34.晴れた心
ツバキさんに召集されエントランスに集まったソーマ以外の第一部隊の面々に、今日のアラガミ討伐の概要が語られた。
単独任務に出ているソーマと、実戦復帰出来ていないアリサ以外のメンバーでヴァジュラの討伐任務が決定された。
ヴァジュラの討伐にツバキさんの隣で俯いていたアリサが何か言いたそうにしている。それを知ってか知らずか、ツバキさんは出撃する俺達の顔を見回した。
「説明は以上だ、何か質問はあるか?」
すると、俺がアリサにしていた訓練を知っているコウタが、ツバキさんを説得しようと息急き切って手を挙げた。
「あの……俺の代わりにアリサを今回の任務に出してあげてほしいなー、なんて。ほら、彼女その……頑張ってると思うんだ!」
「お前もか……他の者はどうだ?」
「私もアリサはもう大丈夫だと思います。グレイの訓練についてきているんです、足手まといにはなりませんよ」
レインの言葉にツバキさんが一つ頷いて次にサクヤさんを見る。サクヤさんは何か考えるように俯き、決心したように顔を上げた。
「賛成です」
「だが、今回のターゲットは……”アレ”と同型の個体だぞ……大丈夫か?」
最後の忠告にと言葉を選びながらアリサを見ると、不安と緊張で両手を握りしめた彼女は恐怖を振り払うように頭を振る。
「行きます……行かせてください!」
「……よろしい、無理はするなよ」
「はい。ありがとうございます」
「大丈夫ですよ、グレイがいるし。ね、グレイ!」
「なんで俺!?」
「俺はココで皆んなの帰りをまってるから……無事に帰ってこいよ!!」
コウタのエールに俺たちは拳を合わせる。
「生きて帰ってこい」
ツバキさんとコウタに見送られ、俺たちは贖罪の街へと向かった。
* * *
贖罪の街での戦いは順調にヴァジュラの命を削っていった。
「そこっ!!」
「はあああああっ!!」
サクヤさんのレーザーがヴァジュラを足止めし、レインのショートブレードが肉をえぐる。
「グレイ、今だ!」
「分かってる!!」
レインの攻撃に怯んだ隙を狙って跳躍し、俺はヴァジュラの顔面を剣で薙ぎ払った。
「ガアアアアアアアアアアアッ!!!」
片目を潰されながら地面に倒れ伏すヴァジュラ。
倒したーー。そう皆が息をついた瞬間、ゆらりと巨体が起き上がり体力を回復しようと逃げた。
「逃がしてたまるかよっ、追うぞ!」
「一つに固まってると狙われるわ! 一旦散開して! みんな……慎重にね」
サクヤさんの命令に頷き、それぞれ分かれてヴァジュラを追う。
アリサが心配になって振り返ると、緊張しながらも大きく俺に頷いた。
「見つけたら直ぐに呼べよ……必ず、助けるから」
「はい」
決意を込めて神機を握りしめるアリサに笑みが零れる。
「神機を強く握りしめすぎだ……アリサなら大丈夫」
アリサの肩を軽く叩いて踵を返す。
俺は教会の裏手へと向かった。
慎重に、ゆっくりとあたりを見渡しながらヴァジュラを探す。あんなに巨大な体躯なら直ぐに見つかる筈、そう思っていたがそう簡単には見つからない。
「……どこで捕食してるんだ……」
一旦立ち止まって息をつく。
緊張していたのか、神機を持つ手が汗ばんでいた。
「さて、もう少し奥に…………アリサ?」
ふと、巡らせた視線の先に、銃を持って地面に片膝をついたアリサが見える。
アリサの大きな瞳がさらに見開かれ、俺を見つめた。
「アリサ、まさかーー」
またトラウマを思い出してたのかと駆け寄ろうと瞬間、背筋が凍りつくような感覚におちいった。
そう、それはまさに捕食者に狙われた弱い生き物……。後ろに、アイツがいる。
アリサと視線が合う。
逃げろーー。そう唇が動くとアリサがふるふると頭を振り力強い目をして銃を構えた。
「避けてええええええっ!!!」
アリサの叫びに体が瞬時に動き大きく前転する。勢いよく地面を転がると、俺に襲いかかってきたヴァジュラが倒れていた。
ついにアリサがトラウマに打ち勝った!
「アリサ、グレイ!!」
「やったのね!」
別々に散っていたレインとサクヤさんが駆けつけてくる。へたり込んだアリサにサクヤさんが優しく抱きしめた。
「アリサ……良かった」
「サクヤさん……」
抱きしめ合う二人を見ながら体を起こすと、アリサがこちらに視線を向けてきた。
「グレイ、貴方のおかげです……ありがとう……」
「いや、アリサの心が勝ったんだよ」
涙目のアリサに笑いかけて頭を撫でる。
空を見上げれば彼女の心を表したかのように晴天だった。
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