| ■ 中 「……ねえ、ゼル? 一緒に、寝よう?」 押し倒した格好のまま、頼りない布切れ一枚のこの身体を倒して、ゼルガディスに重ねる。 いつものローブを脱いだ彼の薄い服越しに感じる体温は、平均的な男性のそれに比べるといくらか低いとはいえ、確かに暖かかった。ただの石人形なら決して持つことは無いその熱に、ほっとする。けれど、そんな優しい気持ちでいられたのも束の間だった。 すぐにそれだけでは満足できなくなり、今度は大胆に服の隙間に手を入れて、まくり上げて、その肌に直に手を這わせる。 「おい、なまえ、さっきからなんの冗談だ」 この期に及んでそんなことを言うゼルガディスに、ツンと鼻の奥が痛くなる。 「私の話、聞いてなかったの? ……いいもん。ゼルが食べてくれないなら、私が食べちゃうんだから」 知ってた? 女にだって性欲ってのはあるんだから。そして、もちろんこの私にだって。ゼルはおとなしく、私に食べられてたらいいんだから。茶化すように口にした言葉とは裏腹に、うっかり歪みそうになる顔が情けない。 そんな内心を隠すように、私は無理矢理に拗ねた口調と意地悪な笑みを作って、チュッとゼルガディスのお腹にキスを落とす。 石と魔と人が不自然に馴染んだ身体。その固く……しかしちゃんと柔らかい不思議な感触の肌に、唇で触れ、舌を這わす。すっかり流されることにしたらしい無抵抗な男のその唇から、時折漏れ出る声が耳に心地いい。控え目ながらもちゃんと返される反応と、肌に触れる唇の感触だけで、私もきもち良くなってくる。 「ねぇ、ゼル……私相手でも、ちゃんときもちいいんだ?」 はだけた胸や腹部にキスを落とすための体勢を取れば、私の胸やお腹は当然彼のそのあたりに当たるわけで。 いつのまにかすっかり体積を増しているそれを服越しに握れば、ゼルガディスの身体がびくりと強張る。ここは素直で、とても可愛い。 「もっと……きもちよくしたい。……いいよね」 ……返事など、最初っから期待してはいない。どんな顔をしているのかなんて知りたくもない。もしその顔に快感以外の感情を見たら、きっと泣いてしまうから。それでも、たとえ不承不承でも……拒まれないだけで充分だ。 そう思った私は視線を上げることなく、そのままズボンの前を開き、ゆっくりと彼のものを取り出した。ぶるんと揺れて眼前に現れたペニスは、他の箇所同様にとても人間の身体とは思えない独特の肌質のまま硬く立ち上がっている。 けれども一抹の不安を持っていた身としては、他の部分よりも幾段か暗いその色味はともかく、明らかな鉱物質でなかったことにほっとする。もっとも、たとえ目の前に現れたそれが人間のそれと違っていたところで、今更止められる気もしないのだけれど。 「おい、本当にまずいって」 ねえ、ここまできて、それだけ言うってことがどれだけ酷くてずるい事か、理解している? そんな声など、誰が聞いてやるものか。立ち上がっているペニスを直に握って、こうしてゆるゆると手を動かせば、耐えきれずあっさり吐息を漏らすくせに。 触れるだけでは我慢が出来なくなって、結局すぐにペニスにも口づけを開始する。すっかり性感帯として出来上がってしまった私の唇は、這わせて吸い付き舐め上げるだけで快感を伝えてくる。 いやらしい匂いに、脳がやられる。我を失う事、それすら快感だ。もう、どうにもならない。 そして、唇だけでなく、口咥内にもよりゼルガディスを感じたくなってついにペニスを招き入れるために口を開けた。 ──その瞬間、今度こそ本気の力で起き上がったゼルガディスにより、私の身体はあっさりと剥がされてしまったのだけれども。 「お前……随分と、好き勝手やってくれたな」 「……まだ咥えてもないし、入れてもないんですけど」 「……おい……お前なぁ……いや、いいから、まずはこっちを向け。下ばかり見るな」 「やだ」 「どうして」 「…………」 はぁ、と再度の溜息と共に顔に手がかけられ、ぐいと上を向かされる。 嫌だ。ゼルの顔が、よく見えてしまう。嫌だ。ゼルに、見られてしまう。 「……お前なぁ。そんな泣きそうな顔で、何やってるんだ」 心底呆れたという声に、涙腺が崩壊する間もなく、ぐるりと視界が揺れる。一体何が、なんて思う間もなく、突如訪れた浮遊感になす術も無く身を掬われて、次に感じたのは背中への衝撃だった。安物の簡素なベッドでは、全ての衝撃を吸収することは出来なかったのだ。 天井の染みや蜘蛛の巣を認識する間もなく、覆い被さったゼルにより唇を塞がれる。 噛みつくような荒い口づけは、始まりと同じように突然離れる。けれど、息を整える間もなく、今度は首筋に歯が立てられた。二度三度と当てられる歯は、痛くはない。むしろ擽ったいようなその甘噛みと交互に、柔らかい舌が首を、肩を、ゆっくりと這っていく。 「……ちょ、ちょっと、ゼル?」 「人がせっかく"そう"見ないように我慢してるってのに、随分と勝手な振舞いをしてくれる……。言っとくが、今更"無かったこと"になんてさせないからな」 言葉と共に、大きな手で胸を鷲掴まれる。 首への刺激だけで脳天から蕩けそうなのに、そんな風にぎゅむぎゅむと揉まれると、興奮しすぎてどうにかなってしまいそうだ。けれども、その手はいつまでも乳房全体を刺激するだけだった。上から下から、右から左から、揉んだりさすったり……これでは、全然足りない。 もっと、欲しいところがあるのに。触って欲しいと立ち上がっている先端に、ゼルガディスだって気が付いている筈なのに。 「ん? どうした。そんなに切なそうな声を出して」 脳を痺れさせる声は、私の言いたいことなどお見通しだと意地悪く笑っている。調子にのるなと言ってやりたいけど、生憎そんな場合じゃなかった。声に促されるまま、全てを吐露してしまう。 「……おあずけ、しんどいよぅ。ねぇ、ねぇ、いっぱい……触って」 振り切れた意識で哀願すると、ゼルガディスの頭が首筋から離れた。そしてそのまま、小さな音を立てて私の唇にキスが落とされる。 「いい子だ。お望み通りたんときもちよくしてやるから、覚悟しとくれよ」 答える間もなく、今度は片方の乳首へキスされた。それだけでも震える程にきもちがよかったのに、その唇はすさず私の突起を含み、舌先で転がし始める。 ただでさえ恥ずかしくてきもちいいのに、甘く焦らされた分だけ増した快感は、容赦なく私を翻弄する。 なのに。甘い息を漏らす私に気をよくゼルガディスは、更にもう片方の先端まで摘まんでしまった。器用に動く指は、強弱を付けながら先端を弄ぶ。 先ほどまでのもどかしい刺激とは打って変わっての的確さで、敏感な先端を指と口で扱かれた私は、甲高い声を上げるのがやっとだった。 (2014.03.29) [ 戻 / 一覧 / 次 ] top / 分岐 / 拍手 |