Walkure


盲目





盲目


 


死体埋め。夢主が異性と関係を持っていた描写があります。



夢主side

 恋人が死んだ。その事実は目の前にいる刑事によって、直接告げられた。テレビでよく見る光景だ。彼の遺体が町の外れにある森から見つかったそうだ。胃から何かがせり上げてきて、思わずタオルで口を抑えた。三輪は私と刑事たちを部屋に招き入れ、がたがたと震える私にあたたかいカップを出し、刑事に茶を出した。
「それはつまり、死体遺棄ということですか」
まず声を発したのは、三輪だった。
「そういうことになります。午後8時頃に男女の人影を見たという証言があるのですが、あなたではありませんか」
「違います」
 私は力なく、頭を振ることしかできなかった。恋人が、死んだ。冷たい土の中で一晩眠っていたのだと思うと、頭が、胸が、締め付けられた。
「その時間なら、私と名前は一緒に勉強していました」
「それは確かですか」
「昨日のことですから、確かです」
「ね?」と三輪は私と目を合わせ、私はこくりと頷いた。





三輪side

 見てしまった。彼女が恋人を橋の下に突き飛ばしたところを。「彼氏にけりをつけてくる」そう言って寮を出た後を付いた矢先のことだった。「あっ」という短くて野太い悲鳴と、ごとりと鈍い音が、夜道に静かに響いた。きゃと高い声が聞こえて、間髪入れずに彼女の元へと駆け寄った。
「大丈夫だから、大丈夫だから」
 震える彼女を支えて、橋の下まで降りた。そこには、関節がありえない方向に曲がり、血がどくどくと流れる男の姿があった。動きが少しずつ鈍り、やがて動かなくなった。
 当然の報いだと思う。呪術師で稼ぎがいいからと彼女に漬けこみ、彼女が別れを告げようとすると、セックスをしていた時の動画を周囲にばらまくと脅していたことも、全部。気持ちが悪い。こんな男、死んで当然だ。
「ごめんね、あと少しだから。持てる?」
 二人で死体を持ち上げる。意思を持たないタンパク質の塊となったそれは想像以上に重いけれど、どうにか持てる。日頃の訓練がここで活きてくるのは、なんて皮肉なんだろう。
ズボンのポケットからスマートフォンを抜き出して、自分の胸ポケットにしまった。スマホの中の彼女の痕跡も、彼の存在も消していくために。死体に土をかけていく。制服が黒くて血痕も土の汚れも目立たないのが幸運だ。
「私、本当に、殺してしまった……?」
「当然の報いだと思うよ」
 淡々と、何も考えずに、ひたすらに埋めていく。呪霊を殺す行為とそんなに変わらないのかもしれない。私はいつ、この感覚が鈍ってしまったのだろう。でも大丈夫、これで彼女は解放される。罪は一緒に背負うからね。お願い、せめて地獄には一緒に行かせて。ここまでして彼女の隣にいたい私の執着の正体を、暗闇の中で探していた。