唐松に寄り添って - 春風
鳴り響く警告音

視点:切原赤也


俺たちは今、他校での練習試合をするために、朝から学校で軽くウォーミングアップをして、徒歩で新設されたっていう隣町の私立中学へ向かっていた。あんまりよく知らねーけど、結構スポーツに力を入れるってモットーで創られた学校らしい。
別にわざわざ俺らが出向いてやることないじゃんって思うけど、夏の地区大会でも当たるってことも兼ねて情報は多い方がいいし、新しいテニスコートを視察しておいても損はないだろうって柳センパイが言ってた。って言ったって、今日は俺たちレギュラーの出番は殆どないけど。あーあ、つまんねーの。


「…あれ?」


ぞろぞろと並んで駅前の通りを歩いていると、いきなり丸井センパイが改札の前にある広場を見て足を止めた。


「なあなあ赤也。あれって蘭ちゃんじゃね?」
「へ?まじっスか?!」

休みの日に蘭に会えるなんて今日の運勢最高じゃん!とか思って丸井先輩が指差した方向を見ると、確かに蘭がいた。うわ、アイツの私服って初めて見た気がするけどすっげーシンプル!まぁアイツらしいけど。
けれど蘭はこっちに気付く気配はなくって、白い帽子を被った背の小さい男子といた。

…は?誰なんだよ、ソイツ。前言撤回、今日の運勢チョー最悪。


「すんません!俺ちょっと行ってくるッス!」
「え?ってオイ、赤也!」
「おーい!蘭ー!そんなとこで何してんだよー!」


蘭目掛けて走り出すと、その白い帽子のチビが声に反応してこっちを見た。は?呼んでんの、アンタじゃねーし。


「…蘭、このチビ誰だよ?」

二人の前に辿り着いた俺がチビを睨み付けながらそう言うと、そのチビは俺を睨み返して来た。ふーん、いい度胸してんじゃん。


「誰って──」
「別にそんなの、アンタには関係ないよね」
「ハァ?ンだとこのチビ!!」
「アンタにそんなこと言われる筋合いないんだけど」
「…アンタ、潰すよ?」
「やれるもんならやってみなよ。俺は蘭の親友だし。つーか、アンタこそ誰」
「俺は蘭とはガッコーもクラスも同じで仲良くしてる蘭の一番の友達だし!」
「ふーん。そんなこと言ったって、ただのクラスメイトの延長線でちょっと喋っただけなんじゃないの?それって自意識過剰だよね」
「ンだと、このガキ!」
「たったの一歳しか違わないってのによく言うよ」


そう言ってまた俺を睨み付けたチビが、蘭の隣でその体に寄り添いだした。それ以上近寄んじゃねーよ!
何なんだよ、この生意気なガキ…!超ムカつく!何かやけに蘭にベタベタしてるし、蘭も蘭でソイツのこと嫌がってねーみたいだし。

それから柳センパイに止められた俺は、仕方なしに蘭から離れて唇を噛み締めた。後からやって来た幸村ブチョーが白帽子を“坊や”って呼んでくれたお陰でちょっとはスッキリしたけど、まだ胸のモヤモヤは薄まらない。そーだそーだ!あんなチビが、蘭に釣り合う訳ねーんだよ!隣に立つんなら、俺とか幸村ブチョーとかじゃなきゃ!


「赤也、行くぞ」
「…ウィッス」

名残惜しいけど、それにその白帽子が気になってしょーがないけど。柳センパイに促されたら、足を進めるしかない。

絶対、俺の方が仲イイし。もしも今は白帽子の方がよくっても、蘭には俺が一番の親友ってこと、そのうち分からせてやる!

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春風