4.上官
「ん……。あれ、ここは……」
眠りの淵から目覚めると、見覚えのない部屋のベッドで横になっていた。
「……そっか、極東支部のゴッドイーターになったんだっけ。ってことは、ここが私の部屋……?」
目を擦りながら部屋を見渡す。
飾り気のない、必要最低限しかない調度品と積まれた段ボールを見て起き上がる。
「なんか久々に熟睡できたかも……」
一年前から安眠することができずに毎回悪夢にうなされていたが、今日はそんなことなく、久しぶりの休息に大分体も楽になっている。
何はともあれ、持ってきた物を片付けなければならない。
気合いを入れるように腕まくりをして、私は片付けに取り掛かった。
* * *
片付けを終えエントランスに顔を出すと、オペレーターの人が声をかけてきた。名前はヒバリさんと言って、任務の発注や戦闘時のサポートを手伝ってくれる仕事をしているという。
「あの、レインさん。さっそく任務なんですが大丈夫ですか?」
「メディカルチェックでぐっすりと眠れたので体調は万全です! が、あのー、一人じゃないですよね?」
「まさか! 初任務なんですから、ちゃんと上官が付きますよ。レインさんは第一部隊所属なので、リーダーのリンドウさんです」
「リンドウさん?」
「はい。もうしばらくしたら来ると思いますので、そちらで待っていてください」
近くの長椅子を勧められて、言われた通りに腰掛ける。
第一部隊のリーダーってどんな人だろうか、怖くないといいな……。なんて考えていると、黒髪の男性がエントランスに入ってきた。
「リンドウさん、支部長が見かけたら顔を見せに来いと言っていましたよ?」
「オーケー。見かけなかったことにしといてくれ」
(なにそれ、結構適当?)
思わず笑ってしまうと、リンドウさんが私に気づいて手を上げる。つられて立ちあがると、上から下までじっと見られた。
「よう、新入り。俺は雨宮リンドウ、形式上お前の上官にあたる。……が、まあめんどくさい話は省略する。とりあえず、とっとと背中を預けられるぐらいに育ってくれ、な?」
「はい、頑張っちゃいます!」
「おーおー、素直でいいねー」
「あの、雨宮ってことはツバキ教官は」
「ああ、俺の姉上だ。お前もライナス室長の姪っ子なんだろ? 身内がフェンリルにいるとまあ色々心配事も増えるが……頑張れや」
ぽんっと頭を撫で撫でされる。
なんだかお兄さんみたいな感じで、凄く新鮮に感じる。リンドウさん、絶対いい人だ。
頭を撫でられるのもいいなぁと考えていると、エントランスに黒髪ボブの女性が私を見つけて近づいてきた。
「あ、もしかして新しい子?」
「あー、今厳しい規律を叩き込んでるんだからあっち行ってなさい、サクヤ君」
「了解です、上官殿」
リンドウさんととても仲が良いのか、楽しそうに笑っている。
同じ第一部隊なのだろうか。
サクヤさんは私に手を振って、去っていった。
「とまあ、そういうワケで……だ。さっそくレイン、お前には実戦に出てもらうが、今回の緒戦の任務は俺が同行する。……っと、時間だ。そろそろ出発するぞ」
「はい!」
リンドウさんに従って出撃ゲートに向かう。
実戦で初めてアラガミと戦う。
訓練とは違うこの昂揚感に恐怖はなく、絶対に生き抜いてやるという感情が胸をしめていた。
私の戦いが今、始まる。
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