第1話 運命共同体と下忍選抜試験

「つまり、シカマルは別々に鈴を取りに行くんじゃなくて
4人で取りに行くべきだっていうんだね?」
「あぁ。」
お菓子を食べながらチョウジは親友の言葉を聞いていた。
「でも鈴が3つしかない以上、残り1人はどうするのよ。」
「それは引っ掛けだ。」
シカマルは溜息をついていのの疑問に答えた。
「ルールは3つの鈴を制限時間内に奪うことだろ。
鈴が奪えなかった奴がアカデミー行きだとは言ってねぇだろ。」
「奪えなかったらアカデミー行きだって先生言ってたじゃない!」
「制限時間内に、だろ?
制限時間内に協力して鈴を3つ共奪っちまえば、俺たちの勝ち。
バラバラに動けば負け。アカデミー行きだ。
つまりこれは全員合格か全員不合格かの試験なんだよ。」
「じゃあ、由良にも声かけないとダメだね。」
「あぁ、めんどくせーけどな。
俺たちは運命共同体だ。
由良だけ外すわけにはいかねぇだろ。」
「でも…。」
シカマルの言い分は分かるが、いのはどこか不満げだ。
そんないのの様子にシカマルは溜息をついた。
「あのな、由良の何が気に入らねぇのか、
知らねぇがこれが任務だったら
嫌な奴と組まされることだってあるかもしれねぇだろ。」
「そうだけど…。」
「いの、僕たちは同じチームなんだよ。
せっかく同じチームになったんだから、
由良とも仲良くやろうよ。
由良だけ仲間はずれなんて変だよ。」
シカマルの話に納得しかねているいのを
諭すようにチョウジはいのを説得した。
なぜいのが由良との協力を頷こうとしないのか、
シカマルもチョウジも分かっている。
伊達に幼馴染をしていない。
いのは白黒はっきりした性格だ。
それに対して由良はあまり感情を表情に出さない。
いのは何を考えているか読み取りにくい由良を苦手としていたのだ。
その上誰に対しても無視していた由良の態度を良く思っていなかったのだ。
とはいえ実際のところ、由良は自分と
仲良くしようとしてくれている子にまで
無視をしていたつもりはない。
声をかけられても何と答えようか考えている内に
相手が無視されたと勘違いをして去ってしまうのだ。
チョウジは由良と仲良かった訳ではないが、
過去に自分が仲間はずれにされたとき、
すごく悲しい思いをしたのだ。
だから由良だけ除け者にするのは嫌だった。
ただそれだけの気持ちでいのを説得した。
いのもそんなチョウジの気持ちを察したのか、
溜息をつき「分かった」と頷いた。
何よりシカマルの『運命共同体』という言葉がいのの心に突き刺さったのだ。
「はぁ、やっとかよ。」
ようやく納得したいのの様子に溜息をついたシカマルだったが、
どことなく安心したように口角を上げた。
「じゃ、由良を捜しに行くか。」と、立ち上がったところで、
「…私が何?」と後ろから声がかかった。
「うわっ!!」
3人は突然かけられた声に驚いた。
そんな3人に由良は目を瞬かせている。
驚かせるつもりはなかったのだが、
何かを真剣に話し合っている様子に声をかけるのを躊躇ったのだ。
「お前、いつからいた?」
びっくりした心臓を落ち着かせてシカマルは尋ねた。
「…ついさっき。」
「なら、ちょうど良い。」
話を聞いてくれ、シカマルはそう言って由良に視線で座るように指示した。




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