第1話 運命共同体と下忍選抜試験

「あいつら、どこ行ったんだ?」
アスマは自分が受け持つ予定の子供たちを捜していた。
隠れた4人が仕掛けてくるのをしばらく待っていたのだが、
何も仕掛けてくる様子がないことに痺れを切らし、
こちらから仕掛けてみることにしたのだ。
気配は4つとも森の中にあった。
このまま襲いに行っても良いが、
相手はアカデミーを卒業したばかりの子供たち。
のんびり歩いて4人がいる方に向かうことにしたのだ。
と、そのとき。
「!!!」
「肉弾戦車!!!」
気配を感じて飛びのくと
そこに大きな岩のようなものが勢いをつけて転がってきた。
チョウジの攻撃だ。
不意をついた攻撃だが、上忍相手には良い攻撃だ。
「ようやくか。」アスマの口角が上がっていく。
飛びのいたそこへクナイが何本も飛んできた。
アスマが慌てて避けると、今度は避けた先から手裏剣が飛んできた。
「うわっ!?」
上忍のアスマも不意を突かれた連続攻撃さすがに慌てている。
アスマは距離を取ろうとすると、突然身体が動かなくなった。
「…影真似の術、成功。」
木陰から出てきたシカマルがニヒルに笑みを浮かべる。
アスマもそんなシカマルの様子に、なるほどと頷いた。
「俺に不意を突いてチョウジが攻撃を仕掛け、
仕掛けた先にいのがクナイを投げたのか。」
自分が捕まって身体が動かないにも関わらず、
アスマは余裕の笑みを浮かべる。
「すると、あの手裏剣は由良か。」
その声にそれぞれ隠れていた由良といのが姿を現した。
「で、最後にシカマルが影真似の術で俺を捕獲する。
なかなか良い作戦だったな。
だが、俺を捕まえても鈴を奪わけりゃ、意味がないぞ。」
アスマは自分を囲んでいる子供たちにどうするつもりだと問いかけた。
そんなアスマにいのはニッと笑った。
「せーんせ!これ、なーんだ?」
笑みを浮かべるいのの手には鈴が1つチリンと音を立てていた。
そして、シカマルとチョウジも同じように
鈴を得意げにアスマに見せていた。
そんな子供たちの笑みにアスマが驚き慌てて自分の腰を見ると、
そこにつけられていた糸が切られ確かにあるはずの鈴が姿を消していた。
自分たちの力では上忍のアスマに叶うはずがない。
だが、確かに自分たちの手でアスマを慌て吹かせている。
そんな光景がシカマルにはなんだか可笑しく見えた。
「不意を突くだけなら、クナイだけで充分だ。
だから手裏剣は鈴から目を逸らせるための囮なんだよ。」
取られた鈴に目を白黒させているアスマに得意げにシカマルは解説した。
「飛んできた手裏剣に気を取られている間に
由良がチャクラで鈴を引きちぎって俺たちに投げたんだよ。」
シカマルの解説にアスマは心底驚いた。
アカデミーを卒業したばかりの子供に
チャクラを使って対象を捕獲することができるとは思わなかったからだ。
しかもその術がどういうものなのか、アスマには分からなかったのだ。
「……なるほどな。だが、鈴は3つしかない。
このままだとお前らの内1人はアカデミー行きだ。
それはどうするつもりだ?」
自分でも意地の悪い質問だと思う。
だが、それを理解していないとこの試験では合格にはならないのだ。
するとシカマルが溜息をついて言い放った。
「…じゃ、全員不合格で。」



………………




「は?」


アスマは一瞬何を言われたのか、わからなかった。
そんなアスマにシカマルはめんどくさそうに答えた。
「誰か1人が不合格に『ならないといけない』なら
全員不合格で良いって言ったんすよ。」
「せんせー、この作戦、私たち話し合ってやるって決めたの。」
「みんなで合格しなきゃ、意味ないもんね。」
「………。」
得意満面の笑みを浮かべて言い放つ3人とは違い、
由良は黙ったままだが同じ意見なのだろう。
シカマルの術はいつの間にか解けていた。
「………くくっ…はははははは!」
アスマの笑い声に子供たちは目を白黒させた。
何だ、どうしたとお互いに顔を見合わせる。
そして顔を上げたアスマが笑顔で言った。
「お前ら、全員合格だ。」







こうして、由良は晴れて下忍になった。
これから先、長い付き合いとなるだろう仲間と共に。


第一話 運命共同体と下忍選抜試験   Fin.

2016.7.7




|
novel top
ALICE+