10.彼の存在意義



 最近第一部隊に入ってきた新人、医療開発室長の姪だかなんだか知らないが、その新型の奴はやたらと俺に絡んでくるようになった。
 
 俺がアイツと始めて任務についた後のアレが切っ掛けなのは分かる。

『私も一緒なんです。誰かが、大切な仲間が、人が、死ぬのを見たくない』

 その言葉を聞いてしまったから、今までどんなに突き放しても謝ったことがないのに、自然と謝罪の言葉が口に出てきてしまった。

 あの声と久しぶりに感じた人の温もりが離れない。……アイツもこのまま戦っていれば、いずれエリックのようにアラガミに喰われるのだろうか。

 じとりと汗が浮かび、頭を振るう。


「おーしっ、アナグラ帰ってきたー! コンゴウを楽々と倒した俺ら、最強じゃね!?」

「最強かどうかはまあどうかと思うけど、コウタのバックアップが上手かったからやりやすかったよ!」

 アナグラにアイツとコウタが戻ってきた。長椅子に座っていた俺はフードを深く引っ張り、腕を組む。

「やっぱりやっぱり!? レインが敵を引きつけて俺が援護する! 良いコンビだよな、きっと!」

「たまにコウタ見てるとハラハラするけどね……」

「? なんか言った?」

「ううん、なんでも。あ、ソーマ!」

 アイツが目ざとく俺に気がついてかけて寄ってくる気配がする。小さく舌打ちして無視をした。

「ちょっとソーマさん、舌打ちが聞こえましたけど?」

「…………」

「そ〜ま〜〜!」

「レイン諦めろよー。この後の榊博士の講義間に合わなくなるぜ?」

「むう、そうだけどさー」

 拗ねたような声が頭上から降ってくる。無視を決め込んでいると、諦めたのか溜息が聞こえた。

「ソーマ、今度絶対一緒にごはん食べようね! じゃ!」


 二人が立ち去ったのを確認してゆっくりと顔を上げる。

「……めんどくせえ」

 アイツと馴れ合う気は無い。
 だが……エリックが死んで鬱々とした気持ちが、少し晴れたような気がした。

「おいソーマ、そろそろ時間だ」

「ああ」

 俺を呼びに来たリンドウが何故か楽しそうにニヤニヤ笑っている。

「……なんだ」

「いんや? 新入りと仲良くなれているようで、なによりだ」

「ちっ、行くぞ」

「へいへい」


 一匹でも多くのアラガミを殺す。
 それが俺が生かされてる意味であり、俺の存在意義。

 相棒の神機を手にして、俺はアラガミを喰らい続ける。

 ……もう誰も、死なせたりしない。


 脳裏にアイツの顔がかすめた。

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