■ こっちの蜜は甘いぞ

本日の缶詰:いきなり母乳が溢れ出した!……と思ったら、オーラだった。


 ぴちゃぴちゃといやらしい音に耳を塞ぎたくなるのだけれど、意地悪なこの男はそれを許してはくれない。
 見下ろす私の胸元に縋りつく体勢のゲンスルーは、むしろより見せつける様に赤い舌をちらつかせては、先端をしごき、溢れ出る蜜を舐め取っていく。その度にむず痒いような、それでいて脳髄が痺れるような甘い刺激が走り──初めて感じる快楽は暴力的な勢いで、その激しさを前にしてしまえば抵抗する気など早々に奪われる。
 結果、私はただ翻弄され歓喜の声を上げるしかなくなっていた。おまけに上半身裸はさすがに締まらないと思って羽織ったシャツが曲者だ。こうして前を開けて胸を晒している姿勢ではましに見せるどころか、却っていやらしさに拍車をかけているだけという気がする。


「そんなに好いのか。また出が良くなったぞ」

 くすりと笑って、先端に絡まっていた舌が離される。けれど、ゲンスルーは呼吸を直す暇すらも与えてくれる気がないようだった。すぐにべろりと舐め上げられてしまえばベッドに座った姿勢のまま、身体がぴんと弓なりになる。その隙に、もう片方の乳首にまで指が伸びて来てくちゅくちゅといやらしい音をたてて嬲ってくるのだから本当に嫌になる。
「気付いているか? 始めより、ずっと甘くなっているぞ」
 にやにやと愉しそうな声と共に開きっぱなしの唇に指が触れた。そして水というには粘度のある液体で濡れたその指が、口内を犯そうと侵入してくる。私はしぶしぶその指に舌を這わせ……って、うわ、本当に甘くい。なんだか変な感じだ。
「な? まったく。そんなに喜ばれちゃ、俺だって答えてやらないとなぁ」
 とん、と肩に重みを感じた。何がと思う間もなく、次の瞬間に背中に感じたのはシーツで見えたのは天井だった。つまり、体面座位のような体勢からあっさり押し倒されてしまったわけだ。
「え、この体勢……」
 溢れる蜜を舐め取るには座っている方が都合が良いって言ったのは、どの口だったか。
「舐めるだけなら、な」
 意味深な発言の意味を尋ねるまでもなく、思い知らされた。
「え……あ、だめ! やぁん、ひゃぁぁぁん!」
 先ほどまでとは異なり、今度は乳輪ごと口に含まれ強く吸いあげられる。段違いの刺激を前に私の口から飛び出たのは喘ぎ声なんて可愛いものではなく、ただの悲鳴だった。しかしそんな私を気にする素振りも見せることなく、相変わらず器用な舌は動きをを止めるどころか益々勢いを強める。執拗に乳首を捏ね潰し、扱き、私を更に更に啼かせるために。



「ハッ、片方ずつでは追い付かないようだな」
 左の乳房から顔を上げたゲンスルーの表情は、いやらしくて、愉快そうで。その顔を見てびくりと震えた身体のわけは、嫌な予感がしたからだ。決して、期待したからではない。決して。決して。

「まったく、相変わらずでかい乳しやがって」
 乱暴に鷲掴まれても、この口から漏れる声はとびりきり甘いままで嫌になる。
「さてと。それじゃ、いただくかな」
 乳房を寄せられて先端も寄せられて──次はどうされるのかと期待に震える胸に、ゆっくりとゲンスルーの顔が降って来る。吐息を感じてぎゅっと目を閉じた瞬間、ぬらりと温かな感触と共に吸い上げられた。両方の乳首をまとめて舐めて、吸われて、吸い上げられて……ああだめだ。恐いくらいに気持ち良すぎる。
 ああ、ああ、ああ……なんてうっとりとしていたら今度はキリリと歯が立てられる。
「いっ……やぁっん!」
 びくりと硬直した後ゆっくりとほぐれる身体に、何が起こったかなんて明らか過ぎる程明らかだ。もちろん、こちらを見つめる男の目も細められている。
「ほう、感度の良さも相変わらずか。だが、ちぃと勢いよく出し過ぎだな……飲んでやる俺の身にもなってみろって」
 なんという言い分ですかそれは! ぐったりと眠ってしまいたいほどの身体でそれでも何とか口だけは動かす。
「ちょ……っと、飲んでなんて、言ってな……い……」
「へいへい。虚勢だけは立派だが……なぁなまえ、素直になったら、もっと好くしてやるぞ?」
 ──『もっと』? 今ので充分凄かったのに、『もっと』だって?
 そんな、そんなこと言われたら……もう……本当に。本当にこの男のこういうところが狡いと思う。


