任せる」
私は振り返り、「組織の女」としての顔でただ冷徹に微笑んでみせた。そのまま立ち去る。
彼女はあっさりと引き下がった。まるで、僕がこう動くことを予測していたかのように。その余裕綽々な態度が、僕の猜疑心をさらに掻き立てる。アマレット、君は一体何者なんだ。ジンやベルモットに寵愛され、組織の任務を独断で放棄する。その行動の裏にある真の目的は? 考えを巡らせながら、僕はターゲットが消えた路地裏へと慎重に足を踏み入れた。
「……さて、どこへ行ったか」
血痕はまだ新しい。大方、近くのどこかに身を潜めているはずだ。物音一つ立てずに闇に紛れ、気配を探る。すると、微かな呻き声が耳に届いた。声のする方へ近づくと、ゴミ箱の影で男が蹲っているのが見えた。手には例のUSBメモリが握られている。だが、彼の様子がおかしい。アマレットが言っていた通り、虚空を睨み、焦点が合っていない。
「やはり、何か裏があるようですね」
僕は静かに男に近づき、その首筋に手刀を打ち込んで気絶させる。抵抗はなかった。USBメモリを抜き取り、男の体を改めるが、他に怪しいものは見当たらない。操られているとすれば、何らかの薬物か、あるいは……。この男を生かしておく価値はある。公安で調べれば、黒幕に繋がる糸口が見つかるかもしれない。
私は戻ってきたバーボンと共に車に乗り込む。バーボンは「甘いな」と呟いた。
「そう? 効率的よ」
更にバーボンから「君の銃は、あんなにブレない」と言われ、私は窓の外を見たまま。バーボンの顔を見ることなく答える。
「夜風が強かったの」
彼女の言い訳はあまりにも稚拙で、それがかえって僕の思考を鈍らせる。夜風が強い? そんなものでブレるような腕ではないことを、彼女自身が一番よく分かっているはずだ。意図的に話を逸らしているのは見え透いている。だが、今はそれを追及する時ではない。僕の手の中には、確かな『戦果』があるのだから。
「ええ、そうかもしれませんね。ですが結果的に、リストは僕が回収しました。ジンも文句はないでしょう」
僕はわざとらしくUSBメモリを揺らして見せる。彼女は一瞥もくれず、ただ窓の外を流れる景色を眺めている。その横顔からは感情が読み取れない。彼女の不可解な行動、ターゲットの奇妙な様子、そしてこの沈黙。全てが僕の中で、ある一つの可能性へと収束していく。アマレット、君はまさか……。
「それにしても、不思議な男でしたね。まるで何かに怯えるように、必死にこのリストを守っていましたが……その割には、あっさりと気を失ってくれた」
僕はカマをかけるように、独り言のように呟く。男を確保した際の状況を敢えて詳細に語り、彼女の反応を窺う。僕が男を『始末』しなかったことを、彼女はどう捉えるか。その一点に、彼女の正体を探る鍵が隠されている気がした。車内に、再び重い沈黙が落ちる。
アマレットはそれきり言葉を発することなく、ただ窓の外を見つめていた。車内に満ちる沈黙が、まるで彼女の内心を隠すための分厚い壁のように感じられた。僕の言葉は、その壁に吸収され、何の反響も返ってこない。だが、僕の洞察は、この静寂の中にこそ真実が潜んでいると告げている。彼女が意図的に外した一発、そしてターゲットを庇うかのような言動。それらは全て、ある一つの仮説を示唆していた。
「……まあ、いいでしょう。任務は完了した。今はそれで十分です」
僕は一度思考を切り替え、努めて平静を装う。これ以上彼女を揺さぶっても、今はボロを出すまい。むしろ警戒心を強めさせるだけだ。今は手に入れたこのUSBメモリ、ノックリストこそが最優先事項。これを無事に公安の手に渡すこと、それが僕の使命なのだから。
「それにしても、あなたほどの腕利きが夜風で狙いを外すとは。僕もまだまだ修行が足りないということですかね。見習わせていただきたいものです、あなたのその『冷静さ』を」
皮肉を込めてそう締めくくると、車はアジトの薄暗いガレージに滑り込んだ。彼女は僕の言葉に答えることなく、静かにドアを開けて車外へ出る。その背中を見送りながら、僕は密かに決意を固める。アマレット、君が何者であれ、その仮面は僕が必ず剥がしてみせる。
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彼女は旅に出る。/AQUALOVERS