04.5 


私には問題があった。ここの生活に慣れていないということもあるけれど、ここで生きるための最重要事項、火を出すことが、あの晩以降、一度もできなかった。もしかしたらあの晩に火を起こしたのも、私ではない可能性さえも考えるほど、追い詰められていた。
住人の大半は当たり前のように火を扱える。バーニッシュなのだから当然だ。私はバーニッシュになって間もないから扱い方に慣れていないのだと思い、どんなときに火が出るのかを聞いてみた。感情が昂った時に火が出やすいらしい。思えば、あの晩は急に触れられて、怖い、と思った直後に発火した。即ち、誰かに触れてもらえれば、火を出す感覚がわかるかもしれないと、そう思った。
でも、男性に触ってほしいなんて、そんなことを頼める相手など、ここに来たばかりの私にいる訳はなく。内容が内容なだけに、誰彼構わず頼むのもどうかと思う。せめて最初に会ったリオという人なら、少しだけ面識があるし、抱えられたり、手に触れたりしたことがあるから、頼めるかもしれない。けれど、あの人はこの村のトップにあたる。多忙で私の相手などしている暇はないだろう。…そう思っていた。顔が似ているということが功を成したのだろうか。意外にも、すんなりと面会させてもらえた。けれど、

「…………」

触れるどころか、口付けを、されてしまうなんて。それも舌まで入れるなんて、会って間もない相手にすることではないだろう。
いや、口付けすることに関しては気にすることではないはずだ。バーニッシュは口付けで火の受け渡しをするものだと、村の人が言っていた。彼だって、誰かを助けるために沢山の相手に何度も口付けをしてきたはずだ。それに舌を入れたのは、効率的に火を送る為の気道確保の手段だとしたら、仕方がないことでもある。

自分の身体から火が出ることは確認できたけれど、意識が遠のいてしまい、火を起こす感覚は掴めなかった。けれど、意識が遠のいていた時、見覚えのある光景が脳裏に過ったような気がした。何がを思い出すような、そんな感じがした。
またしてほしい、と言ってしまったけれど、今回のように意識をなくしかけたら、口付けもまたすることになる。きっと彼は慣れているから、何度口付けても平気だろうけれど、私はそうではない。口付けで火を送る文化だって最近知ったばかりだ。今まではその文化圏ではない場所にいたから、余計に気になってしまう。
それに、忙しい身の上なのは知っているから、私に何度も手間をかけてもらうのはあまりに申し訳ない。早めに火を起こす感覚を掴んで、邪魔をしないようにしなければ。できれば、その間に思い出せそうだった何かを思い出せればいいのだが。
 
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