14.君との距離
無事にコンゴウを倒した私達がアナグラに帰還すると、サクヤさんが何かに気づいたようにエントランスの長椅子の方へ向かった。
「先に帰ってたのね、お疲れ様」
視線の先には、長椅子に深く座り両腕を背もたれに投げ出したリンドウさんがいた。
「ああ、何とか早めに切り上げられた。そっちはどうだった?」
「ご命令に従っていつも通りだ」
気怠げに煙草を吸うリンドウさんに、ソーマが答え、サクヤさんが頷く。
「そうね、任務は滞りないし、人も欠けてないわ」
「俺達四人の華麗な連携プレイを見せたかったよ!」
「お前そんなに役立ってたか?」
「なっ!?」
「もー、ソーマ。コウタもちゃんと活躍したよ? 援護してくれてたじゃん」
「お前が危なっかしかったからだろ」
「う……」
コウタと私はあえなくソーマに玉砕して、サクヤさんは楽しそうに笑っている。
「そうか、ならこっちも少しデートの回数を増やしてもよさそうだな」
「まず俺に女の子を紹介するのが先じゃないッすかね?」
「……ふっ、お前の手には負えないと思うぞ?」
リンドウさんが煙草を噴かすと、エントランスにアナウンスが響いた。
『業務連絡、本日第七部隊がウロヴォロスのコアの剥離に成功。技術部員は第五開発室に集合してください』
このアナウンスに周りの神機使い達がざわめき、何人かの技術部員がエントランスから出て行く。
ライナスも向かっているのだろうか。
「ウロヴォロス……って何? 強いの?」
「ターミナルを調べりゃ出てくる。たまには自分で調べろ」
それにしても、このタイミングの良さはなんなのだろうか。サクヤさんのソーマは何かしら知ってそうな顔をしているけれど、聞ける雰囲気でもない。
「そうね……私達四人じゃ、まだ無理じゃないかな……」
「マジでええええ!? このメンツでも?」
「一人二人は死人が出るだろ」
素っ気なくそう言うソーマが私を見ている。まるで、いずれ私も死人の一人になるだろうというようだ。
さっきの任務を思い出すと、倒すだけじゃなく、生き残ることも考えて戦わないといけないのかもしれない。
「まあアレだ、生き延びてればそのうち倒せるだろ……今はよけいなことは考えず、とにかく死なないことだけ考えろ」
「その台詞、いい加減聞き飽きたぜ」
リンドウさんの言葉にソーマが眉を寄せて言う。が、気怠げだったリンドウさんの瞳に力が入った。
「ああ、特にお前には何度でも言っとくわ。ほっとくと一人で死にに行っちまうような奴にはな」
「チッ……黙れ……」
ソーマがそっぽを向き、それを見たリンドウさんが、また気怠げな表情に戻って息をついた。
「へいへい。さ、俺は次のデートに備えて精のつくものでもくってくるかな」
長椅子から立ち上がって出て行くリンドウさんの後ろ姿を見送って、振り返る。
サクヤさんとソーマは複雑な表情をしていて、コウタだけは頭にクエスチョンマークをつけて首を捻っている。
ある意味考え込み過ぎなくていいのかもしれない……。
「…………」
「あ、ソーマ」
ソーマが黙って行きそうになるのを見つけ、思わず呼び止めた。
「一緒にご飯行かない? さっきのお礼もしたいし、話しでもーー」
「お前と話すことはない」
「え……」
フードの下からでもわかるソーマの冷たい瞳が、私を拒絶しているのが見える。
「そ、そんなこと言わずにっ」
「触るな!」
思わず手を伸ばすと、力強い手で払われ、凄く苛立ったような瞳と目が合う。
「俺に馴れ馴れしくするな!」
「あっ……」
もう一度手を伸ばしても指が空を切るだけで、ソーマはエントランスから立ち去ってしまった。
一部始終を見ていたサクヤさんとコウタが心配そうに私に声をかけてくれるけれど、ソーマに拒絶されたのが思った以上にショックで言葉がでない。
さっき任務が終わった時、ありがとうと私が言って少しだけ照れたようなソーマとあまりに違いすぎる。
なにか、気に障ったのだろうか。
考えられるのは先に帰っていたリンドウさんと話していた時、わかりやすくソーマは苛立っていた。
ちょっとだけ近づけたと思ったのに、なんだかソーマが遠く感じてしまう。
遠すぎるソーマとの距離に、私は小さく溜息を吐いた
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