■ プロローグ

 えー……あれで高校生って本当ですかいな。

 眼下で繰り広げられる試合風景に、ただただ圧倒され呟いた言葉は、隣ではしゃぐ友人には届かない。

 片想い中の先輩に、弟くんの試合応援に誘われたの!
 嬉しそうな友人に付き合わされることになり潰れたこの休日。まあいいか、せっかくだし若さあふれる高校生の青春でもちょっくら見物しますかーと気楽に考えていたんだけど……なんだこれ。

 まぁ、ちらほら幼さの残る高校生!って子もいるんだけれど、明らかに何か違う子も多くておねーさんびっくりだわ。大学の男友達よりガッチリしているんじゃない?って子もいるし。

 一方、体格はそうでもないのに、やたら目につく子もいる。

 特にあの、金髪の子。よく言えば個性的、言わなかったら悪目立ち。あの金髪であのツンツンって凄い攻撃的ですよ。恐すぎですよ。
 でもあんな"いかにも不良"な見た目でも汗を流して真面目に部活動を頑張っているんだなぁと、あまりのギャップに感動さえしてしまう。


「じゃあ、なまえまたね!」

 いつからあんたの家はそっち側になったんだとは突っ込まない。
 さっさと帰れオーラを纏って笑顔を向ける彼女に手を振り、そのまま先輩達と別れて一人歩き出す。私もこっちなんですよと最寄り駅と真逆の道へと進む彼女には苦笑するけど……こういう、友人相手に思惑を隠さないところは彼女の美点で魅力の一つでもあるので憎み切れないんだよなぁ。

 ま、友人が幸せなのはいいことだ。

 後は上手くやれよ。なんて思いながら、それなりに気分よく歩いて行く。


「あー、しかし今日は眼福だったなぁ」

 無意識でそう呟いてしまい、自分のおっさん具合に苦笑してしまう。
 高校生の試合なんてと思っていたけれど、いやいやなかなか。熱い闘志に、逞しい選手達と、そして何より羨ましいほどの団結力。

 ああ、いいもの見たなぁ。



 ……なんて。
 そんな、ちょっと記憶に残る、けれど結局はただの日常で終わるはずだったのに。はずだったのに。


 ああ。人生何があるかわからない!


(2013)
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