元より私は一人だった

それなのに寂しさを感じるなど短期間で毒されたものだ

自ら他の神の元へ赴くなど何百年振りだろう
身支度を済ませ誰から話しを聞くか
昼子の耳にはまだ入れない方が良いだろうと思った時
一匹の蜘蛛が目に付いた


「…こんな所に、蜘蛛?」


黄色と黒の模様に赤い瞳の蜘蛛と
目があった


「ふふっ、晴明の行方を知りたいのかい?」

「…最近天界では覗きが流行ってるのか?
あいにく私は流行りに疎くてね」

「まぁそう言わないどくれよ
晴明は随分とつまらなさそうな日々を送っていたようだったから
教えてあげたのさ」


この蜘蛛、私と面識等あっただろうか
随分と勝手な事をしてくれる


「あんたの母親は生きてる、お前が知るべき真実を、そいつが知ってるってね!」

「その言葉に晴明は踊らされたのか
不愉快だな、つぶされる前に消えろ」

「嘘じゃないさ、あんたは他の神々と関わらないからあの女の事も知らないんだものねぇ」


どいつもこいつも
私が知らない話しばかりする


「もう良い、さっさと消えろ」

「見物だったねぇ…母親が生きてると聞いた時の晴明の顔ときたら!」


それだけ言い残し
蜘蛛は糸を手繰り消えた

殺してやろうと思ったのに


「…所詮、親子には勝てないか」


頬に伝う水の感触に
まだ枯れていなかったのかと
自分でも驚いた