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(あの子マジか…)


廊下に張り出されたテストの結果

通りがかったついでに二年生の結果を覗いた所
知ってる名前が一位だった


(全教科百点ってどういう事なの?
私も上位常連だけど百点なんてそうそうとれないだろ…)


転校早々にテストで全教科満点、これは同じ生徒たちはおろか教師すら彼を見る目が変わるだろう

こんな紙に書かれた一文だけで他人からの評価というのは大きく変わるものだ


「先輩」

「やぁ、君すごいね
都会と比べて田舎の勉強は簡単なの?
あぁでも花村君は違ったからそんな事は無いのか」


彼と同じ転校生の花村陽介とはえらい違いだ
ジュネスの存在により花村君は商店街の人に良く思われていない
都会から来た事を鼻にかけてと最初から彼を否定する人間もいる中
目の前にいる鳴上君はどうしたものか

すでに道行く何人かから羨望の眼差しを受けている


「たまたま、運が良かった
それより先輩、良かったらお昼一緒に食べませんか?」

「へ?い、良いけど…」


彼とは廊下ですれ違う度少し会話をする程度の仲であり
断る理由が見つからなかったし
誘われるがまま屋上で昼食をとる事にした


「先輩もトップだった」

「平均点90のトップと全教科満点のトップは同じじゃないよ」

「順位だけみたらお揃い」

「順位だけ、ね」


こんな小さな学校だからこそ私と彼は同じ順位だが学校の規模が違えば私と彼は同じではないだろう
少なくとも全教科百点ならば彼の順位は揺るがない

次のテストはもう少し頑張ろう


「そういえばこれ、俺が作ったんで
良かったら食べませんか?」

「良いの?じゃあちょっと…」


差し出されたのは彩りも綺麗な酢豚だった
何というか、料理のチョイスと量がいかにも男の子だ



(…何これ美味い)


ちょっとこの子なんなの…

成績はトップ
おまけに料理まで上手だと…

私も成績はトップ、料理もそこそこ上手いと思ってたけど
この子とは比べものにならない気がする
井の中の蛙とはこの事か…
現状に満足した覚えは無かったがもう少しどうにかしよう


「願わくば君みたいな子に次期生徒会長を任せたいね」

「どういう意味?」

「褒めてる」

「それなら嬉しい」


掴み所のない変わった子だと
改めて思った