「…仕事が決まりました」
「やけに暗い顔ですね。働くのがそんなに嫌なら無理しなくて良いですよ」
私の言葉に喜八郎は労りの言葉を返した
いくら長らく労働から離れていたとは言えこの程度で嘆きはしない
「そんなに嫌な仕事なんですか」
「いや、まだ始まってもいないから…」
「じゃあなんで?」
話して良いものか、少し悩んだが打ち明ける事にした
「実はあまりにも偶然なんだけど、雑渡さんのいる会社だった」
「おやまぁ」
「正しくはタソガレドキの会社だ」
「ふーん」
あれ、思いの外反応が薄い
私たちがこうやって出会い、それ以前から他の忍術学園の生徒とはち合わせている喜八郎には想定内の出来事なのだろうか
「…喜八郎はまだ雑渡さんには?」
「会ってないです。その時が来れば自然と会えると思いまして」
雑渡さんと同じ事を言う
前世の繋がりが強ければまた再会出来るものなのだろうか
今までがそうだったからこそ
彼はそう結論付けたのだろう
(…ん?という事は…)
「喜八郎、私は?」
「なまえさんだけは例外です
貴方だけは僕から会いに行きました
偶然ではないです」
そう、ハッキリと答えた
「…そっか」
もしかしたら私たちも何時か自然と再会出来たのかもしれない
けれど偶然や、運命や、奇跡なんかに任せず
喜八郎が会いたいと思って行動してくれた事が
私は嬉しかった
「働きもしないなまえさんと東京で再会するなんて奇跡の範疇を越えてると思ったので」
「…私今ちょっと感動してたのに台無しにすんなよ…」
久々の社会復帰まであとちょっと