8/1

「あら、花村君達お買い物?」

「違うっすよーバイトっす
で、こいつも手伝い」


今日はクマ君に指定された約束の日
ジュネスに足を運べば先客として花村君と転校生がいた


「そうなんだ
偶然ね、私もジュネスに用があるの」

「なんかあるんすか?」

「えぇ、クマ君と約束」

「は?クマ吉と?」


クマ吉、彼にはそんなあだ名もあったのか


「おー?ヨースケも来たクマ?」


ジュネス入り口で立ち話をしていた私たちの会話を止めたのは気の抜けるような間延びした声
犯人は私を今日ここに呼び出したクマ君だ


というか、あれは暑くないのだろうか


「来たも何も俺はバイトだっつーの
てかお前生徒会長と何約束してるんだよ」

「セートカイチョー?」

「学校で一番えらい人だ」

「ちょっ、誤解招かないでよ!」


第一一番偉いのは校長だし
さらに言うなら会長とかの方がさらに偉い

私はただの生徒代表でそんな大したものではない


「センセイより偉いクマか?!
いやー人は見かけによらないクマねー!」


ほら勘違いしている

そもそも偉いとかそんなもの学校を出てしまえば関係がない

先輩と後輩とは言え学校の外では私たちは同等だと思ってる


「いや、言う程偉くないよ…
ところで言われた通り来たけどなんだったの?」

「じゃじゃーん!プレゼントクマ!」

「え、プレゼントって?!」

「ふっふー眼鏡欲しかったクマね?
だからクマ頑張っちゃいました!」


クマ君の片手にはシンプルでありながら薄紫色のフレームがお洒落な眼鏡が握られていた


「わーすごーい、可愛いー!」

「お前昨日サボったのはそれか!」

「なんの事クマー?クマはホームランバーより女の子が大事クマー」

「それのとばっちりを食らったのは俺なんだよ!」


何だか喧嘩を始めた花村君とクマ君を横目に
私は手渡された眼鏡をかける

伊達とは言えレンズ越しの世界はそれだけで新鮮だ


「ねぇねぇ、似合う?
初眼鏡!」

「よく似合ってると思う」


そう転校生君に褒めて貰い
私は純粋に嬉しかった

これで受験勉強にもより身が入るものだ

気合いを入れていこう