小さなたからもの



「ソーマ、誕生日おめでとう!!」

 パーンという派手な音が俺の耳に響く。
 常人より耳の良い俺は思わず眉を寄せた。

「……うるせぇ」

 そう呟くと、目の前の女はふっふっふと気色悪い笑みを浮かべている。

「どう、驚いた? 驚いた?」

「朝っぱらから元気だな……」

 自室のドアを叩く音で早朝から起こされ、何事かと開けるとクラッカーの破裂音で完全に目が覚めた。

「そりゃソーマの誕生日だもん、思いっきし派手にいかないとダメかと思って」

「誰も頼んでねぇ」

「またまたー、照れなくてもいいんだよ?」

「照れてねぇ」

 素直じゃないんだからーとのたまう馬鹿を放っておいてドアを閉めようとする。と、がしりとノブを掴んでレインが何かを放った。

「はい、誕生日プレゼント!」

「……は?」

 思わず放られたモノを掴んでしげしげと見る。それはシルバーのネクタイピンだった。
 包装も無しに現物のままのそれを放った当人は、反応を気にしてか不安そうな顔で俺を見てくる。

 さっきまでのテンションはなんなんだ……。

「…………どう?」

 ひょこっとドアから顔を少し出した姿に小さく笑うと、ネクタイピンをパーカーのポッケに入れた。

 すぐに付け替えなかった俺を見て、レインがしゅんとしたように見える。うさぎか。

「サンキュ」

 そうひとこと言っただけでレインの目が嬉しそうに輝く。

「良かった喜んでくれて。じゃあ私はアリサに早朝訓練誘われてるから、またね!」

 バタバタと嵐のように去って行く後ろ姿を見送って、ポケットからネクタイピンを取り出す。


 今まで『誕生日プレゼント』なんて代物は貰ったことがなかった。自分の生まれた日など祝う必要性も感じられなかったのに……。

 初めまして貰ったプレゼントを見つめて、今つけているものと取り替える。
 アイツの雪のような髪と同じ色のピンを指で触ると、ガラにもなく口元が緩んだ。


【ちいさなたからもの】

- 14 -

*前次#
表紙
ALICE+