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ここ最近一人の後輩に随分と好かれてる


昼休みは一緒にお弁当
放課後は図書室で勉強
夜に町で会えば会話と

何故かやたらと私に構う不思議な子だ

彼が転校してきて数ヶ月
彼の噂は私の耳にも届いていた

成績優秀
聞き上手であり高校生とは思えない寛容さ
故の異常な人望で男女問わず慕われており学年の壁を越えて噂が耳に入る程だ


「相変わらず上手だね
負けてられないなぁ」

「先輩も料理上手いと思うけど」


以前から会話くらいはする仲だったが
距離を縮めるきっかけになったのはこの昼休みのお弁当だった
一度誘われてオーケーしてからと言うもの彼は定期的に私を屋上へ連れ出す

元々生徒会の関係などで昼休み席を外したりする事も少なくなかった私は一緒に昼食をとる特定の人と言うのが居なかった
それが最近は彼がその特定の人物になりつつある


「先輩って彼氏いる?」

「また唐突な質問だね
いないよ、私が生徒会で忙しいの知ってるでしょ?
それに一応受験生だし…」


…かわりに体だけの関係はいるなんて口が裂けても言えない



「じゃあ俺と付き合って」

「…は?」


この子はまた唐突に何を言い出すのだろう
冗談かとも思ったが彼は真っ直ぐに私を見つめて
表情もかたく真剣そのものだ


「先輩の彼氏になりたい」

「鳴上君…話聞いてた?」


私は先ほど生徒会だけでなく受験生でもあり決して暇ではない
恋愛にうつつを云々なんて考えを持ち合わせてる訳ではないが彼氏を作らない理由としては十分だと思うし
断る理由だとしても十分だ



「うん。でも俺春になったら東京に戻らないといけないし
後悔したくないから
多分、俺先輩の負担にはならないと思う」


彼はまだ引き下がらない
後悔したくない、か
彼の真っ直ぐな気持ちと言葉に一瞬根負けしそうになったが
さすがに即座にオーケーする気にはなれない


「…少し、考えさせて」


何故か
あの寝癖と曲がったネクタイが特徴の刑事が

頭をよぎった