1LDKBの話し

「はぁー…今日も疲れたな…あいつらも来てへんし今日はさっさと寝よう…」

教師の仕事は勿論授業だけではない
放課後にも仕事はあり、それをこなしてから帰ってくると結構な時間にはなる
幸い今日は何故か高確率で我が家に居座る二人がどちらもいないし
適当に飯を済ませてさっさと寝てしまおう、明日も早いのだ

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ガチャッ

「あーもーっ疲れたぁ〜〜〜〜お外寒い〜〜〜〜っ!!!」

好きでやってるアパレルの仕事だけど、仕事内容自体は結構ブラックだと思う
薄給だと言うのにノルマに残業、口うるさいマネージャーにしつこく誘ってくる本社の社員
明日から始まるセールに向けた棚卸しのお陰で随分と長く残業になってしまった

日付が変わる前には帰れたがもうクタクタだ
ご飯もお風呂もめんどくさい、こんな日は顔だけ洗ってさっさと寝るに限る

「ラッキー、盧笙先に寝てんじゃん。ホラっ、詰めて詰めて!」
「…お前何でおんねん」

先に寝ていた家主は大きなベッドの真ん中にいるもんだから邪魔で仕方がない
本来なら詰めてもらわなくても寝れるベッドではあるのだが私は体が冷えているので既に暖まっているお布団に包まれたいのだ

なのだけど肝心の家主は眉間に深い皺を寄せて私を睨んでいる

「合鍵あるから?」
「じゃあかしいわ。うわっ!冷たっ!なまえどんだけ冷えてんねん!」
「はぁ〜盧笙あったかい〜〜〜もーここったら古いからお湯出るのも時間掛かるから化粧落とすのも寒くて仕方なかったわーホラホラ、責任取って」
「文句あるなら自分の部屋帰れや!!」

あーだーこーだ言うけれど、盧笙はちゃんとはじに寄ってくれるしぬくぬくになった布団も私に分けてくれる
キンキンに冷えた足を盧笙の裸足に寄せれば悲鳴をあげるけど、せめてこっちに当てろやって布のある場所に誘導して暖めてくれる
盧笙はこういう所が教師に向いてるのかもしれない

体が暖まる頃には私も眠気に襲われ
気付けば意識を手放していた

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ガチャッ

「はぁ〜…てっぺん超える仕事はしんどいわ…俺もう若くないんやぞ…」

芸能人やから仕方ないのかもしれないがそれでも日付を跨ぐ仕事は何度やってもキツイ
控え室の弁当はどんなに高級なやつでもそれが晩飯だと思うと何だか侘しくなる

明日の仕事は夕方から、つまりたっぷり寝れる
もう風呂は起きてからで良い、まずは寝ないと25を超えた体は耐えられん

そうやって向かった寝室のベッドには明らかに人二人分の膨らみと、規則正しい寝息も二つ

「か〜二人仲良くスヤスヤしよってほらっ、簓様のおかえりやぞ!」
「ぎゃっ!んもー!ベッド入るなら静かに入ってよー!私明日も早いのにー!」
「…あのなあ…俺のが早いぞ…センセェ舐めんなや…」

布団を軽くめくれば膨らみの元となる二人が眉間に皺を寄せとる
だって何か寂しいやろ、俺だけ除け者で二人仲良く寝てるなんて

「あー帰ってきてあったかい布団があるってえぇなあ。幸せやわあ」
「うわああ簓つめたっ、冷たい!盧笙パス!!!」
「何でや!俺家主やぞ!こん中で一番偉いんやからな!」
「いやでも3人で寝れるようにってこのベッド買ったのは俺やで」
「良いマットレスと布団も合わせてね。お陰ですげえよく寝れるわ、このベッド」
「そのバカでかいベッドのせいでこの部屋ほぼベッドに占領されとるけどな!!」

盧笙の元のベッドじゃ精々俺か盧笙がなまえと寝るのが精一杯で
俺が奮発して買ったこのベッドはこの部屋の8割を占めている
もしもこの家の間取りが2LDKだったなら1LDKB(リビングダイニングキッチンベッド)って言っても過言やないくらいデカイ
お陰で3人でも何とか寝れるし流石お高い寝具は違う、ほんとにこのベッドはよく寝れる

あ、LDKBは今度ネタで使お

「部屋が狭いのが悪いじゃん」
「黙れや、どつくぞ」
「はは、ホンマあったかいわあ」

最高の寝具で最高の友人とこんなやりとりが出来るんだから
こんな買い物安いものやで