晴明は祭り囃子に御輿、祭りの全てを楽しんでいるように見えた

人混みも騒音も嫌いな私が晴明の為に人間界にまで足をのばすとは

私を知る神が聞けば驚くだろう


「晴明、折角だ
今日だけは祭具が公開されている
見に行こう、御利益があるかもしれないぞ」

「貴方様の口から御利益など、随時面白い事を言いますね」


この行動が
全てを狂わせた



私は知らなかったのだ
三界での祭りに使われた祭具を作ったのが晴明の父などと

その祭具が今は人間界などと

愚かな事に
私は何も知らなかった


祀られていた祭具は神の目からしてもその力は明らかだった
これはいっそ人の手に渡しておくべきだとも思った
神に渡せばどうなるやら

それなら使い方の分からぬ人間に祀らせた方が信仰も集まるだろうと

隣に立つ晴明の瞳に
熱が宿った事など


私は気付きもしなかった



祭りを楽しみ、天界へと帰り

その日は久しぶりに二人で杯を交わした

供物の酒もこの位上等なものを使って欲しいものだと言えば晴明も笑っていた


あの小さかった子供が今や私より大きくなってしまった

晴明は何時までここにいるだろうか
飽きるまでは居て欲しいものだが彼ももう自分で道を決める時期だ

彼の選択を見守ろう
そう思っていた


酒盛りは深夜まで続いた
酒が尽き、久々の深酒に気分の良くなった私はそのまま畳の上に体を寝かせる

行儀が悪いと晴明に言われ
本当に大人になってしまったなと回らなくなった頭で考えていた


「いくら神とは言え、体に良くありませんよ」


そう私を抱え
床へ運ぶ晴明はもう子供ではない


「ほら、きちんと着替えて下さい」

「このままで良い…」

「何を言ってるんですか、折角の着物が皺になりますよ」


あぁ、そうだ
この着物を晴明は褒めてくれたのだっけ

降ろされた布団の上で
ぼんやりとしていると

背中に布団の感触が広がった


「何でしたら、私が脱がしましょうか?」

「…晴明?」


神話では珍しい話しではない

父と娘が
母と息子が



契るなど珍しい事ではない

けれど神と人間となれば

話しが違う


それは犯してはならぬ禁忌だ


「大丈夫です、不死身の人間などいないでしょう?」


自分は人間ではない

晴明はそう言いたそうだった