19.伸ばした手



 リンドウさんと共に旧市街地を索敵する。開けた広場に出ると、こちらに背を向けたシユウが食事をしていた。
 隣で神機を構えるリンドウさんと頷きあい、私が先に動く。

「はあっ!」

 食事に夢中で私に気づいていないシユウの隙をつき捕食する。
 振り返ったシユウが視界に私を捉えた。人のような形をしながら背には翼状の腕を持ち、人間と同じ両腕は余裕の構えで腕組みをしている。

「レイン、上半身を狙えよ! 脚と翼は硬いから、なっ!」
 
 後ろから声がしたと思えば私を飛び越えるように跳躍したリンドウさんが、シユウに頭から神機を振り下ろす。

「了解です!」

 リンドウさんの攻撃を受けて体勢を崩したシユウ目掛けて地を蹴り、上半身を斬り裂いていく。
 シユウが唸るように体を捻ろうとする姿に、私が一旦離れようとすると後方から声が投げかけられた。

「どいてください!」

 翼のような腕が振り回される瞬間、強烈な弾丸がシユウの頭を襲う。

「援護するぜ!」

 続けざまの銃弾の雨がシユウの動きを止まらせる。
 振り返るとアリサとグレイのアサルトが火を噴いた。

「アリサ、グレイ!」

「立ち止まらないでください!」

 攻撃の手を緩めずに冷静に言い放つアリサに頷いて、神機を握りしめる。

 次の瞬間強烈な悪寒が身体中を駆け巡り、キーンという耳鳴りがした。
 ハッとアリサの上を見上げると、もう一体違うシユウがアリサ目掛けて滑空してくるのが見える。

「! アリサっ、危ない!!」

「!?」

 急いで駆け出し、アリサに手を伸ばす。
 タックルするようにアリサを突き飛ばし、二人一緒に地面に転がる。

「ぐっ!」

 右肩に痛みが走った。
 飛んできたシユウの翼が当たったのだろう、痛みを無視してアリサを抱き起こすと、大きく見開いた彼女の瞳と目が合う。

「なんで、私なんてーー」
「レイン! アリサ! 大丈夫か!?」

 もう一体をグレイと相手していたリンドウさんが叫び、アリサが押し黙る。

「大丈夫です! 私達はコイツを相手します!!」

「任せたぜ!!」

「レイン、無理すんなよな!」

 リンドウさんとグレイに声を聞きながら神機をブラストに替える。

「アリサ、行くよ!」

「っ、わかりました」

 意図を汲んだアリサがブレードに切り替えて、構えているシユウに突っ込む。

「たあっ!」

 アリサの隙間を縫うように私が銃を放って、アリサが頭を叩く。時折肩が痛むが、そんなのは無視して銃弾を浴びせる。
 するとシユウが翼のような腕を合わせるようにして衝撃波を撃ってきた。

「やばっ」

 なんとか避けると、今度は私の方にシユウが飛んでくる。

「ととっ!!」

 ショートブレードに切り替えながら紙一重で躱すと、アリサはアサルトに切り替え絶え間無く銃弾をぶっ放す。

「さーて、さっきのお返しだよ!!」

 銃弾にひるんだシユウの腹を神機で喰らう。二回目のバーストモードに血が沸騰したように身体が熱くなって力が湧いてきた。

「はあああああっ!!」

 渾身の力で神機をシユウの頭から腹にかけて振り落とす。赤い鮮血を噴いてシユウはゆっくりと地に伏した。

「グレイ、トドメを刺せ!!」

「りょーかいっ!!」

 少し離れた所ではもう一体のシユウの断末魔の叫びが聞こえてきた。

「……さっきは、足を引っ張ってすみませんでした」

 顔を上げると、珍しく殊勝な顔をしたアリサが声をかけてくれた。

「ううん、アリサこそ怪我はなかった?」

 アリサに手を伸ばそうとすると、するりと躱されて背を向かれてしまう。

「……大丈夫です」

 伸ばした手を下ろすと、リンドウさんとグレイが歩み寄ってくる。どうした?と言うような顔に苦笑しながら首を振ると、グレイに「帰るか」と背を叩かれた。

「っ……」

 一瞬肩の痛みに小さく呻くと、気がついたグレイが眉を寄せた。

「おいーー」

「さて、アリサとグレイの極東での初陣も終わったし、帰ろっか!!」

 グレイの声を遮ってリンドウさんの背中を押すように急かす。アリサにも手を伸ばそうとしてまた躱された。
 これは仲良くなるにはまだまだ掛かりそう……。

 先に歩いて行ってしまうアリサを追って、私達はヘリへと歩いた。


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