  ***


「……やぁ……やぁっ! もう、飲んじゃやだぁぁぁ」

 必死で手を伸ばして男の頭を離そうと力を込めるものの、鍛え上げられた身体はびくともしない。
 ごくりごくりとその喉が鳴る度、快感は増していくのだけれど、でも、でも、さすがにこれは……。なんて絶頂の余韻に浸る間もなくゲンスルーが早々と体勢を整えるのを感じる。このまま舌を遣われればまた今までの繰り返しになってしまう。
「あぅ……あの、あの、胸だけじゃなくて!」
 あ?と顔を上げたゲンスルーと視線が絡む。
 その目がぱちりと瞬いて……この上なく愉快だとでも言うように彼の目が細められた。くつくつと漏らされた声は私の羞恥を煽る為のものだったけれど、生憎そんなことはもう気にしていられない。
「ああ、すまないな。あんまり垂れ流すから満足しているとばかり思っていたが」
 乳房を押し上げていた手が離れ、わき腹を撫でながらショートパンツへと降りていく。
 器用に動く指が遠慮も無く布の中へと滑り込み、その下の更に薄い布をずらすと乱暴に押し入ってきた。そう、多分乱暴といっていいような扱いなんだけれど、待ち焦がれた刺激を身体は歓喜に震えて受け入れてしまう。

「ハッ 慣らすまでもなく指三本余裕か。だが、これでも足りないって顔だな」

 淫乱が、と囁く声すら熱を上げる愛撫に変わる。自分がどんな表情をしているかなんて言われなくてもわかっている。
 すっかり慣れた調子で補助するように腰を浮かせば、やけに協力的だなと笑われた。けれど、そんなことどうでもいいくらいにもう欲しくて欲しくて堪らないのだ。


「そんなに欲しいか?」

 意地悪く尋ねる声にだって、可愛らしく頷いてあげる。なのに、なのに。
「……え、え? ……なんでよぉ」
「欲しいかとは聞いたが、くれてやるとは言った覚えがないがなぁ」
 馬乗りになったゲンスルーが照準を合わせたのは、ひくつく秘所を通り越したずっと上、先ほどまで嫌と言う程に弄られていた胸だった。
 直接的な刺激を受ていない今、丸く盛り上がり緩やかに崩壊を待つ水滴があるのみという乳頭を硬いペニスで擦り上げられて、蜜はまたじゅんと溢れ出す。嫌でも見えてしまういやらしい光景に、ごくりと喉が鳴る。


 敏感なところをペニスでこねくり回され、気持ちよくなっている自分。
 そんな被虐的な光景に興奮した身体は、自分でも呆れる程に素直になっていた。
 乳頭から、秘所から、吸われてもいないのに蜜を溢れさせ、垂れ流して男が欲しいと媚びる姿を辱める声は甘い。
「見えるか、 お前の乳でびしょびしょだ」
 舐めてみるか?とチラつかされた甘い匂いのキャンディーは、けれども舌を伸ばす直前に目の前から消えてしまった。
「おいおい、そんな残念そうな顔をするなよ」
 ちゃんと食わせてやるからという声と共に、視界をひょいと掠めるものあった。それが投げ捨てられたスキンの包装だと気が付く前に、膣内を震わせた圧迫感と快感が私の脳をも掻き回す。頭に響く嬌声すら、すんなりと意識に繋がらなくて他人の声のように思える。

