発熱


体の節々が軋むように痛む。視界がぐるぐると回る。身体中の血が沸騰したかのように熱くて、毛穴から滝のように汗が噴き出す。
身体を動かす気にならなくて、しばらくぼーっと天井の木目を眺めていると、突然額に何か冷たいものが乗せられた。
「?」
「ようやっと起きたで!治!」
誰かが枕元で叫んでいる。聞き覚えのある声だ。
「……何や」
今度は別の眠たそうな声が、足元のさらに向こうの方から聞こえてくる。
「ご主人様が起きたんや!」
「ホンマか!」
枕元の声に反応してバタバタともう一人が畳の上を走って来るのが聞こえた。
「ん、具合はどうや?」
熱で浮かされているせいだろうか。同じ顔が二つも覗き込んでいる。
「…………だるい、かも」
「そら高熱出して三日寝込んだんやからな」
三日寝込んでいた。その言葉だけが頭の中を空回りして内容が一向に理解することができない。彼らの言葉が本当なら、私はどうやらあのあと熱で倒れたようなのだ。
「あんな無茶やらかしたらそうもなるわ」
「最初は順番や言うたやんか」
「それで三つ前の主人の器が耐えきれへんで死んだんやで」
「そうやったっけ?」
ぽんぽんと頭上で交わされる会話にぼんやりと耳を傾けていると、私はこの二つの双眸が三日前に私を噛んだ半人半狐の双子であることを思い出したのだった。
「…………あなたたち、誰」
掠れてガラガラになった声を絞り出してそう尋ねると、双子は少しの間顔を見合わせて、幾度かの瞬きを繰り返した。
「誰、て言われても……」
「まあ、オレたちは憑き物や」
「あんたの魂に取り憑いた、人狐てやつやわ」
「細かいことは後で説明したる」
「今話してもこんがらがるだけやろし」
「せやから末永く可愛がってな」
「オレら、めっちゃできる子やから」
彼らはそう交互に言葉を紡いでは整った顔を同じように綻ばせて笑う。
「俺が侑や」
「俺が治な」
簡単な自己紹介を終えると、彼らはまた私の顔に玉のように浮かんだ汗を、濡らした手拭いで拭っては、私の目をじっと覗き込むのであった。



もどる
ARCATRAZ