番外編

13話



いつもの癖というか特に何も考えず、笠原の頭に手を置く。
しばらくしないうちに、小牧と呼ぶ彼女の声がしてそちらを向くと、向こうから小牧と彼女が来るのが見えた。そこで、自分の眉間にシワがよるのがわかる。




一緒に来るのが問題ではない。問題は……




何で手をつないでるんだ……





何かあるわけじゃない。そんなことは分かっているのに、イライラする。



『えっと…手伝いに…来たんだけど……もしかして終わった…??』


恐る恐る聞いてきた名字をじっと見る。



『……えっ?!え、なに!!??』





顔を赤らめながら狼狽えるのを見るとさっきの感情はどこへやら。

こいつの表情一つでこんなにも自分の心情が変わるものなのか




「(俺も単純なものだ)…いや、なんでもない。手伝ってくれるんだろ?こっち頼めるか??」

『あ、うん!了解!!』




この時、自分に向けてくれる笑顔にホッとしてこいつの気持ちを考えてもいなかった。













無事、今日も業務を終了し帰宅する。
ふと共同の自販機の前の椅子目が行き腰掛けた。

『……はぁ……』


何もしてないと考えてしまう今日の堂上……篤と笠原のあのシーン。

篤に限って…もちろん思うところはある。でも信じられない自分がいることに否定できない。きっとそれは、



『自分に自信がないんだ……』





お世辞にも可愛い部類ではない顔にそんなに高くない背。一般女性より、業務部よりついている筋肉。だからといって防衛部に、図書特殊部隊に入ったことに後悔なんてしていない。

外見がダメなら中身はというとそれにも自信はない。


女の子らしくはない性格に、裁縫は得意とはいえない。なら料理はどうかといえば、簡単なものしか作れない。汚くないよう注意をはらっているが掃除だってマメにはできない。



本当はずっと不安だったんだ…図書大の時とは違いずっと一緒にとは行かなくなった職場。携帯という簡単に連絡が取れるものがあってもこういう仕事に互いに就いているのだ。一方的な都合で電話はおろかメールさえしても用件だけ伝え終わらせてしまっていた。



笠原の見計らいの件があった時も篤が辛い思いをしていたのも知っていたのにこっちも立て込んでいて会いに行くことさえ出来なかった。





いや、そんなの言い訳だ……どうにか工夫をすれば行けたかもしれない。ようは怖かったんだ……個人としては篤がやったことはとてもいい事だし正しいと思う。しかし、図書隊としては別だ。どの立場から、なんて声をかけたらいいのかわからなくて私は





逃げた






どんどん暗い方に考えがいっているとトントンと肩を誰かに叩かれた。


下を向いていた顔をあげるとそこには柴崎がいた。


『あれ、柴崎どうしたの?』

「どうしたのはこっちのセリフですよ…何してるんですか?こんなところで、風邪ひきますよ?」

『え…あ、もうこんな時間か……』


自分が思っていた以上に座って考え込んでしまったらしい。ほんとに風邪をひきかねないと思い部屋に戻ろうと腰を上げる。
じゃあ、と声をかけるとそれを柴崎は遮ってきた。





「このあと何も無いなら一緒にどうです??」




缶ビールを両手いっぱいに持って。






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