番外編
5話
小牧の一言に俺達2人でまわる事になった訳だが、一切会話がない。
いや、公私混同はしたくはないからそんなペラペラ話す必要は全くないのだが、無言というのはどうなのだろう。
何か俺から話すべきか?…なんて言えばいいんだ?!ずっと連絡は取っていたが、電話やメールでの会話と本人目の前にしての会話は緊張する。
いや、恋人前で会話が緊張するってどこの中学生だよ……
そんなことを悶々と話していたら『ごめん』と謝罪が聞こえた。
ごめん…??
「は?何がだ?何かしたのか??」
『…黙って来ちゃったこととか、』
「それはもう…ん?とか??あと何がある」
『笠原とまわる予定だったのに私になっちゃった…みたいな』
だんだん声を小さくして言う名前にはぁ?と言ってしまう。
いや、意味がわからん。なんで俺が笠原と回らなくなったからってこいつが謝る?
「何、わけわからん事を言ってるんだ。…こんなこと今いうべきかどうかはわからんが、俺はまさかお前と同じ職場で働くことになるとは思わなかったからな。……これでもちょっと浮かれてる」
……そこまで今言うことなかった…!!!
恥ずかしくなって顔をそらしながら歩くスピードを速めると、バーカっと声が聞こえたので反論しようと振り返ると、
『私もだよ』
と、少し顔を赤らめて微笑んでいた。
「……っ」
くそっ、ここは職場だ。仕事中だ。そう自分に言い聞かせる。しかし、変わってないようでこいつも変わったんだなと思った。こんなに大人な女性のような(実際大人だが)顔をするようになったんだと。それを思うと、自分たちが離れていた時間の長さを実感し、寂しくも思う。
『??どうかした??』
「……いや、今日夜空いてるか?」
『今日??予定はないけど…あ、でも隊長が親睦会を開いてくれるとかなんとか言ってた気が…』
「なら、それは違う日にしてもらう。今日何も無いなら夕飯でも一緒に食い行かないか?」
『!…うん!!…楽しみにしてる!!』
!!
嬉しそうにニッと笑う名前を見て、こいつはこいつだと。例え、知らない表情をしていても、ここにいるのは名前だ。
離れていた時間よりも長く、そして思い出を作ろう。もっとこいつの色んな表情を見れるように。
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