9.大切な仲間
アナグラに帰ってくると、殉死者の知らせを聞いたコウタが心配して待っていた。
「レイン! 任務で人が死んだって……」
「うん。エリックって人なんだけど、オウガテイルに、やられて……」
私が相当酷い顔をしていたのか、コウタが押し黙って俯く。コウタも、いずれは経験ことになるのだろうか……。
「でも」
「え?」
「レインが無事で良かった……」
「コウタ……」
「折角仲良くなれたばっかりなのに、直ぐにいなくなったりしたら……。とにかく! レインが無事で本当に良かった!」
「……ありがとう、コウタ」
ふと、私達の目の前をフードを被った人物が通り過ぎた。
「っ、ソーマ!」
思わず呼び止めると、ソーマはゆっくりと振り返り感情の欠落したような瞳で私を見た。
「あのっ、今日のこと!」
「言っただろう、俺と関わるな」
「えっ……」
「弱いやつから先に死ぬ……だから関わるな」
そのまま背を向けて振り返ることなく歩いて行ってしまう。
「なんだよアイツ、冷たい奴だな!」
コウタが憤慨してソーマの背中を睨みつけている。
「いいよコウタ……」
「それならいいけど……あまりふさぎこまないようにな」
コウタと別れて、自室に向かう。
エレベーターに乗ろうとして立ち止まった。
(……関わるなってことは、認めてもらえないってことかな)
弱い奴は関わるなと言われて落ち込まないわけがない。帰る時に「お前のせいじゃない」って言われて心が軽くなったのに……。
そのままボタンを押さずに立ち止まっているど、後ろからリンドウさんに声をかけられた。
「そっか、エリックがな……」
リンドウさんの部屋に招かれてソファーに座る。一通りエリックのことと、ソーマのことを説明した。
リンドウさんは配給ビールを飲みながら懐かしむようにエリックのことを話し始めた。
フォーゲルヴァイデ財閥の御曹司だったエリックは、病弱な妹のため自ら志願して東欧地区からここ、極東支部へと転属したという。
リンドウさんいわく、エリックはとても妹想いで優しかったらしい。
「あいつなりに、神機使いとしての責任を感じていた」
「責任……」
「ソーマのことは、まあ……いつもあんな感じなんだが、あまり悪く思わないでくれ。あいつは誰かが死ぬことを誰よりも恐れている……」
「誰かが、死ぬことを……。リンドウさん」
「ん?」
「私も一緒なんです。誰かが、大切な仲間が、人が、死ぬのを見たくない」
「そうか。お前も亡くしてるんだな」
「はい……」
「だからお前は強いんだな」
「え」
隣に座ったリンドウさんが私の肩を抱くように叩く。
「誰かを亡くした奴は強い。それは絶対周りを同じ目に合わせたくないと思うからだ。お前は新人の中でも飛び抜けて強いし、センスがある。だからこれからも生き抜いて、守れ」
「リンドウさん……。っ、はいっ!」
リンドウといるととても居心地が良くて、温かい気持ちになる。この人の人となりがなせる技なのだろうか?
「話しを聞いていただいてありがとうございます。もう、戻りますね……あれ、ドアの隙間が空いてる」
「お? ああ、気にするな。良くやるんだ」
少し開いたドアに近づいて外を出ようとすると、廊下の壁際に寄りかかって立つフードが見えた。
「え……、ソーマ……?」
「…………」
ソーマと目が合いお互いにそらす。
リンドウさんとの話し、聞こえていたのだろうか。
「ソーマ、言いたいことがあるなら言え」
振り返るとリンドウさんがビールを片手に楽しそうにこっちを見ている。
「チッ……」
(し、舌打ちした!?)
「……かった」
「え……?」
「さっきは、悪かった」
少しぶっきらぼうに喋るその仕草に思わず耳を疑う。今、ソーマ何て言いました?
「え、え? ソーマ、今、なんて……」
「二度は言わない。じゃあな」
素っ気なく自分の部屋に入っていくソーマに私は固まってしまう。
「……リンドウさん、あれって任務の時のことを謝ってくれているのでしょうか……?」
「ああ、あとあれはさっき突き放すようなことを言った件もあるな」
リンドウさんの言葉に私は我に帰り、ソーマの言葉を思い出す。
「……ちなみに、こういった謝罪は今まで?」
「なかったな」
「と、いうことは……」
「お前を認めたってことだ」
「ーー!!」
急いでリンドウさんの部屋から飛び出て、ソーマの部屋に突撃する。
「なっ!?」
驚くソーマに私は思い切り駆け寄り、もとい抱きついた。
「ソーマ!!」
「!? お、おまっ、なにす!?」
「嬉しいから抱きしめてるのー!!」
「はあ!?」
「いやー、青春だねぇ」
ソーマに抱きついたままの私を見ながら、リンドウさんがドアに寄りかかってにやにや笑っている。ソーマが「こいつをどうにかしろ!」って声が聞こえるけど、私にはどうでもいい。
なによりもソーマに認めてもらえたのが嬉しいのだ。
「ありがとう、そしてこれからよろしくね、ソーマ!!」
リンドウさんにサクヤさんにコウタに、ソーマ。
第一部隊のみんなが私にとってとても大切な存在になっていく。
''私を認めてくれる''
たったそれだけで私は幸せだった。
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