6/13

「足立さーん!」

「やぁ、どうしたの?
なんだか嬉しそうだね?」


小走りで僕の元へと駆け寄った少女の表情は笑顔だった


「見て下さい!夏服です!」

「あ、本当だー
良いねぇ夏っぽくて」


両手を広げ黒を基調とした制服から白を基調とした涼しげな制服へと変化したそれを僕に見せつける
アクセントの黄色が少女の笑顔もあってか向日葵を連想させた


「まぁ、私いつもガーディアン羽織ってるからそんな変わらないんですけどね
一応、夏服着るのも最後なんで」


そういうと頬を赤らめ少し照れた様子を見せる
その最後になる夏服をわざわざ僕に見せに来たのかと思うと不思議と体温の上昇を感じた



「女子高生ブランドもあと僅かだねぇ」


夏服に変わるという事は単純に夏が近付いたという事だ
卒業までに季節が移り変わるのはあと三回
きっとそれはこの少女にとってあっという間だろう


「…まるで女子高生じゃない私に意味がないみたいじゃありませんか?」

「そういう意味じゃないよ?!」

「ふふっ、冗談です」


確かに女子高生というのは一部には高級ブランド扱いされるだろう

でも僕はガキにはそんな興味はないし
出来ればこの子には早く大人になって欲しいと思っている


「進路とか決まってるの?」

「えぇ、進学予定です
稲羽から通える範囲で」

「それ結構大変じゃない?
稲羽以外の大学って結構遠いでしょ?」

「でもやってみない事には分からないし…
大学生活に慣れるまでは今まで通りに実家にいたいので」


新しい学生生活と一人暮らしを同時に始めるのは少し不安なのだろうか
無難に、確実に物事を進めようとするあたり彼女の性格が伺える

本当に今時珍しくこういう事に関しては真面目で慎重な子だ


「そっか
じゃあまだしばらくは此処にいるんだね」

「はい、ので女子高生じゃなくなっても仲良くしてください」

「だから僕はそういう趣味じゃないよ?」




「昔はねー女子大生がブランドだったんだよ」
「やっぱり足立さんブランド好き?」