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「足立さん!
良いところに!」

「え?なになに??」


風が気持ちいい放課後の鮫川河川敷
とても良いタイミングで足立さんが通りがかってくれた



「うわっ、あ…これ、地味に怖っ…と、と!」

「ちょっ、なまえちゃん!しがみつかないで!
前見えないから!」


普段とは比べものにならない程高くなった目線
私の下にいるのはフラつく足立さん


「ご、ごめんなさい!
えと、もう少し右、右です!」


不安定な状態でのこの目線の高さは予想以上に怖い
落ちないよう必死に足立さんの寝癖のついた頭を抱える

我ながらとんだお節介に彼を巻き込んでしまった

ボール遊びをしていた子供達が勢い余って木の上にボールをあげてしまったのだ
困ってる子供達を見てどう解決するべきか悩んでる所にタイミングよく足立さんが通りかかってしまい

こんな策を思いついた訳だが…

足立さんはひょっとして相当お人好しなのかもしれない

フラつきながらも
目標に確実に手が近付いていく


「っと、この辺?」

「そうです!あっ!とれます!
と、とれた!!やりましたよ足立さん!」


指先がボールに引っかかった事によりボールが落下した
事を成し遂げた喜びで思わずはしゃいでしまった


「だから!暴れないでって!」

「ひゃっ、やー!怖い!怖い!!」



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「次は飛ばしすぎちゃだめだよ」

「ありがとうお姉ちゃん!」


なんとか私も無事地に足を付ける事に成功し
子供達から感謝の言葉と羨望のまなざしを受ける事に成功した


「刑事さんにもお礼言おうね」


実際、一番頑張ったのは私ではなく足立さんだ
心なしか髪型が何時もより乱れてる気がする
おそらく、私が原因だ


「ありがとうおじさん!」

「お、おじさん?!僕はまだ二十代だよ?!」

「じゃーねー!」


お礼を言った所でやっと戻ってきたボールに我慢が出来なかったのか
あっと言う間に子供達は走って行ってしまった


「…聞いてませんね」

「ったく、最近のガキは…」


舌打ちをしながら頭をかいた足立さんの顔は
今まで見ない表情をしていた
…よっぽど疲れさせてしまったのかもしれない


「足立さん、本当に助かりました
私だけじゃあれ絶対取れなかったし…」

「あはは、僕は頼りない肩車をしただけだけどね」

「やっぱり…重かったです…?」

「そんな事はないよ!でもあれ純粋にバランスが取り辛いね」


うーん…フォローしてくれたけど…
軽い訳もないし…
もう少し痩せ…というか筋肉つけないと…


「肩車とか、十年ぶりくらいでしたけど結構怖いんですね
びっくりしました」

「ま、普通はしないからねぇ
僕もまさかこんな年になってするとは思わなかったし
…役得もあったけど」

「え、何か良い事ありました?」

「いや、なんでもないよ!
さて、市民の安全を守る為に僕は仕事に戻ろうかな!」

「がんばってくださいねー」


今度堂島さんにでもこっそり今日の事伝えておいてあげよう

ふらつきながらも私を持ち上げた足立さんはなんだかんだで大人のお兄さんで
きっとすごく格好良かったに違いない



(女子高生の生足に合法的にさわれるなんて役得以外の何者でもないよ…
あーでも柔らかかったなー…)