その2

※ここから夢主視点


なぜ私はこんな状況に陥っているのか。
エネルゴンティーを用意しながら、背後のテーブルセットに腰掛ける破壊大帝を盗み見る。

あの後すぐに降参のポーズをとり、殺すなら殺してくれた言った。
しかし、このコロニーへはたまたま立ち寄っただけで彼に攻撃の意思はないそうだ。
補給もさせてもらえるならありがたいと言われ、すごく拍子抜けした。

ただ補給するよりこうして茶として楽しむ方がお好みらしい彼は、カスタマイズされた機器たちが珍しいのかしげしげと見つめている。

「なかなか凝った機械だな。
サウンドウェーブも似たようなカスタマイズをやっていたぞ」

「サウンドウェーブ?あの、剣闘士の?」

言ってから、しまったと思った。
長い間こんな辺鄙な場所に引きこもっていたせいですっかり忘れていたが、サウンドウェーブはディセプティコンで情報参謀として活躍していたはずだ。

「貴様…その顔、どこかで見たことがあると思えば、何度かコロッセオで会ったことがあるな」

「覚えてくだっていたとは。光栄です」

お茶の準備を完了させ、メガトロンへカップを差し出す。
勤めて冷静に…と念じてみたが、エネルゴンは縁のギリギリまで波を立てていた。
死を覚悟していても、怖いものは怖いらしい。

「フン…、確かナマエといったか?」

「な、どこで名前を!?」

「オプティ…いや、オライオンから貴様の名前を聞いたことがある」

確かに、私はオライオンと同じく情報部勤務だった。
メガトロナスと知り合いであるという彼に頼み込み、コロッセオの特等席に入らせて貰ったのは1度や2度ではない。

「オプティマス・プライムとはかつて同じ職場で働いてましたから」

「ほぅ…さしずめ、セキュリティ担当といったところか?」

にやり、と片方の口の端をあげたメガトロンに、私も笑って返す。

「戦時中はお世話になりました」

剣闘士だったはずのサウンドウェーブにシステムの防御をこてんぱんにされた衝撃は、まだまだ色褪せそうにない。

「……、終わった話だ。許せ」

メガトロンから謝罪の言葉が出るなんて。
驚いた私は思わずカップを派手な音を立ててテーブルに着地させてしまった。

「エネルゴン、お口に合いませんでしたか?」

「なんだ急に」

「それは此方の台詞です!
破壊大帝と恐れられた貴方が謝罪だなんて!!」

言ってからしまった、と思ったが音となって出てしまった以上取り消すことはできない。

「死んだはずが生き返り、支配されたかと思えば解放され。
その間にすっかり戦争で得たかったものも見失った我が破壊大帝なぞ、笑わせる」

どこか遠くを見るような眼でそう、けして大きくない音量でそう告げたかつての巨悪は、寝ると言い残して居住エリアの方へ歩き去ってしまった。

−あの眼は知っている。
なぜなら、セイバートロンへ戻ることを拒否し、ここへ残ると決めた私と同じ眼だから。

きっと、彼も疲れてしまったのだ。
なにもかも。