27.それぞれの思い



「本日の任務を当該地域のアラガミの一掃に変更する」

 ツバキさんの言葉に第一部隊のメンバーの顔は全員、驚愕した。

「なお検査中だったアリサは快方に向かいつつあるが……入院のため暫く前線を離れることになるだろう」

 最後にと、ツバキさんは前置きのように一呼吸置き辛い現実を私達に突きつけた。

「本日をもって神機、及びその適合者であるリンドウは消息不明、除隊として扱われることになった……以上だ」

 今日の任務はリンドウさんの捜索のはずだった。
 コウタは勇んで人一倍早く見つけると息巻いて、サクヤさんは小さな希望を探すように決意を込めた顔をしていたのに、その表情が驚きと失望の色に変わった。

「そんな……まだ腕輪も神機も見つかってないんですよ!?」

「上層部の決定だ。それに腕輪のビーコン、生体信号ともに消失したことが確認された……未確認アラガミの活動が活性化している状況で、生きているかも分からない人間を捜す余裕はない」

 信じられないと声を上げるサクヤさんに、ツバキさんは感情の分からない顔で淡々と事実だけを伝え、私達に背を向けて去っていく。

 私が呆然としている中、フードを深く被って表情が見えないソーマが遠ざかっていった。

「! ソーマっ……」

 思わずパーカーを掴んだ私の手をソーマは振り払った。

「言っただろ、俺に近づくなって……。これ以上深く関わると今度はお前が死ぬぞ」

 決して私を見ようとしないのか横顔は髪に隠れて表情が分からない。
 そのままエントランスから出て行くソーマの後ろ姿を見て、デジャヴを感じる。
 ああ、これじゃ前と同じだよ……。

「ねえ!! こんなに早く捜索が打ち切られるなんておかしいわ! 襲われた敵も場所も明らかなのに……何で」

 サクヤさんの悲鳴のような訴えに我に帰った私が振り返ると、サクヤさんがグレイに掴みかかり項垂れていた。

「……いや……ごめん……君に当たっても仕方ないわね……」

「いや……気持ちは分かります」

 言葉を選びながら言うグレイに、今にも泣きそうな表情でサクヤさんがありがとうと無理して笑顔を見せる。

「後輩に無理をさせるなんて、先輩失格ね……。っ、少し頭を冷やしてくる……任務には間に合うようにするから」

 ふらりと歩いて行くサクヤさんの弱った姿を見て、コウタが辛そうな表情を浮かべた。

「サクヤさん、だいぶ参っているみたいだね。俺、グレイも皆んなもよくやったと思ってるよ……。でもアリサのやつ急にどうしちゃったってんだよ」

 するといきなりコウタがバンッと、グレイの背中を叩いた。

「同じ新型なんだしさ、グレイがそばにいてやったほうがいいんじゃないかな」

「まさか、コウタに言われるとは」

「なんだよそれー。ま、がんばれ。俺はサクヤさんの様子を見に行ってくるよ!!」

 コウタらしく元気に走っていく姿をグレイと見送り、顔を見合わせる。

「コウタらしいな」

「うん、本当にね」

「レインはそろそろソーマを一発ぶん殴ってもいいと思うぜ」

「……やっぱりそう思う?」

「ああ。アイツはどうも独りで背負いこむみたいだしな、コウタから俺が来る前のことも聞いた。……ま、本当は俺が一発殴りたい所だがそれは俺の役目じゃないんでな。得意の突撃、行ってこいよ」

「うん、いろいろ言ってやりたいこともあるし、行ってくる!」

 グレイの笑みを背に受けて、急いでソーマが出て行った方向へ走る。

「……あの突撃が羨ましいな」

 一人エントランスに残ったグレイは小さくそう笑って、病室の方へと足を進めた。



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