「私は、貴方を母と思った事はありません」

「私を母とは呼ばなかったものな」

「産みの親より育ての親とはよく言うらしいですが、私に母は二人も必要ないと思ったので」

「そうか」

「なまえ様には本当に感謝しております
貴方は私を救い、育て、教養まで与えてくれた
そうまでしてくれた方に愛情が芽生えるのは当然でしょう?」


その肝心の愛情表現の仕方を教えなかった私の失態なのだろうか

晴明には半分神の血が流れているようだがこれは許されるのか
子を宿さなければ大丈夫なのか

黒蠅に見られていたらどうしたものか


晴明に触れる等何年ぶりだろうか

私の唇から伝わった晴明の熱に
罪悪感を覚えた


拾ったばかりの頃は湯浴みを共にした事もあった

胸の傷は今も消えていないが
あの弱々しい子供の面影はない

晴明の手が着物の隙間から忍び込み
何百年ぶりかの行為に体が強ばった


「…なまえ、私に貴方に会う前の記憶はありませんが
貴方だけは確かに私を愛し、私も貴方を愛していました」


確かめるかのように
角度を変えては何度も唇を重ね
舌に吸い付き
随分と大きくなった手で私の胸を柔らかく包む

さて、私は教えた覚えはないが一体どこで覚えてきたのやら


「貴方は私に多くの事を教えてくれました
ですから、こちらの方も、是非手解きを」


そう言って手を止めた晴明は
女を泣かす男になってしまうなと

少しばかり彼の未来を案じた


愛してると繰り返し
私の上で腰を振る晴明を未だに可愛く思えてしまう私はおかしいのだろうか

これは母性なのか
この愛情は何と呼べば良いのだろう


私の中へその欲を吐き出し
晴明が幼い頃私がしてあげたように

彼は私の頭を撫でた


暖かかった
温もりを感じたのなど何年ぶりだろうか

そう、感傷に浸る暇はなかった


彼は再び私に口付け
熱が収まらないのだと訴え

たった一晩のうちに私たちは何度も愛し合った