第1話 運命共同体と下忍選抜試験

翌日、由良は佐保姫を抱えて演習場に向かっていた。
(……試験…)
突然割り当てられたチームで行われる試験。
由良の不安は昨日より大きくなっていた。
チームで行われる試験というからには
4人で一緒に行われるということ。
由良は人付き合いが下手であることを自覚していた上に、
他の3人のことをよく知らない。
その為、試験と聞いて不安が増してしまっていたのだ。
とはいえ、他の3人ともクラスが同じだったので、
3人とも由良のことは知っている。
だが、由良は同じクラスのアカデミー生の顔も
よく覚えていなかったので、
昨日の自己紹介で初めて3人の顔と名前が一致したのだ。
演習場に着くと、アスマが待っていた。
「お、由良。早いな。」
「………おはようございます。」
「おう、まだ時間まで20分もあるぞ。」
そう言ってアスマは由良に歩み寄った。
由良としては遅れないようにする為に早めに来ただけなのだが、
少々早すぎたらしい。
アスマに声をかけられても由良は
何と答えたらいいのかわからず俯いてしまった。
そんな由良の様子にアスマは苦笑いして
由良の頭をポンポンと撫でた。

そうして二人で待っていると間もなく他の3人もやってきた。
「よし、全員揃ったな。じゃ、ルールを説明するぞ。」
そう言ってアスマは試験の説明を始めた。
アスマが持つ3つの鈴を制限時間内に奪うこと。
制限時間内に奪えなかったらアカデミーに逆戻り。
それがルールだ。試験としては実に簡単なもの。
だからこそ合格基準が分かりにくい。
(…相手は上忍1人。標的の鈴は3つとも腰。)
アカデミーを卒業したばかりの自分には1人とはいえ、
上忍相手に正面から向かっていくのは無謀だろう。
由良はそう判断した。
(……どうしよう…)
「制限時間正午まで。この丸太の上に置いた目覚ましが鳴ったら終了だ。」
「それじゃ、始め!!」
そう言ってアスマが手を振り上げた瞬間、
4人は一瞬にして姿を消した。隠れたのだ。
(上忍相手に真っ向勝負は不利と踏んだか…。)
4人の様子にアスマの口角が上がっていく。
「さて、どう出てくるかな…?」



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