人間の成長は早いものだ
何百年と生き、昨日と百年前すら曖昧になる私に成長する晴明は実に新鮮だった

晴明は立派な青年に成長した
幼い頃は扱えなかった式神も使いこなせるようになり
楽器も私より上手に弾ける

もう私に楽器を弾くようせがまなくなったが
晴明の演奏に合わせ私が歌えば口には出さないものの晴明は嬉しそうだった

餓えて死に、病で死に、その時と比べればまるで天国です
なまえ様には感謝しておりますと述べる姿は立派な大人だった

ここは天界だからな、天国というのは間違いではないと返し
穏やかな空気を私も楽しんだ


私は珍しく誰かと関わる事によって浮かれていたのかもしれない
そうでなくては

あのような事
起こす訳がなかった



元より私の元に訪ねてくる者等いない
昼子の呼び出しは神通力であり、こちらの姿は見えない

だからこそ晴明の存在は天界には知られなかったのだ

穏やかな時間を終わらせてしまったのは
私の軽率な行動だった


「晴明、たまには一緒に外に行かないか?」

「なまえ様が?それは珍しい
明日は雪ですか?」

「雨なら降らせられるが私に雪は難しいな
私とて数百年に一度位は外に出たいさ」


共にいる間に
遅すぎる母性が私にも目覚めたのかもしれない

晴明が喜ぶかもしれない
その一心が私を行動させた


私は
晴明を人間界の祭りへと連れ出したのだ


人間の姿に化け
供物の簪を挿せば晴明と並んでも遜色ないだろう


「なまえ様、お美しゅうございます
隣を歩ける事を光栄に思いますよ」


晴明も言うようになったものだ
私に拾われた時は瀕死の子供だったというに

私が人間界に降りるのは晴明を拾って以来だった


京の都はどれほど変わっただろうか