53.手がかり
鎮魂の廃寺に降り立ち武器を構える。
サクヤさん、アリサ、コウタが私を見て頷いた。
「……行こう」
慎重にあたりを見回しながら歩を進める。
出撃前に今回のターゲットから、リンドウさんの腕輪らしき反応が発見された。
きっとあの時の氷のアラガミだと言ったツバキさんは、仇などという雑念は混ぜるなと言い、慎重に行動するようにと言い含められた。
それでもリンドウさんの仇であるアラガミの討伐任務に、サクヤさんやアリサは浮き足立っているようにみえる。
「ツバキさんの言うとおり、先走ったり、無理に突っ込まないよう慎重に行こう」
そう二人に言えば、少し顔を強張らせながらも緊張をほぐすように深呼吸をして頷く。
「ええ……分かっているわ。ごめんなさいね、貴女に気を使わせてしまって」
「メンバーが突っ走らないようにするのも、リーダーの役割だってツバキさんに教わったので」
「……そうね。最近の貴女、リーダーらしくなったわ」
「そう、ですか?」
まだ実感のない私にサクヤさんは優しく微笑み、アリサとコウタも同意するように大きく頷いている。
「レイン、貴女にこの命、預けるわ。なんでも指示を出して」
「私にも遠慮なく指示してください」
「俺も! 今までいろんな奴と戦ったきたけど、レインの指示が一番動きやすいぜ」
「みんな……ありがとう。なら、私とアリサが前線で戦うから、サクヤさんとコウタは後衛で援護をお願いします。サクヤさんは回復弾を、コウタはトラップ系がんがん使って。アリサはリンクバーストのサポート優先で、なるべくバースト時間が途切れないようにお願い」
「了解」
全員で頷きあい前を見据えと、こちらの結束を見透かすような、異様な顔のアラガミが現る。
氷を纏ったそれを私は睨みつけるように見つめて、地を蹴った。
「はっ!」
サクヤさんとコウタの銃弾がアラガミに降り注ぎ、その間をぬうように私とアリサが駆ける。
まずは脚を狙って剣を横に薙ぎ、アラガミの注意をこちらに向けさせる。面妖な瞳と目が合い、アラガミの前脚が降り上がった。
「っ!」
ステップで回避し、攻撃が止んだ瞬間顔面めがけてショートブレードで斬りつける。
怯んでいるアラガミの後方でアリサが捕食しているのを視界にとらえ、後ろに跳び退ると、アリサの銃口がこちらに向き、引き金がひかれた。
「はあああっ!!」
リンクバーストの効果で力が溢れ、跳び上がる。真上からアラガミの脳天に剣を突き刺し、抜いた直後に胴を薙ぎ払う。
咆哮を上げるアラガミの横腹をクイック捕食して後ろに下がると、アラガミの周りが氷に覆われた。
剣から銃に切り替えて、アリサに受け渡し弾を撃ち込む。アリサが剣でアラガミに攻撃している隙に数回捕食を成功させ、コウタとサクヤさんをリンクバーストさせた。
「攻撃の手を緩めずに、行くよ!!」
全員がバースト状態でアラガミに総攻撃をする。跳び退こうとするアラガミに、サクヤさんのレーザーが進路を妨害してコウタが設置していたトラップに誘い込まれる。
トラップに拘束されたアラガミに渾身の一撃を叩き込むと、頭部が結合崩壊しアラガミが活性化した。
「コウタ!!」
「OK!」
私の合図にコウタがスタングレネードを破裂させ、アラガミの視界を鈍らせる。
周りを見渡すアラガミをアリサと捕食し、目を覚ます前に胴体を集中攻撃して結合崩壊させれば、アラガミが唸り声を上げて突進してきた。
「くっ」
装甲で防いで後ろに下がる。
跳びはねるようにあたりを突進して行くアラガミに剣を切り替え、ブラストを炸裂させる。
トゲトゲした肩の付近を狙って撃ち込み、こちらに降ってくる氷塊を避けながら攻撃を続けていくと、肩が結合崩壊した。
「みんな、ラストスパート!」
咆哮を上げようとするアラガミが体勢を崩す。銃から剣に替え、起き上がろうとするアラガミめがけて走る。
三人の銃撃によりその場で動けないアラガミが最後の唸り声を上げた瞬間、ショートブレードが氷の体躯を斬り裂く。あたりが冷気に包まれる中、アラガミが倒れ伏した。
「…………」
沈黙したアラガミを見つめ、近寄る。
皆が見守る中、捕食モードでリンドウさんの腕輪を探すが、何も見つけられなかった。
「あった?」
コウタにそう訊かれ無言で首を振る。
「ないのね」
「最近の調査隊、いい加減すぎますよ!」
「まあまあ、到着前に逃げちゃったかもしれないし」
やっと何か手がかりが見つかるかと思っていたメンバーに落胆の影が落ちる。
また振り出しに戻ったと思っていると、アラガミの声が聞こえた。
「これって!」
「新手!?」
コウタとアリサが神機を構える。
サクヤさんと顔を合わせて頷きあい、全員でゆっくりと声がした方に向かう。
警戒しながら足を進ませると、月を背後に悠々とした佇まいでこちらを見据えるアラガミがいた。
禍々しい気配に息をのむ。
ヴァジュラやさっきのアラガミとは比べられないほどのオーラに、身の毛がよだつ。
「…………」
黒きアラガミはこちらに興味すらないのか、私達を一瞥しただけでどこかへと去って行った。
「あいつを倒さないとダメってことね……待ってなさいよ」
サクヤさんが奮い立つように呟く。
きっとリンドウさんの手がかりはあのアラガミが持っているはず。
次に会った時は必ず倒すと心の中で誓い、私は黒いアラガミが消えた場所を見つめ続けた。
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