29.記憶
真っ暗な世界にぽつりと立ち竦んだ私は出口を探してよろよろと歩き出す。
……パパ……ママ……どこ?
かくれんぼは私の負けでいいから……早く見つけて……。
ここは怖くて、冷たくて、優しくない世界だから。
パパとママがいない世界なんて……いたくない。
光はどこ……?
この前に感じた、温かな光はーー。
瞬間、暗闇の奥から鈍く輝く銀色の光が私を包んだ。眩しい光に手で視界を覆うと、少女の叫び声が耳朶を打つ。
『いやああああああああっ!!』
視界は暗闇ではなく、どこかの大きな施設の広場の中央で少女は叫びを上げていた。
床にぺたんと座り込んだ少女の髪は白銀で、真紅の目からは大粒の涙が溢れている。
『いやあああ! 私の、私のせいなの、私なんかが生まれたから、……っ、ああああああああああっ!!!』
少女が何かに覆いかぶさっている。
よく見るとそれは、血の海の中で倒れている男性で、彼女と同じ髪色は赤く血に染まっていた。
『レイン!! レイン!!!」
「えっ……グレイ……?」
ずっと彼女を探していたのか、駆けつけたグレイは男性に縋り付くレインを見つけて呆然と立ち止まった。
『ぁ……ぐ、れい……グレイ』
俯いた少女の顔がゆっくり上がる。
グレイがそっと近寄って少女の側にしゃなみ、顔にかかった前髪を払う。真っ赤に目を腫らしたレインの顔がこちらからでもはっきりと見えた。
「……これは……」
グレイとレインの過去……?
私が呆然としていると、グレイが苦しそうな顔をして倒れた男性とレイン見つめた。
『わた、わたしの、私のせいなの……私が……生まれてきたからーーが、しん、で……』
ノイズが入ったように男への呼び名が聞こえない。
糸が切れたようにパタリとレインが倒れてグレイに寄りかかる。完全に瞳を閉じた彼女は気を失っていた。
『……それでも……』
胸の中で意識のないレインを抱きしめてグレイが呟く
『それでも、おまえが生きていてよかったって……俺は思ってるんだよ……レイン……』
グレイから目が反らせない。
今にも泣き出しそうな彼の瞳が辛そうに細まる。
レインを抱きしめるグレイを見つめていると、今度は後ろから銀色の光が私を包み込んだーー。
『アリサっ、アリサどうした!?』
ああこの記憶は……あの時の……。
いやっ、見たくないっ!!
『アリサ、止めーー』
私が、私がリンドウさんをーー!!
「『いやあああああああっ! やめてええええええええ!!』」
見たくないのに目を反らすことができない。耳を塞ごうとした時、記憶の中のグレイが”私”に手を伸ばしてきてーー。
「アリサっ!!」
「!!?」
次の瞬間、記憶から目が覚めた私の眼前にはグレイの青色の瞳が、私を見つめていた。
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