「おっと……いくら欲しかったからって、これくらいでイくなよ」

 早くも朦朧としていたのだが「せっかくだからな、こっちも吸ってやるよ」聞こえた声に慌てて靄を取り払う。そんなことをされたら堪ったもんじゃない。けれど、必死でいやいやと手を伸ばしたところで一旦その気になってしまったゲンスルーに敵うわけなどないわけで。


 ぐちょぐちょの膣内をこれ以上ないくらいに掻き混ぜられれば、放っておいても胸の先端からは蜜が溢れ出す。だというのに、その乳首を咥えたゲンスルーは遠慮や加減なんて言葉は知らないように、これでも足りていないと責め立てる。
 先ほど以上のねちっこさで擦り絞り吸い上げる傍らで、躊躇なく的確に私の中を擦って抉って犯しぬいていくのだ。ああもう、なんでこんなに私の弱いところばっかり熟知しているのよ。なんて喘ぎに乗せて愚痴った時だけ、束の間胸から口が離れた。

「全身でねだっておいてよく言うな。男を持ち上げるのも淫乱の常套手段ってわけか」
「……なっ、ちょっと!」

 淫乱呼ばわりに加えて常套手段だなんて言い方、さすがに聞き捨てならない。
「こら、締めるな。ただの冗談だ。そんなに怒るなって」
 誤魔化すように優しく肉芽も擦られて、ふわぁんと甘い声が出てしまう。
 もう、なんでもいいやとまた意識が混濁していく。まったく、何をしても感じるのはお前だろうがと呟かれた言葉の意味を考える余裕は今度は無かった。
「……ああそうだ。おいなまえ、ほら、舌出せ。ベロだベロ」
 朦朧とする中でもなんとか、呼ばれたことはわかる。とりあえず口を開いて舌を見せれば、胸をちらりと舐めたゲンスルーがそのまま口を合わせてきた。
 柔らかな唇が合わさり、ぬるりとした舌が絡みついてくる。そして、その舌から伝わるのは……先ほど以上に甘過ぎるようでそれだけではない、不思議と身体に馴染む味の蜜だった。
 まあ、自分のオーラだから馴染むのは当たり前か。熟れた頭でそんなことを思いながら、その蜜を味わいお互いの唾液と混ぜ合わすように舌を遣う。
 やけに甘い口づけに合わせるリズムで、ゲンスルーのペニスは私の中を掻き回していた。上も下も甘く優しく犯されて、おかしいくらいに気持ちがいい。重なる胸板が私から溢れた蜜でぬるぬるしているのが恥ずかしくていやらしい。漂う甘い匂いが、頭をぼうっと痺れさせる。口と胸と下腹部の快感が、五感を独占する。
 全身の感覚がそれらに集約されて、ぱちんと弾けた時……絶頂を迎えた私は、見事に意識まで飛ばしてしまった。


 まあ、当然のことながら、一度出したくらいでは収まらないゲンスルーにその後もねちっこく責められ啼かされ続ける羽目になったのだけれど。


「も、もう、だめ! これ以上は、死んじゃう!!」
「んなこと言って、実はまだまだ余裕だろ」
「なっ、さっきからもうギリギリだって散々言ってるでしょうが!」
「言ってるくせに、実際はずっと元気に喘いでるじゃねぇか。だいたい、本気でやばけりゃ精孔閉じりゃいいだろうが」
「……あ。……う、いや。ま、まあそうなんだけど……」
「あー……思いつかなかったわけか」
「や、そうじゃなくって! いきなり母乳って衝撃と、出る刺激って凄いんだから! 精孔閉じるとか閉じないとかそういう集中力全部持ってかれるんだって!」
「はいはい。そういうことにしてやるよ」


 呆れるゲンスルーに災難が降りかかるのは、また別のおはなし。



(2014.07.06)