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「先輩、前の話考えてくれました?」


考えさせてくれと言ったにも関わらず
彼は今までと変わらぬそぶりで私を昼食に誘った
彼の度胸というか、勇気はスゴいと思う


「…あの、さぁ
私達知り合ってまだ二ヶ月とかじゃない?
お互いよく知らなくない?」


とりあえず無難だと思われる断り方を匂わせてみる


「あれだけ一緒にいてまだ足りない?」

「いや、まぁ確かにこの1ヶ月程やたらと付き合ってくれたね…」

「じゃあ十分だ」


十分…十分なのか?
何せ自分はそんな経験がないから比較のしようがない


「君の噂は三年生にまで届いてるよ?
バイト先でも評価高いみたいだし
私より良い子たくさんいない?
私君が思ってるより暇じゃないよ?」


そうだ、彼は同じクラスの里中さんや天城さんといる所をよく見る
天城さんは勿論の事、里中さんも可愛いしあの性格だ
きっと好意を抱かれる事も少なくないだろう

あと確かあいとも仲良くなかったっけ
彼女こそ外見は完璧じゃないか
少し我が儘だが彼の寛容さならそれも受け入れられそうだが


「大丈夫、俺もそこそこ忙しい」

「う、うん?」

「先輩と付き合いたい」


意外に根気強く押してくるな
見かけから草食系かと思ったが私の思い違いだったか


「…うーん、まぁ良いか
熱意に負けたよ、改めてよろしくね」


青春を謳歌しよう
そんな言葉を青臭い物とも思っていたが
あえてその青臭さに触れてみるのも一興なのかもしれない


「うん、よろしく」


にこやかに笑う
初めて見た彼の表情は

どことなく幸せそうだ


「これ、無駄にならなくて良かった」
「…酢豚?」
「先輩美味しそうに食べてたからもっかい作った」
「確かにフられたらちょっと出し辛いわな…」