歌姫の実力?


歌うのは嫌いじゃない。
楽しいし、気が晴れるし、気持ちもいいと思う。
だが人前で歌うとなればそれは別問題なのである。

「エマのいたギルドは歌を披露してたんですよね」
「歌がメインで、あとは踊りとか演奏とか色々してたよ」
「楽しそうですね!エマも何かしてたんです?」

いやぁ…と渇いた笑みを張り付かせる。
私は何方かと言うと雇われ用心棒みたいなもので、ギルドの団員かどうかは微妙なとこだと自負している。
首領や他の団員達が私を迎え入れてくれてたのは自覚しているのだが。

「舞台に出ることはなかったけど、首領にいつか歌えって言われてたかな」

人前で披露できるレベルになってから、と言われたのは黙っておく。
しかしそれを前向きに受け取ったのかエステルは瞳を輝かせながら、聴きたい、と声高く言った。

「ユーリも聴きたいですよねっ?」

裾を引っ張り促す。エステルの勢いにのまれたのか、本当に興味があるのか、ユーリも肯定派らしい。

「エマの初舞台が観れるとは感激だな」
「まだ歌うなんて言ってないんだけど」

断れない空気になってしまい、もうどうにでもなれとヤケになる。
唇を開き、空気を肺に押し込んだ。

「…独特な歌声でいいんじゃないか?」
「…そ、そうですね。味わい深いというか…」
「………無理に褒めようとしなくていいよ」
「エマはとても素敵な声なのでそこを伸ばせば更に良くなります!」
「優しさが辛い!」

二度と人前で歌うもんか。
宥める二人に背を向けて、固く誓った。



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