茨戸にて

「俺はちょっと髪を切ってくるから、お前はその辺で適当に遊んでろ」
「はーい。あ、じゃあお小遣いくださいよ」
「…ガキかよ。ほら」
「ていうか入院してた時も思いましたが尾形さん髪伸びるの早くないです?助平なんですか?」
「良い度胸だ。今やった小遣い返せ」

無事に茨戸に到着し、尾形さんはその伸びた髪を散髪している間に私は毛皮などを売りに行く事にした。
お金が無いと思われた尾形さんだが何だかんだでお茶代くらいはくれた。言ってみるものだ。

毛皮や内臓や諸々、買い叩かれないと良いのだけれど。
もしも買い叩かれそうなら後で尾形さんを連れて売りに行こう。
何だかんだで色々な物が二人分掛かるというのは不安なものだ。


*****


「…団子とか無いかな。尾形さんといると心労が凄いから甘い物が食べたい…。」

幸いどれも適正価格で買い取ってくれた。
通ってきた道を戻る事は無いだろうと踏んで少し多く狩って貰ったのが功を制し、そこそこのお金を手に入れる事が出来た。
これだけあれば暫くは安心だし、今日は宿にも泊まれる。
何だったら部屋を別々にする事だって叶うかもしれない。勿体無いので同室にするのだろうけれど。
ならば…酒、せめて酒くらいは飲みたいな。
ようやく一息をつけるのだからそれ位の贅沢くらい…

ドンッ

「…今の銃声…」

この音、恐らく尾形さんだ。
銃声が鳴り響くと同時に鐘の音が続いた。鐘を撃ったのだろうか?
一体どうして?
それを2回続けている、どうにも穏やかじゃない。

…そしてこれは恐らく…ではない、絶対に尾形さんな気がする。
鳴り響く鐘の音は良くない事の前触れの予感がして、先程得たお金で薬と包帯を少し多めに買い足そうと思った。

その後尾形さんと合流したら案の定怪我をしていたし、何か知らないおじいちゃん達の仲間入りする事になったと事後報告で聞かされるし二階堂さん同様、どうしてこんな女が?と言わんばかりの視線に対して
こいつは役に立つ。の一言で納得させようとする尾形さんを見てやっぱり今日は酒を飲まないとやってられないと思った。

何かもう私この辺で暮らそうかな。