泡沫の夢

「…っ、はぁ!」


荒い呼吸が
時折漏れる嬌声が
汗ばんだ肌が

いちいち私を興奮させる


「雑渡、さんっ…」


彼女がこちらに来て何回目かの行為

この家で女を抱く日が来るとは思わなかった

夢心地とはこの事だろう

事実、この関係が泡沫のような
不安定なものだ


「ねぇっ、後ろからは…嫌だったのでは?」


獣のように四つん這いになった彼女を後ろから突き上げるこの体位は
彼女がこちらに来てからするようになったものだ

時折彼女のイイ所をこするように突き上げると背中を反らし
甲高い声をあげるその様は実に扇情的で

私の嗜虐心をくすぐる


「余裕がね、ないんだ」

「雑渡さん…?」


彼女がこちらに来てもうすぐ二月が経とうとしている

彼女の待つこの家が
当たり前になろうとしている


当たり前ではない
これは異常で
非日常で

特異な存在である彼女は
ここにいてはいけない


夢に溺れすぎて
現実との違いが分からなくなりそうだった


「顔を見てると、とまらなくなりそうでね」

「…これ以上激しくは私も勘弁願いたいので
変わらず後ろからでお願いしたいですね」


溺れて
息が出来なくなってしまう

彼女の顔を直視したままなど

夢ではないか確かめたくて
ただ欲望に任せ
乱暴にし

彼女を確かめる羽目になるのではと思った

この体位は
私のせめてもの優しさだった
顔を見ながらなど、本当に壊してしまいそうだ



あぁ、この夢は何時まで続くのだろうか

溺れている事すら忘れる程甘美なこの夢を


私は何時まで見せて貰えるのだろうか