唐松に寄り添って - 春風
熱き青春への招き

視点:幸村精市


無謀な提案だと、一蹴されてしまうかもしれない。何を馬鹿なことを言っているんだと、鼻であしらわれるかもしれない。
けれど俺は、本気でそう考えているんだ。


彼女は、真に赤也を支える立海の柱になるだろうと、俺は見ている。こうして無茶な勧誘をする以上、彼女には“立海の女帝”になって貰うつもりの覚悟だ。
誰が何を言おうと、俺のこの覚悟は変わらない。彼女の気持ちだってあるけれど、俺はそれさえも動かしてみせる。テニスを彼女へと、教え込んでみせる。そして自分も、更なる高みを目指すのだ。

俺は決意を新たに、拳を握り締めるのであった。





赤也は既に蘭に感化されているから除外して、俺たちはありとあらゆる手段で蘭をマネージャーへと勧誘することにした。

しかしである。


「遠山ー!駅前に新しくできたスイーツバイキングの割引券あるから一緒に行こうぜぃ!」
「すんません、私あんまり甘い物は好まないんで」
「……」

丸井失敗。


「遠山さん、そのお荷物お持ち致しましょう」
「きっと私あなたより力あるんで別に大丈夫っすよ」
「……」

柳生失敗。


「蘭ちゃん!テニス部の皆と一緒に旅行行こ!逆ハーレムぜよ!」
「イヤっす」
「……」

仁王失敗。


「遠山、お前のデータを取らせて欲しいんだ。合宿に参加してくれないか」
「イヤっす。データなら普段の生活の中で取って下さい」
「……」

柳失敗。


「蘭、この通りだ。頼まれてくれんか」
「…弦一郎さん、私言いましたよね。こればっかりはいくらアンタに頭下げられたってイヤっす」
「そうか……」

そして、真田までもが失敗。
──こうして二年レギュラー皆が彼女によって一刀両断されてしまったのである。


俺はその後、皆を二年レギュラー全員を屋上へと呼び集めていた。


「皆の勧誘の仕方だけど、俺、やっぱりあれじゃダメだと思うんだよね」
「うーん、頑張ったつもりなんだけどなぁ〜」
「え、まさかあれで?言っとくけど丸井と仁王は論外だからね」
「ひっでぇ!」
「プピーナ!」
「逆にあれでよく蘭ちゃんが乗って来ると思えたね?言っとくけど、相手はあの蘭ちゃんだよ?あんなのじゃ無理に決まってるだろ」
「「本当にごめんなさい…」」


見事全員が失敗してしまった。まさか蓮二までが失敗するとはね。まぁでも実際アイツも言葉が足りなかったと思うけれど。


「確かに、今回の合宿に誘うってことが第一目的だけど、テニスのことを彼女に伝えないと意味がないんだよ。大体蘭ちゃんをデートに誘うとかじゃあるまいし、そんな腑抜けた誘い方があるかい」
「…そう、だな」


俺がそう言うと、皆は確かに…という顔をして揃ってふむふむと頷いた。いや、これくらいのこと分かってたと思うんだけど。あれ、コイツらって意外と馬鹿なの?俺が買い被り過ぎてたのかな?
あ、それとも何、相手が女の子だから誘い方が分からないって?…全く、そろそろ女の子の扱いも分かって来て良い年だろうに。さっさとケツの青い餓鬼ってやつから卒業した方がいいんじゃないかい。


「…さあ、仕切り直しだよ」

果たして、これで上手くいくのかな。何だかちょっと少し先行きが不安になって来てしまった。

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春風